議案第37号杉並区立コミュニティふらっと条例の一部を改正する条例について

先ほど、令和5年度第2回定例会が終了しました。

インボイス制度の延期を求める陳情の採択と、その内容の意見書を提出については、私たちは反対したものの議会としては賛成多数で可決されました。

その他は私たちも賛成、議会も賛成多数で可決となりました。

 

議案第37号「杉並区立コミュニティふらっと条例の一部を改正する条例」について、賛成の討論を行いました。

動画

私の討論は33:27~44:01です。

原稿を転記することをもって、本件に対する意思表示としたいと思います。

 

議案第37号、杉並区立コミュニティふらっと条例の一部を改正する条例について、賛成の立場から討論を行います。

 

本議案は、岸本聡子杉並区長から提案されたものですが、区長提案の議案としては33年ぶりに委員会で否決されたことで区内外の耳目を集めました。33年前、平成2年第3回定例会の議案第49号特別区道の路線の認定及び廃止が否決された時は、建設委員会・本会議共に全会一致での原案否決だったこととは対照的に、本議案は区民生活委員会の採決で賛否が分かれました。そしてその6日後に開催された総務財政委員会では、本議案の予算上の裏付けとなる議案第44号令和5年度杉並区一般会計補正予算(第3号)が賛成多数で可決され、提案されている事業に対する判断が区民生活委員会と総務財政委員会で分かれたこととなります。

 

この間、区民生活委員会で出た主な論点と区の答弁等を概括すると、一つ目にゆうゆう館の機能が本天沼に移転することに関する諸問題がありました。占有面積の減や無料で利用できる枠数の制限が掛かる部分については、高齢者優先枠を設定した部屋に限らず、一体利用ができる集会室も活用できるよう柔軟に対応すること、また高齢者優先枠の月8枠はこれまでの運用実績から十分に対応できるとして設定されたものであり、こういった対応で過去のコミュニティふらっと移行で約9割の高齢者団体が継続利用できている、という答弁がありました。区立施設再編整備計画は区立施設を将来にわたって守っていくために、持続可能性を念頭に策定しているものであり、言ってみれば持続可能性を確保するために全世代が各々の既得権益を譲り合っていく取組であります。占有面積の減や利用枠の減を一切認めないという主張は結構ですが、これを全面的に認めては持続可能性を大きく毀損することとなり、到底承服できる話ではありません。また、天沼から本天沼に移転することで、利用者が日大二高通りを渡らなくてはならないので危険で不適切だという話もありましたが、本天沼在住の方はこれまで渡らなくてはならなかった日大二高通りを渡る必要がなくなり、そのことによって本天沼在住の新たな利用者の出現も期待できるところです。今回の移転を機に、二高通りの交通安全に資する取組を新たに検討する等、前向きな検討を期待します。

 

二つ目に、ゆうゆう館を現地建替えし、保育施設と合築すべきという主張がありました。現地の敷地面積は950㎡、容積率は100%であり、容積率をフル活用して確保できる面積が950㎡、ここからゆうゆう館占有部分を250㎡取って700㎡の保育園とし、現在の居室面積基準に照らすと、定員が最大43名の減となる、という答弁がありました。このことによって待機児童が発生するおそれがあるということでしたが、私自身毎年、保護者の保育施設の入所申込をお手伝いする中で、荻窪駅北側地域の定数逼迫状況は肌身に感じているところです。また、現園児の一部が今の保育園に通えなくなることとなりますが、転園を強いるということは日中を共に過ごす友達が総入れ替えされることであり、小さな子どもに行政の都合でこれを強いることは看過できません。

 

三つ目に、この間の説明会等で寄せられている、現況敷地の南西部に植えられている桜の木を切らないでほしいという要望については、樹木診断の結果、「著しい被害が見られる」という判定があったことが示されています。増築工事がなかったとして早晩伐採の可能性があること、また伐採への対応として新たな桜の木が植樹され、他の既存の樹木も可能な限り残すこととなっており、適切な対応と考えます。

 

そして、総務財政委員会の前日、6月11日に「区立施設の利用者の会」から全議員をCCに入れたメールが送信されました。その要望書によって、新たな論点が設定されました。児童発達相談係のウェルファームへの移転は予定通り進め、保育施設は旧若杉小を継続して使用せよ、年内に行われる旧若杉小躯体調査の結果を待って判断せよ、必要であれば旧若杉小敷地内に新築すればよい、というものです。

 

