11月16日の一般質問について(質問全文)

11月16日、令和3年第4回定例会で一般質問を行いました。

  1. プレミアム付商品券事業について
  2. ナッジの活用について

〈動画〉

以下に質問の全文を掲載します。

 自民・無所属・維新クラブの松本みつひろです。通告に従い、一般質問をいたします。プレミアム付商品券事業について、ナッジの活用について伺ってまいります。

 

1.プレミアム付商品券事業について

10月31日に終了した、プレミアム付商品券事業について伺います。この事業は、東京都の令和2年度最終補正予算における、東京都生活応援事業を利用したものと承知しています。新しい日常における「生活応援」を図るとともに、デジタルの力を活用した地域経済の活性化に向け、キャッシュレスによるポイント還元などの取組を行う区市町村を支援することを目的とし、プレミアム率の上限は30%、都が四分の三、区が四分の一を負担し、原則デジタルで実施するもの、とされています。この補助事業を利用し、令和3年度一般会計補正予算第2号として提案、可決され、6月14日に販売開始、7月30日から利用開始された事業です。デジタルを原則としながらも、地域の実情に応じて紙の商品券を発行することも認められており、杉商連からはデジタル51:紙49といった提案もありつつ、1-1.最終的にデジタル75:紙25という割合に決まりました。ここに至る議論の経過について、まず確認いたします。「デジタルの力を活用した地域経済の活性化に向け、キャッシュレスによるポイント還元などの取組を行う区市町村を支援」と謳われている都の事業目的が果たせている、と言えるのかどうか。1-2.結果的にデジタルの割合が高い事業を行った杉並区として、都の補助要綱をどのように解釈した上で、75:25としたのか、伺います

デジタルの力を信じ、キャッシュレス決済やQRコード決済の利便性を強く感じている私としては、都事業の意図を最大限尊重し、都補助を活用したプレミアム付商品券事業は葛飾区のように100%デジタルで行ってもいいのではないか。区と地域の商店が一体となってデジタルデバイドを抱える区民をサポートし、この事業を契機に多くの区民がデジタルデバイドを乗り越え、感染症対策にも優れたスマートな消費活動が活性化されていく、そんな未来を描けたのでは、という思いもありました。そのような期待は、プレミアム付商品券事業が始まって間もなく萎(しぼ)んでこととなります。

7月30日の事業開始から数日の間に、多くの区民からこの事業に関するご連絡をいただきました。特設サイトの取扱店舗の検索結果に、デジタル商品券が使えるという記載があるにも関わらず、支払いの際にデジタル商品券は使えないと言われた、もしくは店頭のPOPにデジタル商品券の利用不可と表示されていた、という内容の問合せについて、1-3.運営事務局に届いた問合せ件数と、1-4.デジタル商品券が途中から使えなくなった商店数1-5.デジタル商品券を使えないように変更した主な理由を確認します

私もデジタル商品券を購入しました。利用可能となっている、荻窪のタウンセブン地下一階の食品フロアで買い物をし、レジに並んでいる間にQRコードを読み込む準備を始めました。あらかじめ、スマートフォンのホームにセットしてあるアイコンを押すと、「suginami.stampay.worldであなたの位置情報を利用しようとしています」といったメッセージが表示され、許可するかしないかの判断を求められます。これはブラウザアプリに位置情報へのアクセスを常時許可していない限り毎回表示されるメッセージで、煩わしい印象を持ちました。位置情報の取得に時間がかかることによるタイムアウトが多数発生しているという報告もありますが、1-6.ブラウザアプリに位置情報を常時許可することについて、どのようなセキュリティ上のリスクがあるか、見解を求めます。その上で、1-7.位置情報を提供することにどのようなメリットがあると考えた上で、この仕様に決定したか、見解を求めます

その後、ログインボタンを押下(おうか)すると、メールアドレスとパスワードの入力を求められます。コンピュータセキュリティ関連情報の発信などを行う日本の一般社団法人JPCERTが長年にわたり、同一のパスワードを複数のサービスで使い回しをしないよう呼び掛けていることもあり、パスワードは複数のものを使い分けるのが一般的と認識しています。メールアドレスも、フリーメールの利便性向上に伴い、複数のアドレスの使い分けをされている方が増えています。プレミアム付商品券のアカウントをどのメールアドレスとパスワードの組合せで設定したかを、レジに並んでいる短い時間の間に思い出し、ログインボタンを押下すると、次の画面に遷移します。この時、ログイン情報を入力するというチェックボックスにチェックを入れておくと、次回以降原則としてメールアドレスとパスワードがあらかじめ入力されている状態になるのですが、後日プレミアム付商品券を利用しようとホーム画面からアイコンをタップすると、メールアドレスとパスワードの欄が空欄となっていることがあります。1-8.ログイン情報を記憶する、がリセットされる条件が、どのように設定されているか、確認いたします

