区議会レポートVol.11
令和3年第4回定例会での、松本みつひろの質問とそれに対する区の答弁を、レポートにまとめました。
今回の一般質問では、区が区民全体に提供するデジタル施策のトップバッターとなった2021プレミアム付商品券事業について、今後の改善を見据えた提案を行いました。また令和4年度からの区の計画改定にあたって、ナッジを活用した施策指標の目標設定に意を用いることについても、質問を通じて提案したものです。
保健福祉委員会、災害対策・防犯等特別委員会で質疑した内容と、議会基本条例の提出前に開催した全員協議会において、会派を代表して質問をしたので、その内容を掲載しています。
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表2表3(中面) vol11_中面
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令和3年第4回定例会 松本みつひろ区議会レポート
■一般質問
テーマ:2021杉並区プレミアム付商品券事業について
この質問に至った背景:東京都の令和2年度最終補正予算で、「東京都生活応援事業」が予算計上されました。事業の趣旨に「デジタルの力を活用した地域経済の活性化」「原則デジタルで実施」と記載されていて、デジタル化が遅れている杉並区にとって、デジタル化を進めていくチャンスであると期待し、区の補正予算に賛成しました。6月14日に販売開始、7月30日に利用開始となりましたが、事業開始から数日の間、多くのクレームを中心としたご連絡をいただくことになってしまいました。区民の皆さんからお寄せいただいた有益なご指摘を、杉並区のDXに生かしていく使命感を胸に、質問に臨みました。
質問:デジタル商品券と紙商品券を75:25という割合で発行することになった議論の経過を確認する。
産業振興センター所長:紙商品券を併用する場合に必要となる事前協議*の結果、都が示した二次元コード決済アプリの想定利用率を準用することとした。
質問:デジタル商品券が使えるという記載があったのに使えなかったという問合せは運営事務局に何件あったか。またデジタル商品券が途中から使えなくなった商店数と使えなくなった理由は。
産業振興センター所長:利用可能なはずの店舗でデジタル商品券が使えなかったという問合せは、商品券の利用期間中に約40件。デジタル商品券の取扱いを中止したのは、当初にデジタル商品券を利用可能とした1,466の参加店舗のうち23店舗、主な理由は店舗内が携帯電話の圏外でデジタル商品券が利用できなかったことや、デジタル商品券と紙商品券の取扱い区分を誤って申し込んでしまったことなど。
*東京都生活応援事業では、原則デジタル商品で実施することとした上で、同事業費交付補助金交付要綱には、紙商品券を併用する場合に事前協議を必要とすることが示されている
■画像:デジタル商品券1
質問:デジタル商品券の利用時、ブラウザアプリに位置情報へのアクセスを常時許可していない限り、「suginami.stampay.worldであなたの位置情報を利用しようとしています」といったメッセージが表示され、許可するかしないかの判断を求められる。カメラアクセスも常時許可することを求められるが、それらによってどのようなセキュリティ上のリスクがあるか。
産業振興センター所長:位置情報が漏えいしたり、カメラが遠隔操作されたりするなどのリスクが生じる可能性がある。そのため、使用可能なブラウザをGoogle ChromeとSafariの2つに限定し、リスクの低減を図っている。
質問:商品券の利用画面には、残高、チャージボタン、支払いボタン、位置情報を提供した場合には近くの加盟店が一覧で表示されているが、チャージボタンを押すとどのような画面に遷移するのか。
産業振興センター所長:委託事業者の既存システムで実装されているものの、今般のデジタル商品券では使用しない機能であるため、チャージボタンを押しても使用できない旨表示される。
■画像:デジタル商品券2
アイコン・吹き出し「他の部分をカスタマイズするときに、このボタン取ってもらえばよかったのに・・・。小さいことではあるけれども、こういうことの積み重ねで、デジタルに対する苦手意識が醸成されていくのに・・・。」
