11月15日の一般質問について(質問全文、答弁要旨)

11月15日、令和5年第4回定例会の本会議で一般質問を行いました。

1.組織再編について

2.学校徴収金公会計化システムの導入について

3.家庭的養護について

(1)養育家庭

(2)養子縁組里親

4.『総集編 荻窪の記憶』について

5.荻窪の区立施設について

〈動画〉

以下に質問の全文を掲載します。

杉並維新の会の松本みつひろです。通告に従い、組織再編について、学校徴収金公会計化システムの導入について、家庭的養護について、『総集編 荻窪の記憶』について、荻窪の区立施設について質問します。

 

1.組織再編について

先の全員協議会で報告された6計画の改定について、現在パブリックコメントを受付しているところですが、計画の改定にあわせた最適な執行体制についても検討されているものと思います。議員の立場で僭越なことと思いつつ、計画事業の執行体制を最適化し、施策指標の目標を達成することを共に目指す立場から、組織再編について四点、提案をさせていただければと思います。

一つ目の視点として、みどり施策について。基本構想における「環境 みどり」は、「質の高い環境を将来につなぐ気候変動対策の推進」「快適で暮らしやすいまちと循環型社会の実現」「グリーンインフラを活用した都市環境の形成」の3施策から構成されています。「ゼロカーボンと気候正義の実現に貢献する自治体としてリーダーシップを取る環境都市を目指していく」岸本区政において、これらの施策はとりわけ重要視されているのだろうと推測しているところです。一方で、環境政策をリードする環境部は、4課長で構成されており、環境清掃費の令和5年度当初予算額は76億円余、予算構成比は3.6%と比較的小規模な組織です。昨年の第4回定例会の一般質問でも触れた部分ですが、令和6年度予算編成に関する基本方針においても、事業のスクラップ・アンド・ビルドの項に「課内での財源確保が困難な場合は、部内において調整すること」という記載があり、実行計画外の新規事業の予算確保の面などで、組織の規模が小さすぎることにはリスクがあることを指摘します。もっとも、実行計画の見直しを図った直後ですので、来年度は当然そのようなリスクはないものと認識していますが、組織のあり方は不断に見直されるべきテーマであり、部よりも大規模な課が存在する現状にガバナンス上の懸念を抱く余地もあることから、改善を提案するものです。1-1.環境・みどり施策を一層推進していく上で、現在都市整備部内に位置づけられているみどり公園課ならびにみどり施策担当課を環境部に移管することについて、見解を伺います

→みどり施策の多くが都市計画諸制度やまちづくり制度に基づき進める必要があるため、平成12年度に環境部から都市整備部に移管。現段階では考えていないが、社会環境の変化等を踏まえ、必要に応じて考える。

二つ目の視点として、障害者施策課の事務事業のうち、子どもに関わる分野について。10月3日付の都政新報「障害者の居場所~放デイの限界に挑む」という連載記事に、「放デイを含め、障害児支援は子育て支援の担当部署で担うべき。障害児は「小さな障害者」ではなく、個別の支援が必要なだけで、あくまで子どもとして対応すべきだ」という識者のコメントが掲載されていました。1-2.所管はこの記事を読んで、どのように感じたか、見解を伺います

障害者施策課の児童発達相談係では、療育につながる必要性のある未就学児の発達相談や発達段階の評価、通所施設の利用調整などを行っていますが、1-3.療育を受けている子どもは障害者なのか、区の見解を伺います。私の認識では、必ずしもそうではなく、発達に遅れが見られる子どもの発達を定型に近づけていくために、熱意をもった専門家によって早期療育が行われているものと理解しています。発達に遅れが見られる子どもの保護者が、保育施設などに勧められて気軽に児童発達相談に行くと、そこは障害者施策課であった。また障害を持っているのであれば早期に判定してもらい将来を考えたいと行動する保護者が、医療機関に通うもなかなか明確な診断が下されずやきもきしている、といった状況の中で相談する先が障害者施策課である、というユーザーエクスペリエンスは改善すべきと考えます。1-4.児童発達相談係は子ども家庭部内に移管すべきと考えますが、区の見解を伺います

