投票日から一年に思う、政治と世の中の距離感の変化

一年前の今日(4月21日)は、杉並区議会議員選挙の投票日でした。

一年前の昨日は選挙戦最終日、一年前の明日が開票、当選が判明した日ということになります。任期は5月1日からなので、間もなく1/4が終わろうとしているタイミングですが、世の中がこんなことになるとは思わなかったです。

少子化という中期的な国難に、不妊治療の無償化で立ち向かうことを掲げていましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大という眼前の国難が発生。学校は休校となり、杉並区では保育園は原則休園、それに伴って保護者は在宅勤務へと急速にシフトし、飲食店なども休業や業態転換を強いられる。なかには将来実現されるべきと思っていたことが、大きく前倒しで始まってきているようなものもあるけれど、収入が途絶する現役世代、学びの保障が危ぶまれている児童・生徒、遊びと育ちが異常な環境の中で行われる子ども達が被っている不利益の大きさに、暗澹たる思いがこみ上げてきます。

そしてこの時代に議員として政治に関わらせていただいていることに思いを致し、改めて使命を全うする所存です。コロナ対策に必要な歳出を断行することでさらに傷む財政を、なんとか破綻させないように行政機構の経営を担っていくことになります。小さな行政機構が大きな区民福祉を創出していけるよう、コロナの終息を見据えた改革が必要になっていきます。

改革を叫ぶ政治家は、昭和の終わりから令和のはじめまで、星の数ほど存在しましたが、大阪府市など少数の自治体で成功事例がある程度です。日本が、東京が大きく改革されたという感触を持たれている方はほとんどいないのではないでしょうか。若手で改革を志す政治家は、「投票率が上がれば、世の中は変わる!」と声を枯らせて訴えてきましたが、投票率の漸減傾向は止まりませんでした。

ところが、ここにきて大きな潮目の変化を感じています。

・「ふつうの人」が政治に関する意見の発信を行うようになってきた

政治関係者ではない、元同僚や友人たちが、政治に対する問題意識を持ち、発信されるようになってきたのは、ここ2ヶ月くらいで顕著に見られる傾向です。

昔から「宗教と政治の話はタブー」と言われ、私自身も議員を目指すことを表明してから「仲間」が減ったことを感じています(「友だち」は減っていないと思っている)。Facebookでも、子どものことを投稿すると100いいね、政治のことだと10いいね、というくらいに、政治には関わらないというスタンスは一般的だと感じています。問題意識を持っていた人はもちろんいると思うけれど、発信には至らなかった。その方々が発信している内容を見ると、新型コロナウイルス感染症の拡大に対する政府などの対応に不満を感じたこと、また自分自身の生活にここまで影響して来るのかと実感した、ということが契機となっているようです。

・今まで投票に行かなかった人が行くようになった

コロナ禍のさなか、4月19日に強行された目黒区長選挙、4年前26.02%→今回33.33%と大幅に増加しました。

緊急事態宣言の中、普段の選挙よりも投票に行くリスクが高い中で、この増加幅は想定していませんでした。政治に対する意思表示を、投票という形で完遂するという一貫性のある行動が、前回投票時よりも7ポイント以上増加しています。

・オンライン投票の機運が高まってきた

スマートデバイスの普及に伴い、「世の中がこうなったらいいのに」と思いつく代表的なアイデアの一つで、浮かんでは消えていたオンライン投票の機運が、感染症対策と「不要不急ではない」選挙の実施との兼ね合いで改めて俎上に乗ったと感じています。以下は10万円給付の記事ですが、文中にこのような表記があります。

インターネットによる投票の導入に関しては「今の法制下ではできないが、大きな変化の中でどうすべきか国会で議論することだと思う」と述べた。

10万円給付「オンライン・郵送で手続き」首相が記者会見 - 日本経済新聞

安倍晋三首相は17日の記者会見で、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言の対象を全国に広げたことに関して「どうか外出を控えてほしい。できる限り人との接触を避けて…

若年層の投票率が高まることが保身上のリスクになる既得権益層によって、議論の芽を潰され続けてきましたが、オンライン投票が実現すると、これまで「面倒だから」といった理由で投票に行かなかった層の投票率が大きく高まり、また投票日の天候などによって投票率が左右されることもなくなります。一方で選挙の原則である秘密選挙(誰に投票したかを秘匿できる権利)や自由選挙(自分の意思で投票先を選択できる権利。たとえば投票日に勤務先などに集められ、特定の候補に投票したことを確認させられる、といったリスクがオンライン選挙で懸念されている)などをオンラインでどのように担保するか、総理の言う通り検討すべき課題はあります。杉並区で行われる次の選挙は東京都知事選挙の予定で、そこまでにこれらの課題が解決できるよう、アイデアを出していければと思っています。

新型コロナウイルス感染症の拡大で傷ついたもの、失ったものは既にとても大きいし、この先も拡大していくことが懸念されている状況です。

その中で、政治をタブー視せず健全な課題意識を持ち、その課題意識を投票という行為で表明し、またその投票という行為の負担感を下げる制度改革が行われる。このような世界が実現されることを望み、またそのために行動していこうと思います。