質問:東京都生活応援事業では、民間事業者が提供するQR決済アプリのポイント還元による利用も可能となっている。区外の方が杉並区の商店で買い物をする動機を与えることができること、使い慣れている利用者と店舗が多く、問合せ対応もQR決済事業者側に吸収してもらうことができることなどのメリットがあることから、多くの自治体がこの方法を採用している。杉並区がポイント還元ではなく、区独自のブラウザベースのサイトによるプレミアム付商品券事業を行うこととした検討の経過は。
産業振興センター所長:ポイント還元の場合は紙商品券との重複利用が制御できないこと、還元ポイントが区外店舗でも利用可能になること、決済手数料等の店舗負担が生じる可能性があることが主な理由。
質問:区独自のプレミアム付デジタル商品券の「使いやすさやわかりやすさ」*1について、事業者と所管*2以外の第三者のレビューを事前に得ていたか。
産業振興センター所長:今回のシステムは、委託事業者が他自治体のデジタル商品券事業に使用した実績があり、その利用者や参加店舗の意見など、第三者のレビューを得た上で現在のシステムに至っている。
再質問:その第三者のフィードバックを事業者が受け、改善したサービスを事業者が持ち込み区と協議している、というのは二者の関係であると考える。庁内の所管外や区民のユーザーを想定していたので、今回は第三者のレビューはなかったという理解をした。新たに策定された杉並区デジタル化推進計画には、全庁横断組織の設置が示されており、区民向けサービス提供の「使いやすさやわかりやすさ」を所管と連携し主導する役割を担うのではないかと大いに期待しているが、見解は。
情報・行革担当部長:全庁横断組織を作ることは検討段階だが、デジタル化を全庁的に進めていくために、一元的に関わっていく組織は必要と考えている。現時点ではコンサルタントによる対応を図っているが、今後コンサルタントの活用とあわせ、ご指摘の点について検討する。
■画像:デジタル商品券3
*1 UX(ユーザーエクスペリエンス)と同義。UXといっても伝わらない区民が多いのではないか、という区の問題意識から、杉並区デジタル推進計画において活用されている言い回し
*2 担当部署のこと
質問:商品券の利用実績を紙・デジタルそれぞれ確認する。令和元年の同種事業と比較して、利用可能店舗はどのように変化しているか、その要因をどのように認識しているか。
産業振興センター所長:デジタル商品券は利用期限の10月末日までに利用可能額の99%以上が利用された。紙商品券は11月末日までが換金期限となっていて、10月中旬までに換金された金額は、利用可能額の70%以上。杉並区商店会連合会による周知・勧奨の効果もあり、令和元年度より約700店舗多い1,860店舗が参加した。
質問:最も多い方で何セット購入されたか。またその主な使途について、可能な範囲で答弁を。
産業振興センター所長:高額な商品購入のため、300セットを購入した方がいた。
アイコン・吹き出し「150万円購入し、195万円分使ったということですね・・・!」
テーマ:ナッジの活用について
この質問に至った背景:ナッジ理論とは、「小さなきっかけを与えて、人々の行動を変える戦略」で、行動経済学で用いられる理論のひとつとして扱われています。「ナッジ」は直訳すると「肘でちょんと突く」という意味です。2017年に理論の提唱者である行動経済学者リチャード・セイラー教授がノーベル経済学賞を受賞したことで、注目されるようになったものです。身近にある事例として、男性用トイレの立小便器内にコバエのマークが描かれているのを目にした方もいらっしゃるかと思います。これは、「人は的があると、そこに狙いを定める」という行動インサイトに基づいたものです。ナッジについては、東京若手議員の会の仲間である西崎つばさ東京都議会議員(目黒区選出)が昨年9月に目黒区議会で質問した話を、Zoom会議の時に聞いていました。新たな杉並区総合計画内に位置づけられることとなった、区政経営改革推進基本方針には、「質の改革」の追求というコンセプトが打ち出されており、区政の質の改革にナッジを活用してもらえたら、と思い至り、提案しました。
質問:杉並区で既に行っている、ナッジを活用していると考えられる取組を確認する。ナッジなど行動科学の知見に基づく政策立案や広報を取り入れることにより、区が行う各種事業の費用対効果や施策指標の目標達成率を高めていくべきと考えるが、区の見解は。