→記事を読んで改めて組織横断的な連携の重要性を認識した。居場所づくりだけでなく、窓口対応の連携も検討を深める。療育を受けている未就学児には障害に対する支援が必要な子どももいる一方、発達に遅れがあっても成長段階であると捉えられる子もおり、全てが障害児ではないと認識。児童発達相談が障害者施策課にあるメリットもある。子ども家庭部をはじめ、関係部署との連携により保護者に寄り添った相談支援を行っており、移管は考えていない。

三つ目の視点として、今申し上げた子ども家庭部について。この「子ども」という表記について、いわゆる交ぜ書きであることから、二文字とも漢字の「子供」を用いるべきである、という主張が以前から提起されてきたところです。私の質問原稿は、これまで全て交ぜ書きで子どもと書いてきましたが、区議会の議事録は「子ども家庭部」と記載する時を除き、全議員・理事者の発言が漢字二文字の子供に統一されています。政府の対応として、2013年6月には文部科学省が、漢字二文字の「子供」で庁内文書を統一し、その後昨年9月にはこども家庭庁設置準備室が、こども基本法の基本理念を踏まえる形で全て平仮名の「こども」表記を各府省庁に推奨する、といった変遷をたどっています。1-5.こども基本法の基本理念から、平仮名表記の「こども」を求める国の考え方に対する区の見解を伺います

現在区では「(仮称)杉並区子どもの権利に関する条例」の制定に向け、子ども等からの意見を聴取しているところと認識しています。この条例の仮称は交ぜ書きとなっていますが、1-6.既に子どもの権利条例を制定している自治体が、「こども」をどのように表記しているか、状況を確認します1-7.「(仮称)杉並区子どもの権利に関する条例」の正式な条例名称は、審議会の答申によって決定するのか、現時点での想定を伺います

こども家庭庁の設置にあたり、名称を「こども庁」とする案が当初政府から与党に示されていました。令和2年に中野サンプラザで行われた子ども虐待防止策イベント、私も出席していましたが、その場で虐待サバイバーの方が自民党の国会議員に熱烈なアプローチを行い、後日自民党内議連で実体験から「家庭は地獄だった」と語り、「家庭がない、居場所がない子もいる。すべての子どもに目線を合わせるべき」という考えから、家庭が入らない「こども庁」を提案した、と聞いています。自治体の役割の中心は家庭を通じた子どもの支援だと私は考えるので、子ども政策をつかさどる部の名前に「家庭」が入ることに違和感はありませんが、1-8.家庭などの文字が入らない組織があることによって救われる子どもがいるのであれば、児童虐待や子どもの意見表明、権利擁護などの分野を所掌する課の単位などで「家庭」を使わず、平仮名の「こども」を用いることを前向きに検討すべきと思います。見解を伺います

→今後ひらがな表記が増えてくることが予想される。区は現在組織名や審議会等の名称に混ぜ書きを使っているが、今後状況を見極めながら適切に対応する。他自治体は64自治体が子どもの権利条例を制定し、ほとんどが混ぜ書き。都のこども基本条例はひらがな。区の条例名称は審議会の答申を受けた後に、区として決める。家庭を使わず「こども」と表記することは、区として議論を行う際の参考にする。

最後の四つ目の視点として、区政経営改革推進基本方針に定められた学校徴収金の公会計化について。学校給食費無償化にかかる課題の一つとして、専管組織を設置する必要性が答弁の中で度々言及されてきました。1-9.専管組織としての公会計設置準備室等を令和6年度に教育委員会内に設けるか否か、明確な答弁を求め、次の項に移ります。

→組織体制について人事当局と検討している。

 

