不登校特例校「高尾山学園」視察(東京若手議員の会市部研修)
東京若手議員の会では今期(2022年9月~2023年8月)、市部エリア担当の副代表をしています。
市部エリア主催の研修として、11月2日に不登校特例校である八王子市立高尾山学園の視察を行いました。不登校特例校については、2021年6月1日の一般質問で岐阜市草潤中学校を取り上げたことがあり、個人的に注目している取組です。
次の一般質問で取り上げることを念頭に、興味深く視察をさせていただきました。
杉並区の不登校担当管理職からも、魅力的な方だと事前に聞いていましたが、高尾山学園の黒沢校長先生は民間公募で校長職に就かれ、現時点では東京で最後のお一人になった方です。自ら学校の説明と、校内の見学を行ってくださいました。
当時の八王子市長が、不登校児童・生徒の割合が多い状況に問題意識を感じ、教育委員会に新校開設準備担当を設置したのが2002年4月、2004年4月に高尾山学園が開校しています。黒沢校長が着任されたのは2013年4月で、この10年間の取組を伺うことができました。
不登校特例校は「学習指導要領等の基準を弾力化した教育課程の編成や指導方法」が認められている学校のことで、学習指導要領に縛られず、一人ひとりに対応した学習内容・方法を用いて子どもに寄り添う工夫をしている、端的に言えば時数を軽減し複数単元を組み合わせたオリジナルの授業を実施しています。
東京都では八王子市の他調布市、福生市、大田区、世田谷区が公立で設置し、他に私立が2校あります。大田区は分教室型で開校しましたが、2030年に改めて学校型の不登校特例校設置を目指しています。
高尾山学園に通う児童・生徒は、原籍校で様々な傷つき体験や教師への不信を募らせ、対人不安・学力不安・将来不安を抱えています。それに対し、高尾山学園では、学校で生きづらい課題に対して社会性・学力を身に着けさせ、生活環境や家庭内環境の課題には福祉的支援を提供し、本人の抱える課題に対する医療的支援も行っています。この「社会性・学力/福祉的支援/医療的支援がセットで用意できないと、不登校児童・生徒を支えきれない」という点は非常に印象的でした。その上でわかった・できた・褒められた、そしてもっとも重要な「協力し合えた」経験を通じて、自己肯定感を醸成していく、ということでした。
その結果として、ほとんどの児童・生徒が元気になり、登校率は74%。信頼できる友人・大人を獲得し学習に取り組む姿が見られるようになり、進学率は95%超。自分に自信がつくことで進学先の高校や大学ではリーダーの役割を務める子も出ている、ということです。
登校したくなるような様々な投稿刺激を盛り込み、授業中に授業を聞かない権利も児童・生徒が持っています。授業を受けずに過ごすことのできる居場所として用意されているプレイルームも見学させてもらいましたが、「本当は授業受けてほしいけど受け皿を一応作る」というものでは全くなく、本当に安心できる場所として、またその中でも知的好奇心を満たす場所になるように、工夫も投資もされていることが印象的でした。
学校予算でマンガやおもちゃを買いまくってるのはうち(高尾山学園)くらい、という名言もありました。笑
高尾山学園のKSFは、このような時程上の工夫に加え、少人数の児童・生徒(視察時点で99名、年末120名程度の想定)に対し専門職、サポートスタッフ含め60名の大人が対応している体制面と、高尾山学園入学の前に適応指導教室を経て転入させている点の3つが挙げられていました。このどれもが、不登校特例校に特有の打ち手ではなく、地域の公立学校でも取り組める要素を含んでいます。要素を含んでいることと、実現することとの間の隔たりは非常に大きいのですが、特に多くの大人がかかわっていくことの重要性を、校内見学を通じて強く感じました。
今回の視察で得た知見を基に、次回一般質問であらためて不登校特例校について取り上げる予定です。
また今回の視察では、定員を上回る多くの参加希望を、東京以外のエリアからもいただき、多くの議員の参加をお断りすることとなりました。申し訳ございません。
ご要望を受けて第二弾も実施に向けて計画を進めています。視察終了後、参加いただけなかった議員も含め、高尾山ビアマウントで懇親会も行いました。