メールアドレスとパスワードの組み合わせが正しいと、認証コードの発行が求められ、登録したメールアドレスに4桁の認証コードが届き、10分以内に認証コードを入力することで本人認証が完了し、商品券の利用画面に遷移します。残高、チャージボタン、支払いボタン、そして位置情報を提供した場合には近くの加盟店が一覧で表示されています。1-9.チャージボタンを押下すると、どのような画面に遷移するのか、また1-10.このボタンはどのような時に使うのか伺います。支払いボタンをクリックすると、カメラが呼び出されますが、この時にもカメラへのアクセスに対する許可が求められます。1-11.ブラウザアプリにカメラアクセスを常時許可することについても、そのリスクに関する見解を求めます。カメラが起動し、レジ付近に掲示されているQRコードを読み込み、支払金額を入力して確認を押すことで決済が完了します。入力した支払金額を、レジ担当の方に確認してもらいやすいように反転させる機能や、決済完了を音で知らせる機能はついていません。

2021杉並区プレミアム付商品券発行運営業務委託仕様書を確認したところ、デジタル版商品券の利用情報を自動取得できるようにすること、という文言があり、利用者属性、利用日時、利用店舗等を自動取得できるようにすること、という記載があります。このうち、1-12.利用者属性については、具体的にどのような情報が取得されているのか、情報取得の同意を具体的にどのような形で行っているか、確認します。仕様書によると、紙とデジタルを一括で委託した上で、受託者に本業務の一部を第三者に再委託する際の条件が定められています。デジタル商品券については再委託で実装したものと承知していますが、事業者は1-13.ウ:再委託を行う理由、エ:再委託先の選定理由、オ:再委託先に対する管理方法をどのように記載しているか確認します。議会事務局経由の調査によると、1-14.杉並区と同じように特設サイトにブラウザでアクセスする仕組みは、港区、豊島区、足立区、葛飾区で採用されているようですが、これら4区も同じ事業者の提供によるデジタル商品券事業となっていたか、確認いたします

 

縷々、使い勝手について質問をしてまいりました。公正取引委員会が令和2年8月4日に発表した、コード決済事業市場シェアによると、最も多く使われているQRコード決済アプリPは、令和2年1月時点で55%のマーケットシェアを持っているということです。このアプリはQRコード決済の利便性を追究し、既に多くの区民に利用されています。それと比較すると、杉並区が今回用いたブラウザベースのQRコード決済の仕組みは決済までに手数が掛かるものとなっており、使いづらいと感じられた区民は一定数いたのではないかと憂慮しています。東京都生活応援事業では、Pを活用したポイント還元での利用も可能となっており、本日時点で利用できる自治体だけをとっても、千代田区、港区、品川区、文京区、調布市、国分寺市といった自治体で、Pを活用したポイント還元を受けることができます。このスキームであれば、区外の方が杉並区の商店で買い物をする動機を与えることができるため、事業の目的である地域経済の活性化に資するものと思います。また、広く利用されているPを活用するメリットとして、使い慣れているユーザーと商店が多く、手間取ることがそもそも少ない上に、利用に対する問合せについても、P側に吸収してもらうことが可能になる、という点も区の事業としては魅力的です。1-15.杉並区が区独自のブラウザベースのサイトによる、プレミアム付商品券事業を行うこととした検討の経過について、答弁を求めます。また、1-16.区独自のプレミアム付デジタル商品券の「使いやすさやわかりやすさ」について、事業者と所管以外の第三者のレビューを事前に得ていたかについても、確認をいたします。広く区民一般を対象としたキャッシュレス決済の事業として、キャッシュレス決済に魅力を感じてもらい、デジタルデバイドを乗り越えるきっかけにしていきたい、と期待していましたが、逆にデジタル商品券を利用したことで「やっぱりデジタルは難しい」という印象を持たれた区民がいらっしゃったのであれば、そのことについては残念に思います。