情報・行革担当部長:ナッジは自分自身にとってより良い選択を自発的に行えるように手助けする政策手法であると認識している。意識して実施しているかは別にして、本区では大腸がん検診結果後の精密検査の受診にあたり、医療機関の意思から区民へ案内チラシを渡すように変更したところ、精密検査の受診率が向上した例がある。誘導などによる自発的な意思の抑制という負の側面が生じ得ることにも十分留意しながら、行政課題の解決に向け、その活用を図っていくことが大切であると受け止めている。
質問:避難行動要支援者名簿*1の登載者について、杉並区の登録制度の登録割合を確認するとともに、同制度におけるオプトアウト方式*2の活用について、見解を求める。
保健福祉部長:杉並区の避難行動要支援者名簿登載者のうち、地域のたすけあいネットワーク(地域の手)の登録者が占める割合は、令和2年度末時点で34.5%。地域のたすけあいネットワークの登録方法にオプトアウト方式を活用することについては、先行導入した自治体の取り組み状況や個人情報の取扱等も含め、今後調査研究をしていく。
*1 災害対策基本法に基づき、大地震などの災害が起こったときに、自力で避難することが難しく、支援を必要とする方々(避難行動要支援者)を、あらかじめ登録しておく名簿
*2 自らに関する情報の利用に際し、初期設定では利用するものとした上で、情報提供に不同意の場合に許諾しない意思を示すこと。対義語はオプトインで、許諾がないと情報提供できないとする概念。目黒区はオプトイン方式で避難行動要支援者名簿を作成しており、2020年の目黒区議会では対象者における登録者の割合が58.4%と答弁がされていたが、目黒区と同規模の三重県津市ではオプトアウト方式を採用しており、登録者の割合は95.8%となっている
質問:男性職員の育児休業について、千葉市では育休取得をデフォルトとして、取得しない場合に理由を付して申請をするオプトアウト方式に切り替えたところ、平成30年度の男性職員の育休取得率は65.7%に達した。杉並区の男性職員の育児休暇取得率について、杉並区の過去3年の実績を確認し、今後のオプトアウト方式の活用について見解を求める。
総務部長:平成30年が16.7%、令和元年が11.1%、令和2年が33.3%。男性職員の育児参加をさらに促進するため、区では今年度から男性職員が育児休業などを取得する計画書を所属長に提出する制度を開始したので、当面その効果を見定めたい。育児休業の取得は、本人の能動的な意思によるものと考えているため、オプトアウトの導入については、その結果を踏まえて必要性を考えていく。
コラム:男性育休の重要性について
杉並区に対して男性育休について質問したのは、令和2年第3回(レポートVol.6)に続いて2度目です。なぜ杉並区の職員でもないのに男性育休の取得状況を気にしているのかといえば、男性育休は社会課題を解決する「ボウリングのセンターピン」、つまり男性育休が一般的になると、その他の社会課題が次々と倒れていく(解決していく)と言われているからです。たとえば、「少子化」という課題についてみると、子どもを増やす方策の一つに「第二子以降の出産を促す」ことがあり、「夫の休日の家事・育児時間」が多ければ多いほど第二子以降の出生が多くなっています*1。夫の休日の家事・育児時間を増やすための方策の一つに「男性育休の取得」があることがわかっており*2、内閣府の少子化社会対策大綱でも重点的な施策に位置づけられています。特定非営利活動法人ファザーリング・ジャパンの安藤哲也さんによると、その他「若年&熟年離婚」「DV・児童虐待」「女性活躍推進」「働き方改革・生産性向上」「介護離職」「ジェンダー平等」「地域社会活性化」「人生100年時代」などの改革も、男性の家事・育児参加によって解決しうるとか。ちなみに、少し前に小泉進次郎環境大臣が男性育休を取得し話題になりましたが、組織長である大臣としての男性育休であり、国会議員にも地方議員にも育児休業の制度は設けられておらず、仕事量を適宜調整しながら家事・育児を担うことになっています。
■画像:男性育休1,2
*1 選択する未来2.0 中間報告 参考資料 2020年7月1日
*2 第42回仕事と生活の調和連携推進・評価部会 資料1-3 男性の育児休業の取得と家事・育児参加
■保健福祉委員会(11月22日)報告に対する質疑
(1)重症心身障害児放課後等デイサービス事業所開設経費等補助対象事業者の選定結果について
(方南二丁目に新たな重症心身障害児の放課後等デイサービス事業所ができます)
