10月13日 決算特別委員会の意見開陳(全文)

10月13日、8日間にわたる決算特別委員会での審議を経た上で、杉並維新の会を代表して令和4年度杉並区一般会計歳入歳出決算他3議案に対する意見の開陳を行いました。

一般会計については不認定、3特別会計については認定としました。是々非々って難しいですね。引き続き精進していきます。

 

以下に意見開陳の全文を掲載します。

 

 杉並維新の会として、認定第1号令和4年度杉並区一般会計歳入歳出決算ほか、認定第2号から第4号までの各会計決算について意見を申し述べます。

 

まず、当該年度を概括的に振り返りますと、サッカーワールドカップで日本が強豪国のスペイン・ドイツを相次いで破りベスト16に進出、またヤクルトスワローズの村上宗隆選手が史上最年少での三冠王とシーズン日本人最多本塁打となる56号を記録するなど、主にスポーツ界から明るい話題がもたらされた一方、円安や物価高、資材・エネルギー高の進行によって生活実感が日々悪化、脱却への道しるべが年度後半にようやく出てきたものの新型コロナウイルス感染症との闘いは当該年度も続き、また昨年の決算審査でも多くの委員から願いが届けられた、ロシアによるウクライナ侵略も止むことはありませんでした。そして政治の世界では、安倍晋三元首相が選挙応援中に銃撃され逝去されるという、言葉にならない事件が起きてしまいました。改めてご冥福をお祈り申し上げます。

 

杉並区の政界にも激震が走った年度でした。4期目を目指す現職区長が187票差で敗れ、新人の岸本候補が区長に就任しました。率直に申し上げて、杉並・新時代に対する期待感よりもはるかに大きな不安を抱きながら、絞り出すように「岸本区政にあっても区政の前進を諦めない」と発信したことを覚えています。当該年度の予算には、当時の会派の一員として私も賛成しています。その理由として「新基本構想のスタート年であり、これに基づく計画事業の予算化は、誰が区長であっても新年度からスタートさせるべき」と表明していましたが、あにはからんや杉並区総合計画・実行計画等6事業が見直しとなり、区立施設再編整備はそれに先立ち「立ち止まる」など区政は混乱。2名いた副区長は7月、9月に相次いで辞任し、副区長職は今もなお欠員がある状況です。議会でも区長公約に対する批判的な質疑が相次ぎ、傍聴席からも議席からも不規則発言が増えるなど、杉並・新時代という響きもむなしい、なんとも後ろ暗い時代を迎えていると感じています。

 

そのような認識に基づき、各会計の歳入歳出決算を審査してまいりました。今回の決算審査にあたっては、主に3つの視点を持って臨みました。1つ目の視点として、計画初年度の施策指標は達成されたか。2つ目の視点として、財政運営が適切に行われていたか。3つ目の視点として、財源確保と予算措置、事業執行のそれぞれが精度高く実行されたか。

 

1つ目の視点については、区政経営報告書等を精読し、低調な結果であるものと認識しています。特に総合計画における計画初年度の目標値、計画策定時から見た近未来の施策指標達成をこれだけ逸していることについて、強い危惧を覚えるものです。この点については、一年前の当委員会において、当時の会派を代表して申し上げた意見を、もう一度正面から受け止め、今後施策指標を達成するための確かな取組を求めておきます。

 

2つ目の視点について、財政健全化と持続可能な財政運営を確保するための基本的な考え方に掲げる5項目を全て満たしており、「ルール」時代の筆頭項目であった経常収支比率も7年ぶりに80%を割り込むなど、区が掲げる基本的な考え方や各種の財務指標・諸表から見るに財政運営は概ね堅調に行われたと見ています。その一方で、税収増を要因とするコロナ前の水準になお程遠い財政規模の膨張や、その要因でもある特定財源の増、その結果一般会計歳入決算額に対する特別区税収入の割合が3割を切っている状況などを複眼的に見て感じる違和感に、「区民の生活実感とは乖離した好調な税収を背景に、歳入確保の取組の停滞や事業実施における不十分な経費精査などが発生しているのではないか」と仮説を立て、3つ目の視点である財源確保と事業執行率の精度に焦点を定め、各審査区分において質疑を行ってまいりました。

 

財源確保については、ふるさと納税による流失対策に立ちすくみ、制度の見直しや区民の理解促進という隘路を右往左往する状況や、不用意な規制が放置されていることによって公園占用料を逸失している場面などが確認できました。当該年度の財政効果額は87億円と評価できる水準であり、新たな歳入確保施策への果敢なチャレンジや、基金運用も少しずつウイングを広げ挑戦を行っているなど評価できる面もありますが、物価高・資源高・人件費高の社会情勢の中で義務教育における保護者負担軽減等に乗り出していく検討を中央進行管理事業として行っていた当該年度の取組としては、不十分なものであるとの結論に至りました。

