第50回衆議院議員選挙(衆院選2024)の総括
まず、杉並区の状況としては、8区の維新公認候補であった南北ちとせ氏は20,342票(得票率8.9%)で法定得票数に届かず落選となりました。27区は維新の公認候補がいませんでした。区割りの変更もあったので単純に比較できませんが、3年前のかさたに圭司氏は40,763票(14.3%)であり、小選挙区の得票を半分以下にしてしまいました。
比例は19,664票(6.9%)。3年前が37,160票で47%の減となりました。こちらは前回15,073票余から43,790票余へと躍進された国民民主党の影響が主要因として考えられます。
1.国民民主党の躍進について
国民民主党の躍進についてですが、東京に限定した話としては、都民ファーストの会という政治勢力が都政・区政で一定のプレゼンスを示しており、国政においても都民ファーストの会のような政治勢力として国民民主党が認知された、というだけの話だと考えています。実際に都ファは以前から、そして今回の衆議院議員選挙でも国民民主党を支援していました。そういう面で、東京都に関しては、新しい動きがあったというよりも国政に都ファ的な勢力としての国民民主党が定着しただけ、という理解をしています。今後都民ファーストの会の国民都連化、都ファ議員の国民からの国政挑戦などが予期されます。
国民民主党・都民ファーストの会は、私たちから見れば労働組合や企業団体に支えられた「しがらみのある改革政党」であり、私たちはしがらみがないので改革を進めていけるのだと主張してきました。今回の選挙を前に維新は「医療維新」を含む社会保障制度改革を打ち出し、社会保障を改革議論のテーブルに乗せました。このテーブルの上に対案を出し、魅力あるキャラクターがわかりやすい伝え方でアピールしたことが国民民主党躍進の要因になったと分析しています。つまり結果的に国民民主党の躍進をお膳立てしたのは維新だった、という皮肉な状況だというのが私の理解です。
しがらみがあっても一定の改革はできてしまう、ということも、都ファが主に都政で示していて、国民の政治への期待は抜本改革よりも、自分たちの違和感を的確に捉えて改善していくことに優先順位があったのだろうと思います。抜本的改革は維新の存在意義でもあり、社会を持続可能なものとするためには必須の取り組みであると考えていますので、抜本的な改革を掲げ取り組むことを下げるつもりは全くありませんが、国民の違和感を的確に捉えて改善していく政策と、平易でチクチクしない言葉とわかりやすい見せ方で政策を伝えていく努力を強化していくことの必要性を今回の選挙で認識しました。
2.維新の政策について
今回の選挙では、多くの仲間が落選の憂き目に遭いました。東京の現職では音喜多さん、小野さん、他地域から私の選挙の応援に駆けつけてくれた堀場さんや岬さん、そして多くの逸材である新人議員を落選させてしまいました。東京の比例2議席はなんとか守り抜けたものの、厳しい選挙でした。色々な人が色々な原因分析をされていて、一つ一つ咀嚼して飲み込んだり吐き出したりしているところです。
あまり言われていないように感じるのが、今回のマニフェストは「現役世代への徹底投資」がテーマで、「現行の社会保障制度が現役世代に過重な負担を強いている状況を直視し、高齢世代にも負担を分かち合ってもらう」という思想を明確にしたものであり、選挙の常識からは考えられない内容になっています。人口も多く投票率も高い高齢世代に阿ったり、一定の配慮を盛り込んだ上で選挙戦ではその点をことさらにアピールするのが、選挙の常識です。
それでも維新は、選挙を恐れず、言うべきことは言う、というスタンスでこのマニフェストを掲げて戦いました。その上で選挙も勝って、選挙の常識ごと変えに行こう、という戦いに、今回は敗れてしまったということだと私は理解しています。そういう観点ではこの負けは必定ともいえるし、このマニフェストで勝ちに行くという崇高な戦いを完遂された候補者の皆さんに、一層の敬意を表するものです。私自身は現時点では東京都と区市町村の選挙における政策責任を担っているわけですが、選挙を恐れ選挙に勝つための政策を作るということをしてはならないことを肝に銘じます。未来を見据えて今実行することが必要な政策を作り、それを多くの人に共感していただけるよう、伝え方についても他党の好事例から謙虚に学んでいこうと思います。選挙に負けて政策を曲げる、ということにならないよう、私自身全力を尽くしていきます。
でも、だからこそ勝ちたかったんですよね。私たちは蛮勇になるべきではなかった。私たちの負けが、社会保障の抜本改革や、現役世代に過重な負担がかかっている状況を改善するために、高齢世代にも負担をお願いする、という機運に水をさすことを何よりも恐れています。それは私たちの将来を後ろ暗いものにしていくことに直結するからです。
社会保障制度の抜本改革や成長戦略については、今回維新から勝ち上がった国会議員の皆さんの奮闘を心から期待しています。