1-17.2021杉並区プレミアム付商品券発行運営業務委託について、委託費用の総額を確認します。紙の商品券の販売にあたっては、当選者にハガキを送付して区内の郵便局1カ所を指定し、郵便局で購入する、という仕組みになっていました。1-18.紙商品券の販売について、申込と購入それぞれの総額と、それに対する紙商品券の販売や換金等に要した一連のコストについて確認します。デジタル商品券については、取扱店舗からの換金請求がなくとも、円滑に換金手続を行うこととされていますが、紙商品券については換金漏れがないよう周知・啓発を行った上で期間後は換金しないこととされています。現在換金期間中ですので、期間終了後に開催される区民生活委員会等、適切な機会に、換金漏れの状況について議会への報告を行うこと、また換金漏れ事例を次期の同種事業において紹介し、換金漏れがないことをデジタル商品券利用のメリットの一つとして店舗側に伝えることについて、要望させていただきます。

デジタル商品券については、販売予定数に達しなかったため、8月3日から19日に追加販売を行いました。このことについて、「予算の追加や対面での販売日の追加であればまだしも、売れ残りを追加販売と称することは景品表示法上の優良誤認にあたるのではないか」という指摘がありますが、1-19.過去の商品券事業でも販売予定数に達しない場合に「追加販売」という表現を用いていたかを確認した上で、1-20.この指摘に対する区の見解を求めます

この項の最後に、1-21.商品券の利用実績を紙・デジタルそれぞれ確認します1-22.令和元年の同種事業と比較して、利用可能店舗はどのように変化しているか、またその要因をどのように認識しているか伺います。購入セット数は当初販売では一人5セットとされていましたが、追加販売についてはセット数の上限を撤廃しました。1-23.最も多い方で当初販売分を含め何セット購入されたか、またその主な使途について、可能な範囲での答弁を求めます1-24.今回の事業について、現時点での総括的な評価を確認し、1-25.今後の改善点をどのように認識しているか、見解を求め、次の質問に移ります。

2.ナッジの活用について

新たな杉並区総合計画内に位置づけられることとなった、区政経営改革推進基本方針には、「質の改革」の追求というコンセプトが打ち出されました。11月1日の全員協議会では、我が会派の岩田いくま議員から、デジタル化を念頭にデザイン思考やアジャイル開発の積極的活用について指摘をさせていただきましたが、関連して私からもナッジ理論の紹介をさせていただき、ナッジを区政の質の改革に活用いただければという思いから、質問させていただきます。

ナッジ理論とは、「小さなきっかけを与えて、人々の行動を変える戦略」で、行動経済学で用いられる理論のひとつとして扱われています。「ナッジ」は直訳すると「肘でちょんと突く」という意味です。2017年に理論の提唱者である行動経済学者リチャード・セイラー教授がノーベル経済学賞を受賞したことで、注目されるようになったものです。身近にある事例として、男性用トイレの立小便器内にコバエのマークが描かれているのを目にした方もいらっしゃるかと思います。これは、「人は的があると、そこに狙いを定める」という行動インサイトに基づいたもので、この取組を行っているアムステルダムのスキポール空港では、トイレの床を汚す人が少なくなり、トイレの清掃費が8割減ったということです。環境省が事務局を務める日本版ナッジ・ユニットでは、行動インサイトとAI/IoT等技術を融合させたBI(バイ)-Tech(テック)を提唱しており、国の成長戦略やAI戦略にも位置付けられています。その他、政府では内閣府や経済産業省、自治体では横浜市、尼崎市、つくば市等に組織が設置され、施策レベルでも神奈川県や八王子市、鎌倉市等で取組が見られます。2-1.杉並区で既に行っている、ナッジを活用していると考えられる取組をまず確認します