質問:送迎は行うものと認識している。動線も敷地前も道路があまり広くないようだが、乗降時の対応など問題なさそうか。
障害者施策課長:確かに道幅は狭いが、同じ建物で高齢者向けのデイサービス事業者が事業を行っており、通りから建物までの動線や乗降についても、無理なく運営できていることが確認できている。問題ないと認識しているが開設後も注視していく。
(6)(仮称)井荻学童クラブ外3学童クラブ運営業務等受託者候補者の選定結果について
質問:11月15日に令和4年度の杉並区学童クラブの入会募集が始まったが、民間の学童クラブは児童福祉法に定める放課後児童健全育成事業の届出をしている2クラブしか掲載されていない。学童クラブ待機児童が200名超発生している中、民間学童クラブという選択肢を提示することで、一定の待機児童減が期待できると考えるが、この届出をしていない民間学童を把握する方法はないか。
児童青少年課長:指摘の通り、放課後児童健全育成事業の届出をしていない民間の学童クラブについては、区に届出をする義務がなく、把握できていない。
アイコン・吹き出し:「リクルート時代の経験から、これを解決するアイデアが思いつきました!次回の一般質問で提案してみようと思います」
■災害対策・防犯等特別委員会(11月29日)報告に対する質疑
(1)不発弾の処理について
10月9日、和泉二丁目の住宅敷地から不発弾が見つかり、11月28日に自衛隊等の関係機関の協力のもと、安全に処理された、という報告
質問:処理が行われた不発弾は、どのようなルートで区外に搬出されたのか確認する。
危機管理対策課長:処理済みの不発弾を積んだ車をパトカーが先導し、井の頭通りに出て西に進み、環状八号線を経由して朝霞駐屯地に移送した。
アイコン・吹き出し:安全に処理された状態とはいえ、私の住む荻窪も通過していたのですね。知りませんでした。
■全員協議会(12月3日)における質疑
杉並区議会は、議会改革の取組を継続・発展させることを目指し、議会基本条例を制定しようとしています。10年以上の議論を経て、素案がまとまったため全員協議会を開催しました。4月1日の施行を目指し、1月1日から意見提出手続きを行います。QRコードからアクセスして、皆様のご意見をお寄せください。
質問:議員定数や議員報酬に関して、議会改革特別委員会及び部会ではどのような議論があったのか。
議会改革特別委員会委員長:議員定数については理念的文言を入れることの是非等、議員報酬については特別職報酬等審議会の位置づけ等、様々な議論が重ねられた。議会基本条例制定後は、その条文や解説にのっとって、各議員・会派が考えていくものと認識している。
質問:区議会BCP*に基づく議会運営や、要綱に基づくオンライン会議の実施等、最近の新たな動きについてはどう考えているのか。
議会改革特別委員会委員長:議会基本条例には「条例の見直し」を規定している条文がある。一定の実績や立法事実が積み重なった段階で、必要があれば見直しについて検討がなされるものと認識している。
*事業継続計画のこと。災害発生時などに、どのように議会として動き、必要な機関決定を行うか定めたもの
・ご報告
10月31日投開票の第49回衆議院議員選挙では、東京都第8区の日本維新の会公認候補かさたに圭司に40,763票、比例代表では杉並区で37,160票をいただきました。東京で2名、全国で41名の衆議院議員が誕生しました。国政との連携も強め、杉並での政策実現に引き続きこだわってまいります。
・プロフィール
1983(昭和58)年9月1日生まれ。早稲田大学法学部卒業後リクルートに入社、「SUUMO」で9年間などITの営業部門を歴任。2009年に杉並区荻窪に転入、2011年に転勤で仙台へ。その後札幌での勤務も経験し、2015年に荻窪に戻る。
地域では荻窪消防団第5分団に所属し、荻窪南口大通り親交商店会の副会長を務める。日本維新の会所属、東京維新の会事務局長。現在杉並区議会議員1期目。自民・無所属・維新クラブ(交渉会派)に所属。その他、保健福祉委員会副委員長、災害対策・防犯等特別委員会、ICT活用検討推進委員会、杉並区情報公開・個人情報保護審議会、杉並区国民健康保険事業の運営に関する協議会等に所属。東京若手議員の会副代表(23区西部、性教育・不妊治療プロジェクト担当)、子どもの事故予防地方議員連盟事務局長。
2018年生まれの双子男児と妻との4人暮らし。