行政に働きかける際の上手な議員の使い方

言わなくていいことかもしれない、と自重してきましたが、黙っていることで不幸なことが多発しているので、書いてみようと思います。

新型コロナウイルス感染症に関する、特に保育園の対応について、このところ多くの要望を受けています。
その多くは「~にして下さい」「~となるように働きかけて下さい」という内容でご連絡をいただきます。

私たち政治家は、「何か困りごとがあったら気軽に連絡してください」と皆さんにお伝えしているので、ご連絡をいただくこと自体は嬉しいことです。
それが難しいご要望だったり、中には受け入れがたい内容のものもありますが、一つ一つ真摯に向き合い、行政と調整した上で結果や検討状況を報告しています。
このプロセスを一年中、毎日繰り返していく中で、残念ながら「これはよくないやり方だ」と感じたことがあります。

それは、「同じ要望事項を多数の議員に送りまくる」ことです。
要望を受けた議員が確認する先は同じ課長で、その課長は要望を受けた議員の数だけ同じ回答をしなくてはなりません。議員と課長のやり取りは、多くの場合電話で行われます(メールは粗略、基本対面で無理なら電話というカルチャーのため)。
議員側は5分の電話でも、12人の議員から問い合わせがあれば課長側はそれだけで一時間かかります。
また往々にして、議員にご連絡を下さる方は、その前に所管課と電話でやり取りしていて、ご要望が満たされなかった状態になってからご連絡いただきます。
ですので匿名で我々にご連絡いただいても、行政側は誰からのご要望だか把握しています。全く同じ意見で区役所に要望される方というのは案外少ないようです。

行政が心がけていることの一つに、「誰に確認されたことでも同じように返事する」ということがあります。
区民から聞かれたことでも、議員から聞かれたことでも、名前を出していても匿名でも、それで返事が変わるというのは行政としてはあってはならないことです。
そして、たくさんの区民からの要望であれば受け止めますが、一人の区民の意見を複数の議員からぶつけられても一人の区民の意見と処理するのが行政の正しいあり方だと、私も思います。

一方で、冷静に、公平さを旨とする行政ですが、職員も人間です。時間を無駄に奪われたり、筋の通らないことをねじ込まれたりすると気持ちは後ろ向きになりますし、結論が変わることはあってはならないですが、結論に至る時間がちょっと長くなるようなことは現実にあります。

他区でやっているからうちもやるべき、という論法、行政にはあまり響かないです。財政状況も違えば区長の考え方も違うし…という捉え方なのか、私もよくやるのですが手ごたえ薄いです。ただしやるとなった場合にはそういった情報も必要なので、べき論ではなく情報提供として行う分には歓迎される向きもあるように感じます。

そして職員も同じ人間です。時にサンドバッグに見えている人もいらっしゃるようですが、実は個人として同じ問題に直面している、という場合もあります(そのような個人的な事情で対応が変わったと思われてはいけないため、あまりそのことを言いませんが)。

でも、ロビー活動ってのがあるじゃないか。たくさんの政党に要望書持っていって一緒に写真映って、あれは意味ないの?和牛商品券とかってその成果でしょ?というご感想をお持ちの方もいるかもしれません。
ロビー活動の意味を否定するつもりはありませんが、新型コロナウイルス感染症関連の保育や子どもの居場所に関する一連のお問合せとの決定的な違いは、時間軸と求める行動です。
現時点で検討していないテーマに対して、こういった要望が数多くあるので、それなりに時間をかけて「検討」していってくれ、という場合には効力がありますが、
今回のように課題を行政側もわかっていて検討しているし、既に継続的に関与している議員もいる、来週にも対応しなくてはならない、というテーマになるとできることは現状の「確認」になります。確認の場合は同じ返事をするのが行政です。
個人的な困りごとは別です。でもご意見として多数派だった、みんな困ってる!行政こうすべし!というものは、区も検討しているし、国や都も動いています。
(国の動きで区が膠着する、ということは実際に起きていますが、それは確認をもってお返事させていただいています。)

そしてこれもいいこととは思いませんが、現実として、ロビー活動によって成果を得ている人たちは、名前も出す、顔も出すはもちろん、何度も訪問する、票も集める、金も集めて献金する、というのが実態です。
私と日本維新の会は、企業・団体からの献金は受け取っていませんが、受け取っている政党からすれば、金も出さないのに・・・という感情はどうしても持ってしまうのではないかと推測しています。献金は受けていなくても、人となりや置かれている状況がある程度わかっている人の方が、匿名だとしても一生懸命取り組みやすいというのが私としての正直な感想です(これは穿った見方かもしれませんが、行政側も相談相手をきちんと把握できていない状態で伝書鳩として質問する議員なのね、とみるような気もしています)。

では、行政にこうしてほしい、ということを思った時に取るべき行動は。
要望事項を預ける議員を、一人か多くても二人に絞るべきではないかと思います。
そして過去に相談履歴があって、対応が的確だった場合にはその人に絞ることをおすすめします。二人というのはあくまで、相談した一人が動かないリスクへのヘッジです。
事前に役所と直接交渉しない方がいいか。もちろんしていただいて大丈夫ですが、努めて冷静に振る舞われて下さい。場合によっては怒っちゃうかも、という内容であれば、最初からお任せいただける方が助かるというのが正直なところです。

相談する議員は誰がいいか。本来であればその分野に精通している議員がいいのですが、誰がどの分野に詳しいかきちんと調べるのも大変だと思います(議事録の検索や一般質問の項目を見るなど)。
少し手間がかかりますが、SNSで検索して発信内容を確認する、というのが掛けた時間に対して効果が一番いいかなと思います。
より簡単な方法としては、自分と年齢が近い議員に連絡してみる(同じ課題を持っている可能性が相対的に高い)、自分と家が近い(自分のこと知っていてくれたのかも、とモチベーションが高くなる)、希望に合った連絡先が開示されている(メールやSNSでやり取りできる、電話番号を開示したくないので固定電話を開示している議員に連絡する)、という選び方があるかなと思います。

いずれにせよ、行政とやり取りするために時間調整して(平日の日中)、電話で問い合わせるというだけでも、特に日中働かれている方にはご負担かと思います。私もそうでした。
私たちは平日日中に行政と電話連絡をしたり、特定の職員とメールでやり取りでき、区民の皆さんに合った手段で正しい情報をお伝えする役割も担っています。選挙での投票によって、その役割を与えていただいています。

適切な方法で、ぜひ議員を活用いただければと思っています。