議員の育児休暇について
自民党の小泉進次郎衆議院議員が、年明けに予定される妻の出産に際して、
育児のための休暇取得を検討していることがニュースになっています。
小泉進次郎氏、育休取得を検討 「アイデア聞きたい」 - 日本経済新聞
自民党の小泉進次郎厚生労働部会長は31日、年明けに予定される妻の出産後に育児のための休暇取得を検討していると明らかにした。神奈川県横須賀市で記者団に「率直に考え…
・主な賛成意見
小泉進次郎よ、日本の未来のために君は育児休暇を取らないといけない(永江一石氏)
https://blogos.com/article/396535/
・主な反対意見
Twitter(ワタセユウヤ氏)
https://twitter.com/yuyawatase/status/1168115927352668160
私自身の基本的なスタンスは、永江一石氏の文章に書かれていることとほぼ完全に一致しています。
その立場からすると、男性のビジネスマンには何としても育児休暇を取得してほしいと思っていて、
小泉進次郎氏という有名人が育休を取ることで、誰もが育休を取りやすい環境に向けた機運醸成が
できるかもしれないこの機会、まさに千載一遇ではあります。
そうはいっても、会社員に認められている育児休暇制度を、国会議員にそのまま当てはめるのは難しいだろうと思います。
念のためですが、進次郎氏自身は、「育休」を取るとは一言も言っていなくて、「何がいい形なのか」とあくまで
「育休的なもの」を模索するという言い方をしています。
私自身、5月から区議会議員として活動していますが、12月に子どもが生まれ、月末に会社を退職。
1月から政治活動を開始する傍ら、育児をしていました。朝晩は必ず駅に立つけれど、日中は活動する日もあれば育児をしている日もあり、
悪天候の日などは妻に休んでもらってワンオペでお世話をする日もありました。
これが選挙前の暮らし方で、議員になってからはというと、
議会がある日は必ず出席しなくてはいけないけれど、毎日ではないし、朝もゆっくり、終わる時間も早い。
育児の100%を妻と分かち合う、ということはできなくても、負担を半々に近づけることは、議員活動とは両立可能である、というのが私の体感です。
以上より、議員としての仕事部分について、会社員向けの育児休業制度を使わないと議員たる男性は
育児に参加できない!というのは違うと思います。区議会議員と国会議員の違いは様々あるにしても、
登院に時間がかかる国会議員には議員宿舎があり、夫婦で子育てするために議員宿舎を活用し子どもと向き合う時間を極大化するのであれば、有効な使い方だと思います。
政治家が育児に向き合うために障害になっているのは、議会活動ではなく政治活動だと思います。
選挙前の朝晩の駅立ち・・・などとは別に、それこそ一年365日、昼夜を問わず支援者や困りごとを抱えた人たちと
会って話をし続ける、この政治活動をまじめにやり抜こうとすると、育児をする時間がなくなっていきます。
これも私の体験からくるものです。育児期においては、議会活動のすき間をびっちり朝から晩まで埋めるような
政治活動はすべきではない、これが先月大喧嘩をした私の、現時点での結論です。
そこまで徹底的に活動しなくてはいけないのか、次の選挙で絶対に勝てないのかというと、決してそんなことはなく、
一期生特有の焦りだったんだと思います。むしろ子育てから得たもので、政治家としての新たな魅力を身に着けるためにも、育児に集中するべきだと今は思っています。
進次郎氏はどうか。私と違い選挙は圧倒的に強く、政治活動をサボる余裕はあるように見えます。
そもそも地盤があるから政治活動をしなくてよい、ということだけでなく、国会議員には公費で雇用できる
秘書が3名おり、この3名が普段以上に力を合わせて議員の政治活動を補えば必要十分ではないでしょうか。
議会活動と政治活動に二分して論を進めていますが、実際には「議会活動を精度高く行うためのインプット」
にも多くの時間が掛かります。秘書がいない区議会議員であれば、夜寝ないで、早起きして自ら行うしかありませんが、
政策秘書がいる国会議員だと、資料の読み込みから意思決定のサポートまで政策秘書が行ってくれるのか、そこは国会議員も自分で行うものなのか。
これについては私に肌感覚がなく、今後の研究課題として、保留としたいと思います。
結論としては、国会議員(の男性)は育児を行うべきであるが、育児休暇制度等を使う必要はなく、
議会活動に専念した上でそれ以外の時間を育児に振り向ける。政治活動や党務は秘書が補う。
ということになるかと思います。が、冒頭に記載した通り、小泉進次郎氏という知名度のある政治家に、
育休的なものを取ってもらい、機運を醸成することを目的にした場合、どのような座組がいいのか。
・休暇ではなく「育児中議員」のような身分を新設する。歳費は生後半年間67%、以降50%。
(民間は給与なしで育児休業給付金の給付を受ける。それと同水準)
・国会については基本的に出席。議決権は保有し、行使することが望まれる
・党務からは完全に解放されること、また復帰後の不利益取り扱いを禁止することなどは民間企業同様
・議員に対する歳費カット分と同等水準で、政治活動に専念する4人目の秘書の雇用を認める
というあたりを想定しましたが、もう少し「育児中議員」のメリットをつけないと、
わざわざ「育児中議員」にはならないかもしれません。この辺りは本格的に取り組むのであれば、
制度設計の専門家にも入っていただく必要があるでしょう。
なお、この議論の中で「議員として24時間365日働けない時期に差し掛かっているのであれば、一度辞めて出直せ」
というような論旨の意見を見ることがありました。私も去年まで、そうだそうだ!と思っていましたが、
議員になって理解できたこととして、これは絶対に議員はやりません。
別の人が自分の選挙区で現職として振る舞う機会を自ら献上する、子育てをするにはそれしかない、ということであれば、
男性議員の育児参加は力強く遠のいていくでしょう。
話が脱線しましたが、あまねく男性に育児参加をしてもらいたい、地域の広告塔たる国会議員も、
中でも国民的人気を誇る小泉進次郎氏に育児参加をしてもらうため、
●議員としての活動はこれまで通りに行う
●政治活動は秘書に委ね、本人は行わない。それによって創出された時間を全て子育てに充てる
●上記によって生まれた時間で育児を自分事として行いたいと宣言し、妻の承認を得る
という行動決定を、自律的に行うまたは制度として担保する、ということを提案したいと思います。
ここまでやれば、国会議員も会社員の「育児休業」を追体験できるのかといえば、残念ながらギャップは残っていて、
社会から隔絶されたという恐怖感や、職場にポジションがないのでは、仕事ができなくなっているのでは、
という育児休業取得者が苛まれる危機感は、国会議員として子育てをしても同じ目線には立てないと思います。
それでも、国会議員男性の育児休業が一般化し、国家公務員の育児休暇制度利用が促進され・・・
というパラダイムシフトが起きることを願う気持ちに変わりはありません。
小泉進次郎氏の判断を、今後も注視していきたいと思います。