10月12日の決算特別委員会での意見開陳(全文)

10月12日、決算特別委員会での審議を経て、所属会派を代表して令和2年度杉並区一般会計歳入歳出決算他4議案に対する賛成の意見の開陳を行いました。

以下に意見開陳の全文を掲載します。

自民・無所属・維新クラブを代表して、令和2年度杉並区各会計歳入歳出決算に対する会派の意見を申し述べます。

 

 当該決算年度を簡潔に振り返りますと、令和2年度のGDP政府経済見通しは、実質成長率で1.4%程度、名目成長率で2.1%程度、消費者物価は0.8%程度の上昇と見込むなど、内需を中心とした持続的な景気回復が見込まれておりました。ところが、この閣議決定の数日前に国内初の感染者の存在が発表された新型コロナウイルス感染症が全国に拡大し、当該決算年度は年度を通じて新型コロナウイルス感染症への対策に追われることとなりました。結果として実質成長率はマイナス4.6%、名目成長率はマイナス3.9%と政府の見通しを大幅に下回ることとなりました。

そういった環境の中、杉並区は、平成23年度に策定した基本構想の終期である令和3年度を見据え、令和2年度予算を「10年ビジョンの成果を確かなものとする予算」と名付けました。計画事業ごとの目標達成に向け、取組の加速が求められる事業などに必要な経費を盛り込みつつ、「財政健全化と持続可能な財政運営を確保するためのルール」に基づき、財政の健全性を意識した予算編成を行った、との認識が示されております。

新型コロナウイルス感染症の感染者が急増したことを受け、4月7日から5月25日まで緊急事態宣言が発令されました。その後、感染状況として小康状態を取り戻した時期もあったものの、年が明けた1月8日には二度目の緊急事態宣言が発令され、3月21日まで続きました。これらの期間を中心に、区民は生活や仕事に大きな影響を受け、また地域の多くのイベントが中止となりました。マスク等衛生資材の不足や、医療体制の確保、特別定額給付金の支給等、基礎自治体として取り組まなくてはならない臨時的な事業も多く発生し、令和2年度の一般会計補正予算は14回を数えることとなりました。

 こうした1年を通した全体像を踏まえた上で、以下、令和2年度杉並区各会計歳入歳出決算について見てまいります。

 

 初めに、一般会計について申し述べます。

 まず、財政運営について見てまいります。

 令和元年度に初めて歳入決算額が2,000億円を超える財政規模となったところから、令和2年度は2,712億92百万円余と、前年度比31.7%、653億24百万円余の増となりました。この財政規模の拡大は、国庫支出金・都支出金が増加したことが主な要因であり、特定財源の割合が一般財源を上回ることとなりました。経常費用は2,382億53百万円余と、前年の1,734億61百万円余から大幅に増えています。この経常費用から、特別定額給付金関連ならびに新型コロナウイルス感染症対策関連を除いた額は1,731億77百万円余、コロナ対策を除いた行政活動のコストは0.16%と小幅ながら減少しています。

 区自らが定めた財政健全化と持続可能な財政運営を確保するための5つのルールについて、前年度に引き続き全て満たしていることを確認いたしました。質疑の中ではルール4の行政コスト対税収等比率について、前年度から3.3ポイント上昇し95.4%になっており、これは特別定額給付金等の臨時事業の補助金による影響だけではなく、社会保障給付や物件費の上昇に伴うものであり、今後も上昇基調が想定されるという答弁がありました。今後もこの指標の推移については注視してまいります。

 プライマリーバランスが昨年に引き続き黒字であったことは安心しましたが、実質単年度収支がマイナスに転じ、財政調整基金の大幅な取り崩しを余儀なくされたという点からも、厳しい財政の年度であったという認識をしております。

 基金と区債の残高について、積立基金現在高は、財政調整基金の取り崩しが影響し全体で約12億円の減となりましたが、公債費の定時償還を着実に実行したことにより、区債残高が若干の減となっていることは評価できるものと思います。基金及び区債については、必ずしも単年度だけで見るのではなく、中長期の時間軸の中でも判断すべきものであり、当該年度の結果はおおむね妥当なものと判断いたします。その上で、質疑の中で指摘した通り、区民一人あたりの基金が23区で最も少なく、区債残高は23区中11位となっているということなどを踏まえ、基金の積み立て目標額のみならず、区債の発行額や残高に対する目標も設定するよう、総合計画の策定において検討いただくことを要望するものです。

 

