区議会レポートVol.15

令和4年第4回定例会での、松本みつひろの質問とそれに対する区の答弁を、レポートにまとめました。

10月19日に第3回定例会が閉会し、11月16日に第4回定例会が開会。この間に都市環境委員会の視察が入るなど、質問準備のスケジュールとしては慌ただしいものがありましたが、不登校特例校やペアレントプログラムなど、子どもの育ちに関連する提案が気持ちよくはまり、前向きな答弁を多く得ることができました。

令和5年度予算に関する質問は、予算編成がまさに進んでいるこの定例会の中で、釘を刺しておきたい課題意識を質問の形で指摘したものですが、質問に対する答弁や、定例会全体を通じての区の考えを聞く限りでは、令和5年度予算案については例年以上に、極めて慎重な審議を要することになりそうです。

表1表4(おもて面)

表2表3(中面)

今回は諸般の事情により、年末に折込チラシとして配布させていただくのみとなり、ポスティング等は実施しません。手元に届く予備分をお送りいたしますので、受け取っていただける方、お問合せフォームからご連絡いただけますと幸いです。

 

令和4年第4回定例会 松本みつひろ区議会レポート

■一般質問

テーマ:令和5年度予算編成について

この質問に至った背景:10月の決算特別委員会の締めくくりに、「将来世代に過大な負担を残さず、持続可能な区政運営となるよう、従来以上に長期最適の視点を持っていただきたい」と主張しました。区では来年度の予算案の編成を進めていますが、区長の選挙公約を振り返ると、将来世代にツケを先送りした現世利益優先のバラマキ施策が予算案に盛り込まれる危険性があると感じており、例年以上に注視しているところです。一方で、公約の全てを否定しているわけではなく、推進すべきと考える政策も区長公約には含まれていましたが、それを実現する上で、予算編成の基本方針に障害になりそうな記載がいくつかありました。来年度の予算がよりよいものになるよう、質問しました。

 

質問:予算編成方針に「課内での財源確保が困難な場合は、部内において調整すること」という記載があるが、教育委員会の予算(令和4年度当初231億円)から学校給食費の無償化にかかるとされる16億円を捻出するのは困難と考える。実行計画外の大型新規事業を行うにあたっては、部をまたいだ財源確保を行う必要があるのではないか。

区長:大規模な財政出動を伴う事業は、原則として財源の裏付けを持たせた実行計画で計画化した上で、取組内容や事業量を明らかにし、着実に取り組む必要がある。

 

質問:区長公約の新規事業のうち、実行計画外で行うことを検討しているものがあるか。

政策経営部長:必ずしも計画事業になじまない取組もあるので、その場合予算対応等による実施も検討していく必要がある。

 

キャラクター吹き出し:この2つのやり取りを整理すると、大型新規事業は実行計画に載せ、財政の裏付けをもって予算化する。計画事業になじまない=規模の小さい事業は実行計画外でもやることも検討する。ということになります。果たしてその通りの予算になるのか、来年2~3月の議会の審査で検証していきます。

 

質問:部の予算が相対的に大きい部では実行計画外でも新規事業が実施でき、相対的に小さい部では実施できないことになるが、部ごとの予算規模は各部の役割に最適化されていると区長は考えるか。

区長:各部の予算規模は計画事業や各部門の抱える課題を踏まえ、概ね適切と考えるが、区民の声に応えるため、区長としてどのような施策にどの程度の財源を配分するかという点に腐心し、メリハリのある予算編成を行っていく。今日的な課題を多く抱える部署への重点的な予算付けを機動的に行っていくことは必要だが、過度に偏った予算配分を行っていくことは避けなければならない。

 

キャラクター吹き出し:この質問は新区長に聞かないと意味がないと思い、僭越ながら区長を指名したのですが、思い切り役人さんが書いた穏当な答弁を返されました。。。

 

質問:新規事業の財源は、原則として全額を行財政改革から生み出した財源から確保しては。また、2対1ルール*を新規事業立案にも援用し、1つの新規事業を立ち上げる際に2つの事業を廃止することを基本方針に定めては。

政策経営部長:行財政改革で生み出した財源を新規事業に充てる方針は全て示しているが、それのみを新規事業の財源とすることや、1つの新規事業に対し2つの事業を廃止するという縛りを設けると、適時適切に行政需要に対応することが困難になるため、そうした原則を定める考えはない。

 

