10月18日 決算特別委員会の意見開陳(全文)

10月18日、8日間にわたる決算特別委員会での審議を経た上で、所属会派を代表して令和3年度杉並区一般会計歳入歳出決算他3議案に対する賛成の意見の開陳を行いました。

以下に意見開陳の全文を掲載します。

自民・無所属・維新クラブを代表して、令和3年度杉並区各会計歳入歳出決算に対する意見を申し述べます。

 

当該決算年度を振り返りますと、令和3年度のGDP政府経済見通しは、実質成長率で4.0%程度、名目成長率で4.4%程度と見込むなど、年度中には経済の水準がコロナ前の水準に回帰することを見込んだものでした。結果として実質成長率は2.2%、名目成長率は1.2%と当初見通しを大幅に下回りました。

国民生活においては、新型コロナウイルスワクチン接種が本格開始され、また東京2020オリンピック・パラリンピックも開催されました。桃井第一小学校の卒業生である渡辺勇大選手がバドミントン混合ダブルスで銅メダルを獲得されるなど、区としても朗報に触れることがありましたが、やはり年間を通して振り返れば、夏の第5波、年明けの第6波など、新型コロナウイルス感染症の感染拡大と闘い続けた一年でありました。第5波では、区内の自営業店舗で自主隔離療養をされていた方がお亡くなりになる事案も発生しました。お亡くなりになられた方のご冥福を改めてお祈りすると同時に、区の行政執行においても、次々と困難が襲い掛かってくる、苦難の多い一年であったと認識しているところです。

 

このように、希望と困難が交錯する環境の中、杉並区は、平成23年度に策定した基本構想の終期である令和3年度の予算を「困難を乗り越え、新たな時代に繋ぐ予算」と名付けました。この予算では「財政健全化と持続可能な財政運営を確保するためのルール」に基づき、財政の健全性を意識した予算編成、また総合計画の最終的な目標達成に向け、必要な経費を盛り込んだとされております。私ども会派ではこの予算について、施策面については評価した一方、財政面について、事業の見直しに十分切り込んだものとはいえず、財政への危機感が感じられないことを理由に予算に反対していました。

 

また、令和3年度も新型コロナウイルス感染症の影響は大きく、度重なる緊急事態宣言等の中で、区民生活への影響を最小限に抑えるために、過去最多となる16回、総額563億円にのぼる一般会計補正予算を編成しました。こうした1年を通した全体像を踏まえた上で、以下、令和3年度杉並区各会計歳入歳出決算について見てまいります。

 

初めに、一般会計について申し述べます。

まず、財政運営について。

令和2年度は過去最大の2,712億92百万円余に財政規模が拡大しましたが、令和3年度は対前年7.2%の減、2,518億31百万円余となりました。

区自らが定めた財政健全化と持続可能な財政運営を確保するための5つのルールについて、全て満たしていることを確認いたしました。質疑の中ではルール3について、財政計画を上回る建設債の発行について確認をしました。計画策定後の用地取得等、行政需要に応じた迅速な対応を一律に否定するものではありませんが、ルールに記載されている通り必要性を十分に検討することについては、「基本的な考え方」に改めた令和4年度以降も徹底すること、また毎年の計画改定にあたり、計画経費の修正を行う際は計画に反映することを求めるものです。ルール4の行政コスト対税収等比率について、前年度から3.3ポイント低下し令和元年度並みになっていますが、経常費用の中でも社会保障給付が70億円余増となっている点を会派から指摘しています。扶助費の増に関する区の答弁では、適切な行政サービスの執行を行う一方で、事業の見直しの視点が重要であることに言及がありました。今後もこの指標の推移については注視してまいります。

基金と区債の残高について、積立基金現在高は、計画最終年度の当該年度に114億円余積み増し、742億円余となったことについて、評価しています。年度末の区債残高は1億円余減の356億円余となりました。質疑の中で触れた通り、区債の、標準財政規模から見た残高割合や、区民一人あたりの残高は23区では中位、一方で区民一人あたりの基金が23区で最も少ない点については引き続きの課題と考えており、将来世代に過大な負担を残さない財政運営については、今後とも意を用いていただくよう要望するものです。

一方で、平成30年度までルールの筆頭項目であった経常収支比率は、前年度からは減じているものの、23区平均を4.2ポイント上回る82.8%でした。このことに対する区の答弁では、他区との比較について直接の言及はなく、経常的な行政サービスの削減が難しいといった懸念が示されました。財政構造の硬直化を当局も感じているのであれば、経常収支比率を改善している他区から、学ぶべきを学んでいただきたいと考えます。総合計画の期間を通して振り返ると、23区平均は着実に改善しており、杉並区で80%超が常態化してしまっていることとは対照的です。行政コスト対税収等比率など、様々な指標を複眼的に見ることは重要でありますが、杉並区が特異な推移を辿っている経常収支比率から目を背けるための複眼だということであれば、看過できるものではありません。我が会派では財政構造の弾力性を判断する指標として、他自治体との比較も含めこの指標の推移を今後も注視してまいりますので、財政当局としても目をそらすことなく、指標の改善に取り組んでいただきたいと思います。

