ふるさと納税について

昨秋の区民生活委員会に、「ふるさと納税の状況について」という報告がありました。
杉並区の寄附金税額控除額は41億円!学校を一つ改築するのにかかる費用と同等が、杉並区の目線で見れば流出してしまっている状況です。

https://www.city.suginami.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/071/524/kumin040921_4.pdf

1月18日に全国若手議員の会の研修があり、講師を務めた議員から「ふるさと納税の納税額を4年間で70倍にした!」という取組の発表がありました。

「すごい!」というリアクションもある一方で、東京の議員中心にシラーっとした空気が流れたようにも感じました。都市部からすれば自分の自治体の財源を収奪する憎い制度である一方、地方部の立場で捉えると自助努力で増やすことができる貴重な制度がふるさと納税。

私から、「ふるさと納税の『ふるさとへの恩返し』という理念については理解できるが、〇〇市がふるさととはいえない方が、エビやカニを目当てに〇〇市にふるさと納税をするから4年間で70倍まで伸ばせるのであって、これは不健全ではないかと思うがご当地の議員としての見解は」と質問しました。1期目の議員が初対面の先輩議員にするには、なかなか度胸のある質問です。

講師からは、「ふるさと納税をしてくれているのは、みんな〇〇市をふるさととする人だと思っています(キリッ)」という答弁がありました。政治的な確信に基づいた使命感による施策推進なんだなと(犯という言葉はあたりません)。

 

改めて総務省のふるさと納税ポータルサイトを確認したところ、「ふるさと」に特別な意味を付加しているとは読み取れず(当然)、デジタル大辞泉の一つ目の定義である「自分の生まれ育った土地」=ふるさとと捉えるのが妥当でしょう。

ふるさと納税制度を導入して、地方の自治体における地方交付税交付金への依存度を下げ、自治体経営に自助努力を導入する、というところまでは私も賛成です。気になるのは、

・「ふるさと」でない自治体にも無制限で「ふるさと納税」ができること

・「ふるさとの名産品」といえるか難しいものまで返礼品に含んでいること

の2点です。後者については近年メスが入り、改善が進んでいるとは認識していますが、〇〇市内の事業者が販売している、全国どこでも買えて市内に工場などはない製品はまだ対象になっています。

 

私自身のふるさと納税履歴を振り返ると、規模が今の1/80だった2012年度から、2016年度まで行っていたようです。公職への転身を意識して2017年度からやめましたが、民間で働いていたら間違いなく続けていますし、地方議員でも目いっぱいふるさと納税している人もいます。

私がふるさとと呼びうる自治体は埼玉県さいたま市、住んでいたのは短期ですが豊島区、江東区にも居住歴があります。それらの自治体には寄附せず、全国から肉・魚・果物を「買って」いました。今のふるさと納税が無茶苦茶になっている、「ふるさと」納税ではなく高額納税者オンラインショッピングにしてしまっている原因はこの部分、寄附先が「ふるさと」であることを要件としていないからだと思います。

私も4年間政治の世界にいるので、寄附要件に居住歴などを入れないように働きかけたり、地場の業者の売上を最大化するために「地域の特産品」を無限にしたりという運用ルールにくちばしを挟んだのが、どこの党のどのあたり選出の国会議員なのか、どんな理屈をこねたのかは容易に想像がつきます。

杉並区議会議員としてではなく、日本維新の会所属議員として、ふるさと納税に居住履歴要件を求めていきたいと考えます。事務手続き負担を課題に挙げられるかもしれませんが、マイナンバーで一瞬で判定できます。節を曲げて14年続いてしまったふるさと納税制度を、『ふるさとへの恩返し』の制度に立て直した上で、自治体の自助による経営努力が自治体経営にインパクトするような、自治制度そのもののアップデートにつなげていく時期が来ているのではないかと思います。

 

ちなみに、私個人の考えとしては、ふるさと納税制度が適正化され、ふるさとに対する納税に切り戻された結果、杉並区の41億円流出がたとえば11億円流出に抑えられた場合に、この30億円を何に使うか。将来世代のために、というのは当然なのですが、特に禁煙・受動喫煙防止対策を大幅に拡充できると考えています。

「歩きタバコの防止に向けた監視カメラの活用や、公衆喫煙場所の整備や密閉型喫煙所への転換を進め、区内の公園を禁煙とするなど、受動喫煙の防止を推進します」と政策にも書いていますが、受動喫煙防止対策を進めることに反対する論法の一つに「貴重な財源であるたばこ税が減る懸念」があります。杉並区の令和3年度決算における特別区たばこ税収は29億7,322万円。たばこ税を減らす/失う覚悟を決めて、抜本的な受動喫煙防止対策が断行できます。