*アメリカのトランプ前大統領が就任直後に大統領令として発出したことで知られるルールで、新しい規制を1つ作るためには古い規制を2つ廃止するというもの

 

キャラクター吹き出し:税金を使って事業を行っている以上、新規事業の立案によって予算規模が肥大化することに対する一定の縛りは必要であり、行政需要に対応するための新規事業を行うために、需要が縮小している既存事業の廃止を課すことは必要と考えます。2対1ルールは引き続き導入を模索していきます。

 

質問:基本方針に「ロシアのウクライナ侵攻」と記載があるが、政府はじめ国の公的な発信は「侵略」で統一されている。今後区の発信も「侵略」に統一しては。

総務部長:指摘の通り、政府が「侵略」と認めていることを踏まえ、区としても今後は「侵略」で統一する。

 

テーマ:不登校特例校について

この質問に至った背景:不登校については令和3年第2回定例会でも取り上げました。不登校特例校である岐阜市立草潤中学校を紹介する中で、「バーバパパのがっこう」のように学びの選択肢が豊富にあることの重要性を指摘し、答弁においても不登校児童・生徒の社会的自立を目指す上で、多様な教育機会を確保することの意義を認識していることがわかりました。その後、先日の決算特別委員会の中で、教育長が突如「不登校特例校を作っていく方向で見据えていきたい」と答弁しました。たまたまですが、その2週間後に不登校特例校を視察する予定があり、視察で学んだことを踏まえ質問しました。

 

質問:不登校に関する区教委の捉え方の変遷を確認する。

教育政策担当部長:以前は登校渋りや欠席が続いている児童生徒に対して、学校生活に復帰できるような支援や指導をしていた。平成28年に教育機会確保法が施行されてから、学校復帰だけが目標ではなく、一人ひとりの社会的自立につながる学びの保障や支援の在り方を重視している。

 

質問:区内在住でフリースクール等への通学をしている児童・生徒がどの程度いるか、また令和3年度に不登校状態で卒業した中学生のうち、N校など通信制課程の学校へ進学した生徒がいたか。

教育政策担当部長:フリースクール等へ通学している児童・生徒は令和3年度調査で小中あわせ38名。不登校状態で卒業し定時性や通信制課程の学校へ進学した生徒は75名。

 

質問:企業の経済活動の効果を測定する際に用いられるROIに、社会的な波及効果を組み込んだ指標としてSROI(社会的投資収益率)が知られている。不登校特例校設置を含む不登校児童・生徒への支援は子どもへの先行投資であり、大人になった時に引きこもりの状態になるのか、社会に参画し納税者になるかによって、社会負担の差が一人あたり1億5千万円に達するという試算が、視察の中で紹介された。SROIの観点から、不登校特例校をどのように捉えているか。

教育政策担当部長:不登校児童・生徒だけでなく、全ての児童・生徒が将来において豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となるためには多様な学びの場の構築が重要であり、SROIの観点から不登校特例校は重要な役割を果たせると考える。

 

質問:杉並区での学校型不登校特例校*設置に向け、具体的な調査を進めていただきたい。高尾山学戦や以前取り上げた岐阜市の草潤中学校など、学校型不登校特例校の視察に行っていただきたいが見解は。

教育政策担当部長:不登校特例校は教育課程を柔軟に編成でき、不登校児童・生徒一人ひとりの状況に応じた教育活動が可能になる。これまで高尾山学園をはじめ、都内公立の不登校特例校について現地に赴き調査しており、他の自治体の先進的な取組について引き続き調査を進める。

 

*不登校特例校には学校型、分校型、分教室型の3類型がある。昨年4月に分教室型を23区で初めて開設した大田区は、今年度に入り学校型不登校特例校の設置を目指すことを表明し、令和12年度の開設に向けて動いている

 

テーマ:ペアレントプログラムについて

この質問に至った背景:私は4歳の双子を育てています。私にとって長年待ち望んだ子どもであり、知識面も心構えも準備万端で子育てをスタートしたと思っていました。ところがこのところ、子どもの事故予防地方議員連盟や子ども安全士資格の勉強会などで医師や保育士などと直接お話しをする場面が重なり、その中で私自身、親として子どもを守るための正確な知識を持っていなかったことを知りました。また8月から10月にかけて区内3所の児童養護施設の視察を行い、社会的養護の専門家と議論をする機会をいただきました。この経験を通じて、専門家との比較において、私は自分自身の子どもの育ちについて考え抜くことができていないことを痛感しました。生物学的には、人間は子どもが生まれたら親になりますが、子どもが生まれたら人間は親になれるのかといえば、やはりそこには修練が、教育が必要ではないか。自分自身の経験を通じて、また児童虐待の分野における政策調査を経て、私はそう思うようになりました。