他の自治体で行われている、ナッジを活用して人々の行動をデザインする手法を、いくつかの類型に分けた上で具体例を示してまいります。まず、初期設定を見直す方法として、オプトアウトをご紹介します。オプトアウトとは、自らに関する情報の利用に際し、初期設定では利用するものとした上で、情報提供に不同意の場合に許諾しない意思を示すことを指しています。対義語はオプトインで、許諾がないと情報提供できないとする概念です。自治体行政でいえば、避難行動要支援者名簿などでの活用事例があります。目黒区はオプトイン方式で避難行動要支援者名簿を作成しており、昨年の目黒区議会では対象者における登録者の割合が58.4%と答弁がされていましたが、目黒区と同規模の三重県津市ではオプトアウト方式を採用しており、登録者の割合は95.8%となっています。2-2.避難行動要支援者名簿の登載者について、杉並区の登録制度の登録割合を確認するとともに、同制度におけるオプトアウト方式の活用について、区の見解を求めます。同様に、男性職員の育児休業について、千葉市では育休取得をデフォルトとして、取得しない場合に理由を付して申請をするオプトアウト方式に切り替えたところ、平成30年度の男性職員の育休取得率は65.7%に達しているということです。2-3.男性職員の育児休暇取得率について、杉並区の過去3年の実績を確認し、今後のオプトアウト方式の活用について見解を求めます

ナッジを活用した行動デザインの事例として、次に、想像以上に動かない「人」という存在を、コストの低減によって動かす考え方を紹介します。コストというのは、金銭的な意味だけでなく、時間的、頭脳的など広義の負担感を指しています。

24種類のジャムを用意した試食販売よりも、6種類のジャムを用意した試食販売の方が、購入率が10倍高かった、いわゆるジャムの法則は、選択肢が多すぎることは人にストレスを与え、選択をやめる人を増やしてしまうことを示唆しています。ジャムの法則を自治体行政の文脈で考えた場合に、区政経営改革推進計画や共同推進計画にも引き続き示されている戦略的広報の推進を行う上で、メッセージの単純化や、情報ボリュームを適正化することによって、わかりやすい発信を行い、区民に実際の行動を促すことは重要と考えます。2-4.戦略的広報を行う上で、行動経済学の知見の活用をどのように考えているか、見解を伺います

続いて、ナッジのうち、得る喜びよりも失う痛みを大きく感じる心理、損失回避傾向を活用した施策を紹介します。八王子市では、大腸がん検診の検査キットを送付した対象者に対する受診勧奨について、「今年度受診すると来年度もキットを届けます」というポジティブなメッセージと、「今年度受診しないと来年度はキットを届けません」というネガティブなメッセージの2パターンに分けたところ、ネガティブなメッセージを受け取った集団の方が、7ポイント受診率が高いという結果を得たということです。

さらには、イギリスでは税の督促に「イギリスでは、10人中9人が税金を期限内に支払っています。あなたはまだ納税を完了していない極めて少数派の人です」というメッセージを添えることで収納率を5.1%上昇させた事例があり、これは社会比較ナッジと位置付けられる手法です。

ナッジには課題もあります。特に行政におけるナッジ活用に関しては、倫理的な問題についてよく検討する必要があり、行動インサイトを活用して区民生活に介入し、その行動様式に影響を及ぼしうることを認識する必要があります。提唱者のリチャード・セイラー教授も、賢い意思決定や向社会的行動を難しくする、いわば悪いナッジを「スラッジ」と呼び、これを排除すべきとしています。日本版ナッジ・ユニットには倫理委員会が設置され、ガイドラインの検討などが行われています。ナッジの活用にあたっては、全面展開をする前に小規模な検証を重ね、ナッジが想定通りの効果を発揮するか、スラッジになっていないか確認しながら進めていくべきであり、効果検証を適切に行うためにもデータの利活用は重要な視点となります。既存の統計データの利用環境の整備や、必要となる新たなデータの取得などを通じてエビデンスを蓄積し、エビデンスに基づいてナッジを展開していくという進め方は、まさしくEBPM、エビデンスに基づく政策立案そのものともいえます。2-5.新たな総合計画等の推進において、EBPMをどのように活用していく考えか、区の見解を伺います

これまでの杉並区の各種施策においても、区民の参加や行動を促すための様々な工夫を凝らしてきたものと思っています。それらのうち、行動科学の知見と軌を一にするものを、経験則や暗黙知から体系化し形式知へと整理することによって、より一層施策の実効性を高めていくことは、施策指標の目標を達成すること、そして「質の改革」の追求にとって重要な要素ではないでしょうか。2-6.ナッジなど行動科学の知見に基づく政策立案や広報を取り入れることにより、区が行う各種事業の費用対効果や施策指標の目標達成率を高めていくべきと考えますが、このことについて区の見解を求め、質問を終わります。