その他、収入未済が引き続き着実に減少していることに加え、不納欠損も4年ぶりに減少していることは一定評価しています。引き続き、税行政の公平性について区民の信頼を得られるよう、適切な対応を求めておきます。

財政に関して、受益者負担比率についても取り上げました。受益者負担比率の適正値について、特段の定めはないという答弁でしたが、私たちは適切な受益者負担は必要と考えますし、区も同様の考えであることを確認いたしました。「コモンズの悲劇」を区自らが招くことのないよう、適切な受益者負担について区として見解を定めるべきと考えます。この点について、今後質問する際に、区の明確な立場が示されることを要望するものです。

 

これらのことから、財政運営についてはおおむね適切であると判断しております。引き続き、将来世代に過重な負担を残すことのないよう、財務指標を適切に活用し、持続可能な財政運営となるよう工夫を続けていただきたい旨申し添えておきます。

 

次に、適切に事業の執行がなされたかという点について、事業の執行状況を見てまいります。

初めに、総合計画の施策目標達成状況について。

総合計画における施策指標のうち、令和3年度、つまり計画の最終時点の目標値を達成した指標の割合は31.8%となりました。コロナ禍が達成状況に影響したと思われる施策指標は21あり、区からは2事業について具体的に言及がありましたが、仮に21指標全て達成していたとしても、その達成率は56%にとどまります。また、総合計画期間の10年間を通じて、一度も目標達成できなかった指標は85項目中26項目にのぼることを確認しました。

 

計画期間の最終段階でコロナの影響を受け、施策指標の目標達成に困難があったことは当然認識しています。また目標達成に向けて、職員の皆さんの努力が足りなかったと考えているわけでもありません。しかしながら、施策指標として設定していない区民福祉の向上に尽力したとか、目標を達成していないけれども職員は頑張った、と大団円となってしまうようでは、計画行政そのもののあり方が崩れてしまいます。質疑を通じ、区からは、「ロジックを作って区民の皆さんにお示しすることが区の説明責任、あるいは行政計画の信頼性・有効性につながっていく、という視点は大切」という答弁がありました。計画を策定し、必要な予算を措置し、事業を誠心誠意遂行し、決算時に限らず随時施策の進捗を振り返るというPDCAの各サイクルを確立する、ということが「ロジックを作る」ということであれば、まさにそれが重要なことであり、決算審査を通じ、それができていなかったことが明らかになりました。

改善に向けた取組が進んできた、という文脈の中で、目標に対し達成率が「9割を超えているものが半数以上、また8割を超えているものが70%以上」という答弁がありました。8割を超えていても9割を超えていても、それは未達です。こういった答弁が出ること自体、目標達成への執着心が欠如していることを如実に表しています。区には目標に取り組むということを一から考え直していただきたいと思っています。代表監査委員からは、「未達であったということ自体は事実。率直に受け止めなくては次の段階、今の総合計画に進むことができない」という答弁がありました。現計画の施策指標の目標達成に挑戦する上で、前計画の最終年度である当該年度の施策指標目標の達成に向けた取組に、最後まで執念を持って取り組むことができたのか、設定した目標に納得感がなく真剣に取り組めないということがなかったか、真摯に振り返られることを切に要望するものです。

なお、予算の執行状況について、執行率は93.1%と前年から3.1ポイントの減でありました。新型コロナウイルス感染症の影響等、やむを得ない事情によるものであると判断しております。

 

次に、行財政改革について、簡潔に触れておきます。

当該年度の行財政改革推進計画に基づく財政効果額は72億円余、前年実績に対し約7億円、また当初予算編成時の財政効果見込み額と比較しても、基金等の積立を除き約4億円の増となりました。区有財産の有効活用や税・保険料・利用料等の収納率の向上等、質疑を通じて確認した個別の取組については、一定の評価をしたいと思います。行財政改革推進本部の名称は当該年度で終了し、今年度からは区政経営改革推進本部としての取組となりますが、区政経営改革の中心に行財政改革を据え、職員数の適正化に意を用い、予算編成時に見込んだ財政効果額を実現できなかった事業については、さらなる工夫を求めるものです。その上で、業務改革部会の中で行政評価制度の見直しに着手していることについて、PDCAサイクルの要になる新たな行政評価制度が見出されることを期待します。新型コロナウイルス感染症の影響が続いていることを考えれば、財政状況の展望について楽観視することはできず、行財政改革の必要性は一層増してまいります。令和3年度の取組にもその兆しが見えていましたが、新たな情報技術をさらに積極的に活用する等、前向きに取り組んでいただきたいと思います。