 

質問:パパママ学級は、産前産後の基礎知識を教えてくれる場で、現状は初産の方向けとなっている。前回の出産から時間が経っており知識を確認したいなどの理由から、参加を希望する経産の方を受け入れるために、要件から「初産」を外してはと考えるが区の見解は。

子ども家庭部長:現在も受講希望者が多く、キャンセル待ちとなる場合もあるため、現時点で対面学級の対象を拡大することはできないが、オンライン形式については対応できるように検討する。

 

質問:子育てが地域に支えられていると感じられ、今後もこの地域で子育てをしたいと思う親を増やすために、同月齢の子と保護者が定期的に集まる場の提供の観点を包含した、定期的な子育て講座を行い、切れ目のない子育て支援をより多くの子育て世帯に感じてもらいたい。区の見解は。

子ども家庭部長:地域で安心して子育てをするために、議員の指摘にある機会は重要。現在保健センターの育児相談や、児童館や子ども・子育てプラザでそういった取組を進めているところで、今後もより多くの家庭にご利用いただけるよう充実に努める。

 

質問:厚生労働省が配布しているポスターでは、赤ちゃんに掛け布団がかかっているが、これはSIDS*対策として誤っていると指摘されている。乳児のSIDS対策として、衣服等はどのようにすることが適切か。厚生労働省が訂正等の対応をしないのであれば、杉並区の乳児を守るために区独自の啓発を行うべきでは。

子ども家庭部長:乳児の体温を保つために必要な場合は、身に着けられる毛布の使用や重ね着をさせることで、乳児の睡眠スペースに余分な物を置かなくても済むといわれている。今後も区民に対して正しい情報を伝えると共に、国の対応に注視する。

*乳児突然死症候群のことで、何の予兆や既往歴もない乳幼児が睡眠時に突然死に至ること。令和元年には78人の乳幼児がSIDSで亡くなりました。掛け布団の使用は温めすぎによるうつ熱や、柔らかい寝具が呼吸を妨げる可能性があることから、消費者庁や小児科医らがこのポスターについて訂正を求めていいます

 

質問:ペアレントトレーニングは、知的障害や発達障害のある子を持つ家庭向けに開発されたものだが、現在は幅広い目的や方法で展開されており、視察した区内の児童養護施設でも導入し児童とのかかわり方が改善されたと伺った。これを全ての子育て世帯を対象とする「ペアレントプログラム」として実施することが望ましいと考える。区の見解は。

子ども家庭部長:まずは要保護・要支援家庭を対象に、早期からの実施に向けて検討を進める。支援者を育成するための講習もあわせて実施し、ペアレントプログラムの効果を見極めると共に、対象の拡大を考え、取組を進める。

 

*質問をした11月17日の夕方、新年度予算の要求(見積)状況が公表されました。記載されている4つの新規事業の中に「親子関係形成支援事業」が盛り込まれ、この中でペアレントプログラムの実施が明記されました

 

*その他、「区職員が住民基本台帳法違反の疑いで逮捕されたことについて」も質問し、11月17日時点の最新情報を確認しています。このような事件が起きたことを大変遺憾に思っています。

 

 

■都市環境委員会

  • 議案第66号 杉並区廃棄物の処理及び再利用に関する条例の一部を改正する条例

23区が統一的に改正。必要な措置と考え議案に賛成しました。粗大ごみ受付センターのホームページ経由での粗大ごみ受付の活用状況等について質問を行い、デジタル化推進計画(案)でAIチャットボットの活用が予定されていることについて質疑の中で取り上げました。

 

  • 陳情審査

・4陳情第16号 荻窪駅南口駅前都道補助131号線の一方通行規制保持の陳情

荻窪駅南口駅前都道補助131号線の現況を考えた時に、相互通行に変更することは現実的でなく、当面一方通行規制を保持することが妥当と考えます。一方で、駅前機能の再構築が進み、理由欄に記載されているような各種の懸念が解消された上で、路線の相互通行ができるという中期的な将来像を排除するものではないと考え、趣旨採択を主張しました。

 