2.学校徴収金公会計化システムの導入について

先ほど触れた、学校徴収金の公会計化については、令和8年度の検討・試行実施を見据えているとされています。つまり今年10月から開始された学校給食費無償化の政策が私費会計の状況で執行され、コンプライアンス上大きな懸念が残る状況が約3年続くということです。当該議案に賛成した責任から、またOODA(ウーダ)ループの実践として、公会計化の一日でも早い実施について提案してまいります。

まず、2-1.区政経営改革推進基本方針で、学校徴収金の公会計化を令和8年度検討・試行実施とした理由は、文部科学省の「学校給食費徴収・管理に関するガイドライン」(以下ガイドラインと呼びます)に「おおむね2年程度の準備期間を設定するのが標準的だと考えられます」と記載されていることを横引きしてのことか、見解を伺います2-2.9月26日に補正予算案が可決されてから本日までの2ヶ月弱の間、学校給食費無償化ならびに学校徴収金公会計化に向けて、どの部門がどのような取組を行ってきたか、確認します

→時期についてはガイドラインを踏まえ経営会議で決定したものだが、できるだけ早期の導入を目指す。補正予算案可決後、校長と覚書を締結、10月から無償化開始。食物アレルギー等による弁当持参の児童生徒への対応、9月までの清算の事務処理。公会計化システム導入に向けた情報収集。

議長、資料の提示よろしいでしょうか。ありがとうございます。こちらがガイドラインに示されている公会計化の移行準備項目です

開始2年前から取り組むべきとされている項目は、「体制の整備」「業務システムの導入」「徴収対応の検討」「未納等対応の検討」となっています。学校給食費に限定した話として、徴収対応や未納等対応については公費負担のため等閑視してよいものと考えれば、体制の整備と業務システムの導入が公会計化開始の課題となっています。体制の整備については、先ほど別の項で質問しましたので、以降業務システムの導入について伺ってまいります。

システムの導入にあたり、RFI(情報提供依頼)を行い、提供された情報に沿って機能や操作性の確認、徴収業務や徴収データの共有方法等に関する検討を行った上で要求を定義し、RFP(提案依頼書)を出し、システムの調達に進むことが一般的です。2-3.区ではシステム調達にあたり、必ずRFIとRFPそれぞれを出すこととしているか、RFIのみで調達する事例がないか、確認します。学校徴収金の公会計化は自治体にとって未知の領域に挑むプロジェクトではなく、既に多くの自治体で開始されているものであり、多くの2-4.メーカーがSaaSを含むパッケージングの学校徴収金公会計化システムを販売していることから、RFPを省略することで公会計化を早めることができるものと考えます。このことについて、区の見解を伺います。

また、2-5.学校給食費以外の学校徴収金も公会計化していくことが望ましいと考えていますが、それらも公費負担化することについて、検討状況を確認します。教育にかかる経済的負担の軽減が引き続き検討されていく場合に、公会計化システムに徴収機能を実装する必要性が薄れていくこと、そして何よりも私費会計による給食費無償化という状況を脱出することを最優先に、公会計化システム導入にあたってはまず会計機能の実装に着手し、徴収や債権管理、他システムとの連携については会計機能実装とは別進行で、保護者の負担軽減のあり方などと同期しながら着実に検討を進める、という進行とすることで、要件定義にかかる時間を大幅に削減できるものと考えます。2-6.公会計機能の実装を最優先した可及的速やかなシステム導入について、区の見解を伺います

→RFIのみ実施の事例はある。パッケージでカスタマイズが不要であれば実施時期を早めることは可能。学校徴収金の項目ごとに性質や内容を精査し、公会計化の対象を決め、公費負担について検討する。システム導入はそれらに加え区の他システムどの連携を図りながら進める必要があると認識。