 

ここで、令和3年度における主な区政の課題について見てまいります。

1点目、新型コロナウイルス感染症対策についてです。

令和3年度に16号に及ぶ、総額563億円余の補正予算を編成し、適切な執行に努めてきたことについては、補正予算とその執行率に対する質疑を通じて確認しました。なかでも、令和2年度に引き続き、専決処分を行わず、議会の議決を経て各施策を実行したことについては評価しています。PDCAサイクルに対し、OODAループという概念が広がりを見せています。見る、方向付ける、決める、動くの頭文字を取ったものですが、当該年度の区の補正予算編成についてはOODAに沿った適切な危機対応として評価するものです。

2点目に、デジタル化への対応です。我が会派から、質疑を通じて、今後一層のIT活用を図る上での具体的な指摘や提案をさせていただきましたが、保育課における保育園AIマッチングなどの成功事例を基に、少しずつデジタル技術の活用が広がりを見せていることが確認できました。杉並区デジタル化推進基本方針及び杉並区デジタル化推進計画に沿った、着実な取組を推進することを期待します。その上で、区民から区への電子申請だけでなく、庁内のデジタル化を推進し業務の効率化を一層図ること、デジタルデバイド対策に留意しつつも、先駆的な取組に対する積極性を失わず挑戦を続けていくことについて、要望しておきます。

 

以上、認定第1号令和3年度杉並区一般会計歳入歳出決算を、適切に財政運営がなされたか、及び目標達成に向け適切に事業の執行がなされたかという点を中心に見てまいりました。財政面では妥当な運営がなされたと捉えている一方で、総合計画における施策指標の目標達成状況を不十分と考え、不認定といたします。

認定第2号から第4号、国民健康保険事業会計ほか各特別会計歳入歳出決算については、国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療の3つの特別会計への、一般会計からの繰入金が合わせて163億円余に上ることや、国保と後期高齢者で不納欠損額が増えていること等、留意すべき点もありますが、区民生活の安定の観点から致し方ない面があること、また収納率が横ばいないし上昇していること、一般会計からの繰入額や収入未済額が減少していることを認め、全て認定をいたします。

 

ここで、今後の区政運営について、数点要望を申し添えます。

まず、新型コロナウイルス感染症対策についてです。

現下の感染状況は小康状態を見せておりますが、年末に想定される、いわゆる第八波に向けた対応、その中でも懸念されているインフルエンザとの同時流行に備え、地域の医療機関との連携を適切に行うことを要望いたします。またワクチン接種体制についても、長期戦を余儀なくされていることから、接種状況や接種率等を総合的に勘案し、適切な形に見直していくことを、改めて要望させていただくものです。

 

次に、今後の財政状況への対応についてです。

既に令和5年度予算編成に関する基本方針が示されておりますが、新型コロナウイルス感染症への対応や経済への影響の長期化、物価高や資源高といった事情への対応、また岸本区長の選挙公約の実現が図られる予算となるとすれば、歳出増の圧力が例年よりも強い状況にあるのではないかと推測しているところです。将来世代に過大な負担を残さず、持続可能な区政運営となるよう、従来以上に長期最適の視点を持って、令和5年度予算編成を含め、当面の区政運営に当たっていただきたく思います。

 

最後に、施策指標の設定についてです。

我が会派は決算審査の各審査区分で、総合計画の施策指標達成への取組を確認しました。その中でも指摘していますが、定性目標の100%など、いわゆるゼロイチ目標を掲げることによって、行政努力に対する相応の評価ができない状況が続いています。一方で繰り返しになりますが、税財源を使っての事業執行である以上、目標に到達していなくともその頑張りに拍手、というわけにはまいりません。理想を追うことを否定はしませんが、美しい理念目標の設定にとらわれずに、実績値を踏まえた冷静な目標設定を行い、目標を達成したら目標値を上方修正、それを繰り返しゼロイチ目標に到達するという取組み方について、強く要望するものです。情報公開No.1の杉並区では、総合計画の目標別の施策指標達成状況についても区民に一層可視化されることになります。計画に沿った区民福祉の増進を、多くの区民の賛同を得ながら進めていけるよう、目標設定のあり方について、再考を求めるものです。

 

その他、個々の施策に関しては、決算特別委員会における我が会派からの意見、要望や、別途お渡しした会派予算要望に十分留意いただくよう求めておきます。

 

以上、決算審査を締めくくるに当たり、意見を申し述べてまいりました。

結びに当たりまして、本委員会の審査及び資料作成に誠意を持って御協力いただきました理事者、職員の皆様、また、円滑な委員会運営に努められた正副委員長に感謝を申し上げ、自民・無所属・維新クラブを代表しての意見の開陳といたします。