・4陳情第17号 荻窪の防災・人に優しいまちづくりに関する陳情

荻窪の防災まちづくりは重要かつ優先順位の高い取組であり、陳情に挙げられた様々な課題は解決に向けて取り組みを加速していく必要があります。陳情提出者具体的なアイデアをそのままの形で実現することは技術的な面等から難しいことが明らかとなり、趣旨を捉えて趣旨採択を主張しました。改めて荻窪の防災まちづくり、都市機能の更新についてねじを巻いて進めていきたい。区民からもアイデアをいただきながら、それをただ受け止めているのではなく、区として具体的な将来のまちの姿を示すべきであり、その機は熟していると考え、本質的かつ積極的な取組を強く要望しました。

引き続き、荻窪のまちづくりについてご意見を募集しています。以下のQRコードから、ご意見をお寄せいただけますと幸いです。

 

・4陳情第21号 杉並区全公共施設の改修および改修計画時に環境配慮型の建築を作るための陳情

前区長時代の令和3年11月に杉並区ゼロカーボンシティ宣言を行い、環境の専門家が新区長に就任するなど、杉並区としても環境配慮の取組が加速しているところです。都市環境委員会で10月に藤沢市を視察し、同市の環境基本計画と地球温暖化対策実行計画について学びました。環境基本計画は既にありますが、杉並区として地球温暖化対策実行計画を策定し、公共施設の発電量目標を盛り込むことなどが確認できたため、趣旨採択としました。路面舗装型太陽光発電やペロブスカイト太陽電池など、新たな技術の活用への挑戦も環境部長から表明がありました。

 

 

■文化芸術・スポーツ・まちのにぎわいに関する特別委員会

(1)杉並区区制施行90周年記念「交流自治体中学生親善野球大会」の実施結果について

(2)令和4年度「第1回ユニバーサルタイム」の実施結果について

(3)杉並アニメーションミュージアムの再開に向けた取組等について

(4)令和4年度 障害分野におけるスポーツ等推進の取組について

の4件が報告され、委員長として質疑を進行しました。

 

お知らせ①荻外荘の展示休憩施設棟について

決算特別委員会で取り上げ、Vol.14で紹介した荻外荘の展示休憩施設棟について、11月12日に荻窪地域区民センターでパネル展示型説明会がありました。都市環境委員会の報告でも意匠面が高評価とありましたが、その通りとても素敵なデザインで進んでいました。

一方で、このことをSNSで紹介したところ、台東区の維新の仲間から、この設計会社の建物は管理面での制約が多く維持管理に苦慮している、という情報があり、そういった観点もあわせて持つ必要があると感じました。

 

お知らせ② マニフェスト大賞、「審査員特別賞」受賞!

Vol.14で「マニフェスト大賞(エリア選抜賞)2年連続受賞!」とご報告させていただきましたが、特別審査委員で女優の秋吉久美子さんの選考により、「審査員特別賞」も受賞したことが11月11日の表彰式当日に発表されました。

 

お知らせ③ 議員定数削減の議案を提出しました

Vol.14で区民意向調査のお知らせをさせていただきました。ご協力いただいた皆様、ありがとうございました。私の2019年の区議会議員選挙公約でもある議員定数の削減について、回答の64%が「議員が多すぎる」「ITを活用した効率的な議会活動をしてほしい」など、議員定数を減らすべきという内容であり、そういった区民の皆様のご意見も踏まえ、議会最終日に、現在48名の杉並区議会議員の定数を46名に減らす議案を提出しました。本会議で反対多数で否決されました。

 

・プロフィール

1983(昭和58)年9月1日生まれ。早稲田大学法学部卒業後株式会社リクルートに入社、「SUUMO」で9年間などITの営業部門を歴任。2009年に杉並区荻窪に転入、2011年に転勤で仙台へ。その後札幌での勤務も経験し、2015年に荻窪に戻る。地域では荻窪5丁目町会、荻窪消防団第5分団、荻窪南口大通り親交商店会に所属。日本維新の会広報局、東京維新の会事務局長兼政務調査副会長。現在杉並区議会議員1期目。自民・無所属・維新クラブ(交渉会派)に所属。文化芸術・スポーツ・まちのにぎわいに関する特別委員会委員長。その他、都市環境委員会、ICT活用検討推進委員会、杉並区情報公開・個人情報保護審議会、杉並区土地開発公社評議員会等に所属。東京若手議員の会副代表(市部エリア、性教育・不妊治療プロジェクト担当)、子どもの事故予防地方議員連盟事務局長。

2018年生まれの双子男児と妻との4人暮らし。