 一方で、平成30年度まで財政健全化と持続可能な財政運営を確保するためのルールの筆頭項目であった経常収支比率は、前年度を4.3ポイント上回り、86.4%となりました。経常収支比率に関する我が会派の質疑に関し、当局の認識について丁寧な答弁をいただきましたが、財政構造の弾力性を判断する指標であることに変わりなく、また23区平均と比較しても増加割合が大きい状況にあります。5大ルールから外れたことをもって軽視することなく、今後もその推移についてはしっかりと注視いただくよう申し述べておきます。

 収入未済が着実に減少したことは評価していますが、不納欠損は3年連続で増加となり、また将来の不能欠損となる可能性が高い、徴収不能引当金が年々増えていることについては懸念を覚えています。コロナ禍の影響などによる個人の事情に寄り添いつつ、税行政の公平性について区民の信頼を得られるよう、適切な対応を改めて求めておきます。

 これらの財政分析にあたり、複数の財務書類を活用してまいりました。将来世代に過重な負担を残すことのないよう、財務指標を適切に活用し、持続可能な財政運営となるよう工夫を続けていただきたい旨申し添えておきます。

 

 これらのことから、財政運営についてはおおむね適切であると判断しております。

 

 次に、適切に事業の執行がなされたかという点について、当初予算事業の執行状況を見てまいります。

 初めに、総合計画の施策目標達成状況について。

 総合計画における施策指標のうち、令和2年度の目標値を達成した指標の割合は33.3%となり、前年度から2ポイント強の上昇となりました。いただいた資料によれば、コロナ禍が達成状況に影響したと思われる施策指標は18あり、過去の実績等を踏まえるとそのうちの約半数はコロナの影響がなければ達成した可能性があります。それらを加算した場合の施策指標の達成割合は、40%を上回ったものと認識しています。コロナ禍にあっても、指標の達成状況を意識し、様々な工夫を行いながら取り組んできたことは、一定の評価をしたいと思います。一方で、平成24年度に設定して以来、一度も目標値を達成したことのない指標や、計画終期である令和3年度の達成が厳しい指標も見受けられます。残すところあと半年となりましたが、達成を目指して努力していただきつつ、新たな総合計画の策定に向けては、区の努力によって達成が可能となり、指標の達成が区民福祉の向上につながるような目標の設定について、適切なものになるようしっかりと検討していただければと思います。

当初予算の執行状況について、執行率は96.2%と前年並みでありました。執行率が低い事業について部ごとに答弁いただきましたが、新型コロナウイルス感染症の影響等、やむを得ない事情によるものであると判断しております。

 その他、当初予算における目玉事業及び主要事業や中央進行管理事業についても、質疑の中で確認いたしましたが、おおむね適切に事業執行がなされたものと判断しております。

 

 次に、行財政改革について、簡潔に触れておきます。

 当該年度の行財政改革推進計画に基づく財政効果額は65億円余と、前年実績に対し約8億円の減となっていますが、その要因が財政調整基金積立金の減によるものであり、質疑を通じて確認した個別の取組については、一定の評価をしたいと思います。財政効果額の算出手法についてさらなる検討を求めると同時に、引き続き職員数の適正化に意を用い、予算編成時に見込んだ財政効果見込額を実現できなかった事業については、さらなる工夫を求めるものです。厳しい財政状況が一定期間継続することを見据えれば、行財政改革の必要性は一層増してまいります。令和2年度の取組にもその兆しが見えていましたが、新たな情報技術をさらに積極的に活用する等、前向きに取り組んでいただきたいと思います。

 

 ここで、令和2年度における主な区政の課題について見てまいります。

 1点目は、言うまでもなく、現在も続く新型コロナウイルス感染症対策についてです。

 令和2年度に14号に及ぶ、総額754億円余の補正予算を編成し、適切な執行に努めてきたことについては、補正予算とその執行率に対する質疑を通じて確認しました。なかでも、専決処分を行わず、議会の議決を経て各施策を実行したことについては評価しています。また、財政面での影響について、一般財源を上回る大量の特定財源を歳入したことにより、当該年度においては新型コロナウイルス感染症における一般財源への影響は限定的なものであったといえるかと思います。国や都の補助金等を活用しながら、適切に事業を執行していくことを改めて要望いたします。

 2点目に、デジタル化への対応です。新型コロナウイルス感染症の感染拡大が一つの契機となり、区政におけるデジタル化が緒につき、また教育分野では区立学校において一人一台タブレットの展開がなされました。我が会派から、質疑を通じて、今後一層のIT活用を図る上での具体的な指摘や提案をさせていただきましたが、今年度特定の部課における積極的なデジタル化への取組が見られること、また今年度(仮称)デジタル化推進基本方針を策定することに伴い、デジタル戦略を統括する新たな部門の創設を検討しているという答弁があり、今後より一層積極的にデジタル化を進めていこうと考えている点について評価しています。内部統制におけるITの対応の促進については、改めて要望するものです。