 

執行率については、決算当該年度は92.9%と前年から0.2ポイント悪化し、不用額は約140億円となりました。不用額については、執行努力や契約差金などで発生するものと、事業実績減や事業未実施によって発生するものがあり、その要因について決算書類で十分に判断することができないことから、時間を割いて質疑を行いました。質疑を通じ、区の取組と執行率が必ずしも相関しない事業、適切な取組で成果を上げている事業もいくつか確認できたものの、申請を待っていたけれど来なかった、またこの執行率は例年同様である、といった事業も散見されました。全ての事業には政策目的とその必要性があるはずで、待っていたけれど申請が来なかった、という事業の総括を易々と受け入れるわけにはいきません。事業を必要としている人にアウトリーチするか、またはアウトリーチに行けないのであれば、待っていれば来る申請件数を精査した予算要求をするべきでした。令和6年度当初予算編成事務処理方針にも経費の精査・見直しに関する文言は複数踊っていますが、言葉倒れに終わらぬよう、財政課と予算要求側の各部門の双方がこのことに真剣に取り組むことを切に要望するものです。

 

以上、計画初年度の施策指標は達成されたか、財政運営が適切に行われていたか、財源確保と予算措置、事業執行が精度高く実行されたかの3つの視点から当該年度決算を確認してまいりました。財政運営は順当に行われていると認識しているものの、好調な外部環境への依存を深めており、経済環境の激変や不合理な税制変更等、VUCAの時代に訪れ得る一寸先の闇に耐え続けられる行政運営ではないと判断したことから、認定第1号令和4年度杉並区一般会計歳入歳出決算について、不認定といたします。

 

認定第2号から第4号までの各会計決算については、保険者とのコミュニケーションに課題があることを指摘しましたが、会計実績としては堅調に運営されていることを確認し、それぞれ認定いたします。

 

我が会派の決算審査の冒頭、区長に今回の決算の満足度について尋ねました。自信を持って示しているので100点満点です!とのことでしたが、誰が編成し誰が執行しても、100点満点の決算はないだろうと思っています。決算書の3ページに区長の記名で示されている通り、地方自治法第233条第3項で、地方公共団体の長は、監査委員の審査に付した決算を監査委員の意見を付けて次の通常予算を議する会議までに議会の認定に付さなければならない、とされています。この規定の精神は、決算を議会と振り返り、その議論の中から改善点や留意点を発見することで、次の通常予算をよりよいものへと磨き上げていく営為を求めることにあるのだろうと、私は解釈しています。自信をもって提出していただくのは結構なことですが、100点満点の決算はない、だからからこそ決算審査がある。そのことをお認めいただき、その上で決算審査にあたって我が会派からあった要望事項等について、次年度当初予算における最大限の配慮を求めるものです。

 

その上で一言申し上げます。本定例会の私の一般質問に対し、「平和と持続可能な社会を望むなら、今の社会をしっかりと見て、何に対しNOなのかをはっきりさせた上で何が良いと思うのか具体的なYESを持つべき」と区長から答弁をいただきました。決算審査を通じ、平和な社会と持続可能な杉並区政を望む立場から、今の区政をしっかりと見て、必要な改革を先送りし、庁内会議で貴重な時間と多額のコストを無駄遣いし、施策指標の未達を3年目となるコロナの影響に牽強付会し、自助努力を追究せず、特別区長会などの場で国に対する不平不満を述べてばかりの岸本区政に対しNOであることをはっきりさせた上で、時間軸を持って必要な改革を断行し、1円の税金も無駄にしない意識で財政効果を積み上げ、それら行財政改革を通じて生み出した財源を、子ども達を中心とした将来世代に投資することを通じて、機会平等な社会を作るという、具体的なYESをお伝えしてまいりました。真摯に受け止められ、改めて本来あるべき杉並・新時代の扉を開き、「前人(ぜんじん)木を植えて後人(こうじん)涼(りょう)を得(う)」る区政を重ねて求めておきます。

 

以上、決算審査を締めくくるに当たり、意見を申し述べてまいりました。

結びに当たりまして、本委員会の審査及び資料作成に誠意を持ってご協力いただきました理事者、職員の皆様、また、円滑な委員会運営に努められた正副委員長に感謝を申し上げ、杉並維新の会の意見といたします。