卒業式の日に寄せて~杉並の特色ある教育~

本日は杉並区立小学校の卒業式です。

今年は満開の桜の祝福を受けての卒業式になりました。ご卒業、おめでとうございます!

新型コロナウイルス感染症の影響で、来賓の臨席は叶いませんでしたが、本日は昼過ぎまで区内を回っていて、たくさんの卒業生たちの晴れがましい表情を目にすることができました。そしてこの年になってくると、子ども達ほど破顔していなくても、全身に喜びを湛えた保護者に感情移入してしまいます。保護者の皆様も本日は誠におめでとうございます。

杉並区立小学校の卒業生の3割が、私立中学校に進学するといわれているのですが、区立中学校に進学される7割の方には、引き続き質の高い教育を提供する責務を区が担うことになります。GIGAスクールネットワーク構想が、きちんと学びの進化に繋がっていくように、議会もチェック機能を果たすだけでなく、情報収集に努めた上で杉並区教育委員会によい提案をし続けてまいります。

昨晩もマイクロソフト社の「ICT活用による教育改革の取り組み」というオンライン勉強会に参加するなど、外部からの情報収集も積極的に行っているところではあるのですが、杉並区教育委員会としても「特色ある学校づくりの充実」という取組を行っており、各校が地域と連携しながら創意工夫を凝らした独自の教育を行っています。この取組の中から、次世代のスタンダート(リクルート用語でいうところの「アタリマエ」)が生まれてくるのではと、期待と共に注目しているところです。

「特色ある学校づくり」に以前から注力されている、杉並区立浜田山小学校(浜田山4-23-1、伊勢明子学校長)の

AIロボット授業2020「SDGs ~食品ロスを減らそう~」(5年生)

AIロボット授業2020「Society5.0 ~自動配送ロボット~」(6年生)

を見学させていただきました。

 

「SDGs~食品ロスを減らそう~」は、開校65周年の記念にPTAから寄贈された(!)AIロボット「Sota」を活用して行っています。

少人数のグループでのディスカッションを児童が行う場にSotaが参加して、発言の少ない人を特定したり議論の流れを把握し、担任がSotaのスピーカーを経由して声がけをする、という活用をされていました。

私の感想としては、

・ディスカッションのログが残り、それを見た上で思い込みを排したファシリができるのは、ICTを組み合わせて議論を行う大きなメリットであると感じた。30人:1人(8班:1人)でも有効な声がけができていた。
・システム側の自然言語処理が追い付かず、どの班も児童の議論が先行し、Sotaが置いていかれてしまっていた。Sotaが次のフェーズに行くまで、児童たちがなぜ進まないかわからず困っている場面は何度か見かけた。
・席を自由に動いて端末がある席に児童が集まる班だと、全員の発言が一人の発言になってしまい(声の方向性で個人を識別しているため)、システムが挙げるアラートがノイズだらけになっていた。音声認識は組み入れ難易度があまり高くないと思われるので、要望する手もあるのではないかと感じた。着席で議論している班も、マイクがコードに引っ張られると発言者の判定がずれてしまっていた。
・担任の先生は、上記のような問題点が次々と現れる中、一つずつ的確に対応しており、VUCAの時代を乗り越える大人の姿を児童に見せていたことが素晴らしかった。そういう意味では裏側を児童が知る機会がもう少し厚くあってもよかった。
といったところで、改善の余地はあるものの、「今後の実装に向けた試行」の段階は既に超え、児童に恩恵のある形でのICT活用が行われていることが確認できました。
 
 
 
 
「Society5.0 ~自動配送ロボット~」では、「複数の住宅に食品を届ける」ことをイメージし、↑のロボットの移動経路をプログラミングしました。
 
 
 
杉並区でもMaaSの研究を始めるタイミングとあって、MaaSではAIが担う部分を、浜田山小学校の6年生はこの授業で経験したことになります。
ロボットの電力消費が激しく充電に時間を奪われる問題点はあったものの、児童はみな試行錯誤し、粘り強くよく考え、狙い通りにロボットが動いた時には大きな達成感を感じていました。
 
 
国語や算数といった昔ながらの教科と比較すると、大人からは達成度合いが見えにくい部分もあると思います。その上で、社会に出てからの実践的な能力としての承認を含め、保護者が長期的な視野に立ってこのような教育に賛同し、保護者も協力しながら推進(PTA会長も見学に来られていました)しているということが、浜田山小学校の取組のキーポイントであることを感じました。
 
 
一人一台タブレットを使い倒すこれからの教育、保護者が児童だった時代とは大きく形を変える教育を子ども達が受けていく上で、保護者の理解を得ていく重要性は高まっているものと思います。ICTと教育者教育現場と保護者、この二点がしっかり結ばれていることが今後の教育にとって重要となっていくだろうと予測し、私自身がその結び目となっていけるよう、教育についてもより一層取り組んでまいります。