現在旧若杉小内で運営されている私立認可保育園は、暫定的に当該地で運営されている施設であり、消防設備を含む仕様は簡易なものとなっています。仮に提案通り、本格活用として、旧若杉小で長期間運営する場合、運営中に大規模修繕や消防設備更新が行われることとなりますが、保育を継続しながら大規模修繕等を実施することは現実的ではありません。また、校庭部分に保育園舎を新設することも、建設工事期間中の保育環境に重大な悪影響が及ぶだけでなく、旧若杉小は閉校から10年以上が経ち、地域の声を幅広く聞きながら本格活用を考えることとしている中、その活用に大きな制約を課すこととなります。

 

そもそも当該私立認可保育園は予定していた移転時期が既に一年遅れている施設であり、区から説明された当初の移転予定を信じて当該私立認可保育園への入所を決定した保護者と子どもに発生している不利益は小さなものではありません。旧若杉小は1967年竣工の建物であり、躯体調査をこれから行うものの、築50年以上となる老朽化した建物に安心・安全を感じられないのは当然のことと思います。6月10日の校庭調査では、釘等が569本発見されており、保護者や在園児、園運営にかかわる地域住民は不安を感じているものと思われます。

 

今、私立認可保育園の保護者、在園児について言及をしました。6月11日のメール添付の資料で新たに設定された論点は、区立施設の利用者の会の主張はふんだんに盛り込まれていますが、もう一方の当事者である私立認可保育園の関係者の主張は一切含まれておりません。そのため、当該保育園に子どもを通わせる複数の保護者の意見を尋ねました。

最初に「保護者としての」意見を求めたところ、議会の良識に期待する他ない、といった回答でしたが、保護者としてではなく地域の一住民としての意見を尋ねたところ、熱量の高い多岐にわたる声をいただきました。杉並区議会会議規則第104条「議員は、議会の秩序及び品位を重んじなければならない。」を遵守する立場から、いただいたお声を直接的に紹介することは控えますが、この提案に対して厳しい意見がありました。

 

私が心から残念に思っているのは、本議案審議にかかる顛末と、一方の当事者の意見だけが委員会で取り上げられたことによって、同じ地域の中に世代間の分断を生み出してしまったことです。先ほどご紹介した通り、地域の一員としては思ったことを言えるけれど、当該保育園に子どもを預ける保護者としては意見が言いにくい、という状況がありました。

日中子どもを保育園に預け、保護者がそれぞれ仕事に励み、限られた時間の中で成果を出し続け、その上で仕事をしていない時間のほぼ全てを育児に費やす保護者が、「区立施設の利用者の会」と同じように何度も区議会に足を運び議員に直談判するのは不可能です。だからこそ、自分たちの意思を代表する議員を選出し、議員を通じた間接民主制に公平・公正・中立な意思決定を要求するのが保護者の立場であります。

区長がこれまで以上に直接、区民の声を聴くことは結構なことですが、全ての区民の声に公平・公正に耳を傾けることが物理的に不可能である以上、声を聴こうとすればするほど、声を上げたい、上げやすい人たちとのエコーチェンバーに陥りかねず、今がまさにその状況であると考えます。そういった構造的な課題を克服するために区職員が最前線で区民の声を受け止め、また私たち区議会議員が幅広い区民の声を収集し、様々な意見を咀嚼して議決に臨んでいることを、改めてお認めいただく機会としていただければと思います。

 

議員各位に申し上げます。当該民間保育園に通う子ども達は、議員の子どもや孫ではないと思いますが、自分の子どもや孫に今回提案があったような生育環境を強いてでも、それでもゆうゆう館機能をゆうゆう館の形のまま守るのかどうか。杉並区の子ども達を自分の子どもや孫と同じようにいとおしい存在であると捉えた上で、議案に賛成されることをお願い申し上げます。

 

加えて、区民生活委員会で議案第37号に反対、総務財政委員会で議案第44号に賛成された2つの交渉会派の所属議員各位に申し上げます。交渉会派は議運への委員選出、代表質問、予決算に対する意見開陳などの権利や、その他個室の議員控室、専有の複合機など様々な権益を持っています。とりわけ、区立施設再編整備計画が平成26年に策定されて以来、関連の議案に賛成してきた会派は、これまでの主義主張を反転させたこととなり、会派とは、交渉会派とは何なのかと疑問に思っています。議会運営に責任を持たれている両交渉会派の議員が、先ほど述べたような委員会採決をされたのは、その両委員会の間にあった、6月11日のメールの要望書を読まれ、私と同じように違和感を抱く等の結果、総務財政委員会において会派として賛否を翻したもの、と敬意と善意をもって信じるものです。交渉会派の正統性を揺るがせにすることなく、また交渉会派のあり方について後世の検証に耐えうる、責任ある議決を求めます。

 

最後に重ねて議員各位へのご賛同をお願い申し上げ、以上をもちまして、議案第37号、杉並区立コミュニティふらっと条例の一部を改正する条例に対する賛成討論を終結いたします。