最後に、学校徴収金公会計化システム導入に向けた庁内体制について伺います。区では庁内の共通システムなどを除き、2-7.原則として所管課がシステム導入に向けた検討の一切を行い、求めに応じて情報システム課や教育委員会庶務課が協力するという流れになっているものと承知していますが、今回のシステム導入も同じ体制で行う予定か、確認します。学校給食費無償化を含む補正予算の審議の中で、副区長から「区と教育委員会が一丸となって対応し、事故があった場合には厳正に対応する」といった答弁がありましたが、公会計システム導入は今後取り組む諸課題のセンターピンと考えます。2-8.システム導入に向けて、情報システム課・学務課・教委庶務課が総力を結集するプロジェクトチームを結成することを求めます。区の見解を伺います。その上で2-9.令和6年度当初予算案にシステム導入費用を計上し、令和6年度内に導入することを目指していただきたいと思います。このことについて答弁を求め、次の項に移ります。

→システム導入・更新にあたっては現在でも所管課及び関連部署が情報システム担当と連携しながら進めている。来年度中の本格導入は難しいと考えるが、できるだけ早期に導入。

 

3.家庭的養護について

(1)養育家庭

第3回定例会の保健福祉委員会では、杉並区立児童相談所の基本設計の概要が報告されました。一時保護所の定員は最大16名ということで、先行して児相設置した自治体の一時保護所と比較すると、年少人口に対して少ない設定となっています。3-1-1.定員設定にあたり、どのように必要数を算出したのか、確認します

→都児相の一時保護児童数を基礎に、対応件数の増加率、一人ひとりに配慮できる環境の確保や児童養護施設、里親等の地域資源の活用などの視点から検討。

このような設定の基礎に、区内に2つの乳児院と5つの児童養護施設があり、そのような地域資源と連携できる杉並区ならではの強みがあると承知しています。地域資源との連携によって杉並らしい、そして先駆的な家庭的養護の環境を構築していくことを期待しています。そういった中、埼玉県議会の令和4年度決算審査で「県内の児童養護施設の一部が施設管理者の判断により、男子寮・女子寮の区分を撤廃」「性の多様性の取組の一環として進められている施策で、「男女共用寮にはデメリットもあるがメリットもある」などの答弁があった、という情報がXを起点として拡散しました。誤情報だったことが報道され安心しましたが、この一連を他山の石とする必要性も感じているところです。不安定な精神状態にある児童を、性暴力の被害者にも加害者にも傍観者にもしない観点から、3-1-2.区の一時保護所や区と連携する施設は、生物学的性に従ったスペースを必ず区分するべきと考えます。見解を求めます。その上で、3-1-3.トランスジェンダーや性自認に揺らぎのある児童を、一時保護所や連携施設でどのように養護していく考えか、見解を伺います

→区の一時保護所は食事や学習の場所は区分せず、居室やお風呂などの生活の場は男女で区分する。それとは別の区画に生活の場となる個室を設け、様々な児童に配慮する。区内の児童養護施設も場面ごとに性別による区分がされ、児童の個性や入所に至った事情などを踏まえた個別配慮について、施設側と意見交換していく。

家庭的養護を推進していく上で重要な存在である、里親の確保に意を用いていくことが今後一層重要となります。10月1日の広報すぎなみに「養育家庭になりませんか」という記事と共に、養育家庭体験発表会の案内が掲載されました。3-1-4.11月11日に開催された養育家庭体験発表会について、内容や集客状況を確認します3-1-5.当日参加できなかった方にも見ていただけるよう、申請があった者に対して限定公開のYouTubeリンクを送るなど、ICT技術を活用した養育家庭体験発表の聴講を提案しますが、見解を伺います。また、3-1-6.設置運営計画(第2次更新)策定に際し、児童相談所設置市事務のうち、里親に関する事務を子ども家庭支援担当課から児童相談所設置準備課に移管した意図を伺います

→41名参加。里親登録の基準や子どもを預かった後の児童福祉士の支援、費用などの制度説明、実際に里親として子どもを養育している方からの発表など。ICTを活用した聴講は、里親制度普及の手立ての一つと考え、区児相設置に向けた準備の中で検討。里親支援センターの設置など里親支援が児童相談所の役割であることから、里親に関する事務を移管した。

