学校給食費の無償化について(政策の詳細)
2022年9月15日の一般質問で既に表明している通り、私は学校給食費の無償化を目指して取り組んでいます。またこの政策は、私個人だけでなく、日本維新の会として、また東京維新の会の地域マニフェストでも重点的な公約事項として掲げているものです。
この学校給食費の無償化、岸本区長の選挙公約にも掲げられていたり、かねてから共産党さんも主張されていたりする経緯があり、私の主張は政治的に「えっ」「エセ保守?」という受け止められ方も一部でしていたようですので、この政策の目的を詳細に記しておきたいと思います。(そもそも「保守なのか」「保守とは何か」という論点もあるのでしょうが、本稿では日本の国益と日本人の利益を優先する面では保守であり、守旧=保守であれば改革派なので保守ではない、という程度の説明に留めておきます)
私は、給食費の無償化は、学齢期の子育て世帯に対する家計負担軽減のための施策として実施するべきであり、その必要性は新型コロナウイルス感染症と第一義的に関連するものではなく、あくまで恒久的な措置として行うべきものと考えています。国立社会保障・人口問題研究所が昨年実施し、昨日結果を公表した第16回出生動向基本調査、夫婦調査内、夫婦が理想の数の子供を持たない理由として最も多いのが、子育てや教育にお金がかかり過ぎるからという理由です。この調査結果から、給食費無償化が時限的な施策ではなく、これから生まれてくる子供についても給食費が無償化されていることがある程度担保された場合には、出生意欲に対してポジティブな影響を与え、少子化の改善にもつながり得ることが考えられます。(2022年9月15日 杉並区議会本会議における一般質問)
上記発言で取り上げている第16回出生動向基本調査、結果報告書のリンクはこちらです。紹介しているのは以下の部分です。
私の少子化関連の政策に関する立法事実は、その多くがこの調査結果を踏まえたものです。
子育てや教育にお金がかかりすぎることが20年来の最大の課題であり、晩婚化の進行がもたらす課題が少しずつ大きくなってきている、という内容と理解しています。
また、その解決策については、経済財政諮問会議の諮問機関である有識者会議「選択する未来2.0」を参照することが多いです。
引用したのは最近も話題になった、京都大学の柴田悠准教授がまとめている箇所ですが、子育てや教育にお金がかかりすぎることと同時に、夫の家事育児時間の長さと第二子以降の出生に相関関係があることを明示し、労働時間の縮減等を提示されています。
これらの事実を基礎として、給食費無償化という政策を導き出しています(EBPM: 証拠に基づく政策立案:政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすること)。
給食費無償化は、少子化対策。子育てや教育にかかるお金の「見通し」を変える
給食費を無償化すべきという提案は、従来は憲法26条を根拠として議会から主張され、学校給食法第11条第2項を根拠として行政から否定されてきました。SDGsの目標1「貧困をなくす」に絡めた提案や、学校給食の栄養の重要性などをその根拠として提案は、これまで行政に受け入れられてきませんでした。
2022年度の国民負担率が47.5%に達し、令和の五公五民ともいわれる状況の中、今の子育て世帯の家計負担の軽減という観点も重要なのですが、同時に重視したいのが未来の子育て世帯の家計負担軽減です。私の発言で恒久化にこだわっているのは、今の子育て世帯の生活を支援して生活を向上させるだけでなく、そういった先輩たちの姿を見て、「何とか子育てやっていけそうだな」と未来の子育て世帯に思ってもらう、将来の見通しを変えることで、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから理想の子ども数を持たない」を「子育てや教育、お金かかるけど、理想の子ども数を目指していけるね」というマインドに変えていきたいからです。
逆にいえば、杉並区の29,000人の児童・生徒の給食費を無償化するために必要な、年間16億円におよぶ予算を捻出するための立法事実としては、今の子育て世帯の家計負担の軽減だけでは十分ではないでしょう。私もそう思います。杉並区が令和5年度予算案に給食費無償化を盛り込めなかったのは、区長自身が学校給食費無償化の立法事実について近視眼であり、逆にいえば政策効果を十分に理解されていなかったからだと私は考えています。岸本区長誕生から5ヶ月後に品川区長に就任された、品川区の森澤区長は、就任直後の予算案に給食費無償化を盛り込んでいます。また、世田谷区が打ち出した「令和5年度限定での給食費無償化」では、将来の見通しを変えることはできず、政策効果を押し下げてしまっている=政策の費用対効果を低減させてしまっています。区長選挙のタイミングなので、これでは選挙目当てのバラマキの誹りは免れないでしょう。
過去の提案根拠にあった、学校給食の栄養の重要性についてですが、給食費を払えない/払わない/払いたくない世帯の児童・生徒が、対価を払わないので給食を食べられない、という状況は、私の知る限りではありません。そういう世帯が存在しても、学校は児童・生徒に給食を提供しています。学校の給食費会計の中でやり繰りしたり、場合によっては校長先生が自分のポケットマネーで穴埋めして、児童・生徒は給食から栄養を得ています。もちろん、給食費会計の中でやり繰りするというのは、給食費を払っている世帯が払っていない世帯の分を支払っていることに他ならず、先生が穴埋めしているなど、いいはずもありません。これは学校徴収金の私費会計の問題でもあり、給食費の無償化に伴って公会計化することで解決できる課題です。
学校給食費無償化が発生させてしまう不公平感のうち、「区の施策として区立学校の給食費を無償化しても、国立・私立に通っている子どもとその世帯に恩恵が行き渡らないことが課題」と指摘されてきましたが、これも将来の見通しを変えるという政策目的で説明がつきます。理想の子どもの数を目指すかどうか、というタイミングで将来不安を持つ世帯は多いと思います。この時に、「お金がかかりすぎる」ではなく「かかるけど目指していこう」と思ってもらうための給食費無償化です。
将来を不安に思っていたけれど、世帯の努力などによって懸念していたよりも裕福な生活ができ、国立・私立への進学を子どもが望み、世帯としてそれを叶えてあげられる、ということは杉並区ではよくあることであり、良いことだと思います。その時に「給食費の支払いがあるから私立より公立に行かせたい」といわれるには、私立と公立の教育の差は(おしなべていえば)大きいのが現実で、これは課題であり変えていかなくてはなりませんが、いずれにせよ希望する子どもの数を目指すためのリスクを予防的に取り除くことが、教育費無償化の政策目的です。
「給食費だけ無償化になれば、理想の子どもの数を目指すマインドになるのか」という指摘は的を射ています。
これは日本維新の会の究極目標である「教育無償化」を構成する施策の柱の一つに過ぎません。教育無償化を目指すプロセスの第一歩として、そして自治体が行財政改革を通じた自助努力で捻出可能な予算で実現可能な政策として、「給食費無償化」を目指しています。
「少子化対策なのであれば、杉並区ではなく国が責任をもって行うべき」という指摘もその通りです。
日本維新の会は国を通じて教育無償化や給食費の無償化を政府に訴えています。しかし、国が責任をもって行わないから杉並区として何もできない、という状況に甘んじ続けた結果、令和3年の杉並区の合計特殊出生率は0.96まで下がってしまいました。国に必要な対策を求め、杉並区としても必要な対策を進める。両輪で進めるのが私の責務だと思っています。