 

 以上、認定第1号令和2年度杉並区一般会計歳入歳出決算を、適切に財政運営がなされたか、及び目標達成に向け適切に事業の執行がなされたかという点を中心に見てまいりました。施策指標の目標達成状況の絶対値や、デジタル化を主戦略とする行財政改革の進捗度合いなどの課題もございますが、総体としては妥当な区政運営であったと認め、認定といたします。

 認定第2号から第5号である国民健康保険事業会計ほか各特別会計歳入歳出決算については、国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療の3つの特別会計への一般会計からの繰入金が合わせて約176億円余に上ること等、留意すべき点もありますが、区民生活の安定の観点から致し方ない面があること、また収入未済、不納欠損とも引き続き減少していることを認め、全て認定をいたします。

 

 ここで、今後の区政運営について、数点要望を申し添えます。

 まず、新型コロナウイルス感染症対策についてです。

 現下の感染状況は小康状態を見せておりますが、昨年の10月も同じく感染者数は低位となっておりました。年末に懸念されている、いわゆる第六波に向けた対応、その中で地域の医療機関との連携を適切に行うことを要望いたします。またワクチン接種についても、3回目接種が年度内にも行われることが予期されておりますが、その先も定期的なワクチン接種が求められていく可能性は現時点で否定できず、賃料を支払い、集団接種会場を確保し続けていくことの財政負担については改めて検討すべきものと思います。地域の医療機関による個別接種を基本とするなど、コロナ禍の長期化に向け、この間緊急的に対応してきた一連の施策について、恒常化を前提とし、合理的なかたちに作り直していくための検討を始めていただきたく思っております。

 

 次に、当面想定される厳しい財政状況への対応についてです。

 既に令和4年度予算編成に関する基本方針が示されておりますが、新型コロナウイルス感染症の経済への影響は長期化していくことが想定されています。事業のスクラップ・アンド・ビルドや経費の削減といった表現は盛り込まれていますが、令和3年度の同方針にあった「ゼロベースで精査」といった強い危機感は後退しているように感じています。将来世代に過大な負担を残さず、持続可能な区政運営となるよう、従来以上に長期最適の視点を持って、令和4年度予算編成を含め、当面の区政運営に当たっていただきたく思います。

 

 なお、当区の住民基本台帳人口は、平成31年4月1日現在で57万1,512人、令和2年4月1日現在で57万6,093人と増加を続けてきたところから、令和3年4月1日現在では57万3,375人ということで、2,718人、0.5%の減となりました。新型コロナウイルスの影響による外国人人口の減、また進学に伴って上京する学生等の減などが主たる要因とされていますが、10月6日の日本経済新聞には首都圏でドーナツ化現象が観察されるという指摘が掲載されており、中央線の下り方面の自治体などで転入増が見受けられます。新型コロナウイルス感染症を契機としたテレワークの活用推進などによって、都心部への居住の必然性が下がっていることの影響を示唆するものとなっており、このことによる影響は中期的に注視していく必要があると指摘するものです。

 

最後に、新たな総合計画等の策定に関してです。

我が会派は決算審査にあたり、これまでも総合計画の目標別の施策指標達成状況を重視してきました。議会が区民から負託されている機能のうち、執行機関を監視し、区民福祉が計画に沿って着実に向上しているかを明確に判断し、区民にそのことを伝える役割を果たす上で、定量的な判断は必須のものであると考えています。このことは、令和4年度以降の新たな計画になっても、変わることはありません。質疑の中で「数値の達成に心をとらわれてそれのみに専念するのではなく、PDCAサイクルが回っていることを点検しながら前に進める」という答弁がありました。施策指標の目標達成状況に関する質疑を通じ、区の所管部門自らが、現総合計画における施策指標の一部について、事業目的の達成度合いを測る指標として違和感を持っているように感じています。新総合計画においては、施策を推進する側にとっても納得感のある施策指標が設定されるよう、重ねて要望するものです。

 

 その他、個々の施策に関しては、決算特別委員会における我が会派からの意見、要望や、別途9月24日にお渡しした会派予算要望に十分留意いただくよう求めておきます。

 

 以上、決算審査を締めくくるに当たり、意見を申し述べてまいりました。

 結びに当たりまして、本委員会の審査及び資料作成に誠意を持って御協力いただきました区長はじめ理事者、職員の皆様、また、円滑な委員会運営に努められた正副委員長に感謝を申し上げ、自民・無所属・維新クラブを代表しての意見の開陳といたします。