10月3日の日本経済新聞には、「増えぬ里親、認知度低く 未就学児の委託30%どまり」という記事が掲載されました。八王子市が総合スーパーの一角で里親制度について解説するイベントを開いたことが紹介されていますが、3-1-7.里親を増やす取組として、このように身近な場所でパネル展示などのイベントを行うことについて、見解を伺います。また里親委託率が43.6%と全国平均を上回る3-1-8.新潟県の取組として、学校や市役所の職員が退職する際に里親にリクルートする取組を実施したということです。その狙いについて、担当者は子育てに手がかからなくなる時期であることや、仕事を通じて子どもとの関わりに精通した職員も多いことなどを挙げています。これらは杉並区にも共通していえることであり、効果が見込めると考えますが、この手法について区の見解を伺います3-1-9.それらも踏まえ、里親を確保するための区の今後の取組と決意を伺います

→八王子市や新潟県の取組は里親制度の普及や確保において参考にすべき事例。区の実情や子どもの支援に関わる団体等を把握している区の強みを生かし、積極的な里親制度の普及啓発やリクルート活動を行うことで、これまで以上に里親の確保を図り、家庭と同様の環境で養育できる環境整備を推進する。

 

(2)養子縁組里親

一時的な保護委託である里親制度ではなく、法律的に親子関係になる養子縁組について伺います。令和3年第3回定例会の一般質問で、里親認定基準を区独自に設定することを提案し、研究する旨答弁がありました。3-2-1.里親認定基準の区独自設定について、現時点での検討状況をまず伺います

養子縁組里親に関する都の基準は、受託動機(1)を養育家庭と同じく「児童の最善の福祉を目的とするものであること」としています。このことによって、実子のいない世帯が子育てをしてみたいという動機による受託や、実子が男児だけなので女児の子育てをしてみたいという動機による受託は、実務上行われていないという実態があることを一般質問で指摘しました。3-2-2.このような都の実務上の運用は、児童の最善の福祉を実現するためには欠くべからざるものと考えるか、区の見解を伺います3-2-3.区の独自基準設定にあたっては、そういった動機も受け止めた上で、基本要件や家族および構成員の状況などと総合的に判断すべきと考えます。区の見解を伺います

→区独自の認定基準は、他の自治体と大きな違いがある場合、里親の転居によって里親登録の継続ができない可能性などの課題がある。都の運用については承知していない(※まだ引継ぎを受けていないため)が、指摘の通り基本要件や家族及び構成員の状況などを総合的に判断することが重要という認識のもと、認定基準の検討を進める。

私がこのことに強い関心を寄せる理由に、不妊治療に取り組んだ先の生き方があります。都は先ほど述べた通り、実子のいない夫婦を養子縁組里親として認定しませんが、民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律に基づき、許可を受けた斡旋事業者による養子縁組が行われています。都内で4団体が活動しており、思いがけない妊娠や子育ての悩みを持つ当事者と、特別養子縁組によって養親になることを考えている当事者それぞれに関わりながら、健全な養育環境を維持するサポートを行っています。3-2-4.斡旋事業者による特別養子縁組とその後の家庭の状況把握について、都児相や区はどのように関与しているか、そして区児相はどのように関与していくか、確認します

→特別養子縁組をする場合は半年程度の試験養育期間が設けられており、この時に同居児童の届出を出すので、それを受け都児相が家庭の状況把握等を行い、区は子育て支援サービスの情報提供などを行っている。特別養子縁組成立後も都児相は最低半年間援助を継続する。区児相も基本的な関与は同様と考えているが、区が開設するメリットを活かし、必要に応じて民間斡旋事業者と子ども家庭支援センターをつなぐなど、より適切な支援を実現する。

行政による特別養子縁組から弾かれた、不妊治療のその先を生きる夫婦は、こういった斡旋事業者を頼り、養子を迎え入れるため、数百万円の費用を捻出し、厳しい研修を受けた上で、待機家庭として委託の連絡を待っています。3-2-5.経済的にも、知識も情熱も豊かなこういった世帯の、養育家庭としての適性について、区の見解を伺います。斡旋事業者の多くは、子どもとの年齢差を定めており、受託時に夫婦の年上の者と45歳差以内としているケースが多いようです。「児童の最善の利益」の観点から一定の理解はできますが、不妊治療の保険適用が43歳までとなっていることなどから、43歳まで治療を継続するケースが少なくないため、不妊治療を断念してから斡旋事業者にアクセスする時間の猶予がほとんどない、また夫婦の年齢差によっては全くありません。3-2-6.区が実施する妊活当事者向けの講座の中で、特別養子縁組という「選択肢」を伝えることについて、見解を伺い、次の項に移ります。

→子どもの最善の利益を実現するために、基本要件や家族及び構成員の状況などを総合的に判断することが重要。区の妊活当事者向け講座の参加者に早い段階で治療以外の選択肢も知ってもらうことが必要と考えているが、伝える上での慎重な配慮も必要。制度周知については治療経験者や専門家の意見も踏まえ検討する。

 

4.『総集版 荻窪の記憶』について

今年4月に発行された、『総集版 荻窪の記憶』という冊子があります。荻窪地域区民センター協議会が2017年から開催してきた「荻窪の記憶」という全5回にわたるパネル展示を土台としたもので、荻窪駅周辺を中心とした杉並区の近代化の歴史を考証する上で非常に価値の高い冊子であると認識しています。

7月8日には、発刊記念シンポジウムと地域懇談会が開催され、私も参加させていただきました。明るい雰囲気で行われたこの懇談会では、『総集版 荻窪の記憶』という地域の財産をどのように守り継いでいくか、という観点での議論も活発になされました。参加者の多くがシニア世代で、その皆様からデジタル技術を活用した保存・活用について様々な意見やアイデアが出ていました。冊子の形では製作にも保存にもコストがかかるので、デジタル技術を活用して末永く多くの方にご覧いただけるようにしたい、という地域懇談会参加者の皆様の思いに共感しています。

杉並区では令和2年にスギナミ・ウェブ・ミュージアムを開設しました。開設以降の展示等の活用状況について、まず確認します。4-1.スギナミ・ウェブ・ミュージアムの閲覧状況と、利用促進施策として区が実施していることについて伺います。11月1日時点で、常設展4つ、区民展2つ、企画展1つが実施されています。区民展のページを見ると、区民展示の募集がされていますが、写真イラストなどの平面はもちろん、立体成形物は撮影した写真や動画を展示できると記載があります。4-2.『総集版 荻窪の記憶』もアートのひとつとして捉えるべきものと考えますが、このようなテキストと写真を組み合わせた表現についても、スギナミ・ウェブ・ミュージアムに掲載が可能か、見解を伺います

→技術的には可能だが、記録編纂集は芸術作品とは異なると認識。スギナミ・ウェブ・ミュージアムへの掲載は難しい。

また、『総集版 荻窪の記憶』は荻窪地域区民センター協議会が主体となって制作されたものですが、この作品のウェブミュージアム上における表現の多様化、またさらなる表現力の向上には区として関与すべきと考えます。具体的には4-3.情報保障の観点もあわせ朗読音声を作成・掲載する、UX向上のためにEPUB化するなどの協力が考えられますが、こういった対応を行うことについて、区の見解を伺います

→必要性は認識しているが、対応はそれぞれの作成団体が実施するもの。

芸術作品をいかに収蔵するかは、建物を持つ美術館・博物館においても、ウェブ上の仮想ミュージアムにおいても、同等に重要なことであると考えます。そういった意味では、スギナミ・ウェブ・ミュージアム内で区民展示を募集するにとどまらず、杉並のまちなかにある文化・芸術を積極的に蒐集することが求められます。作品量の物理的制約から解放されている4-4.スギナミ・ウェブ・ミュージアムに、芸術作品掲載を積極的に行うことについて、区の見解を伺います

 

5.荻窪の地域施設について

最後に、前回の一般質問でも取り上げた、荻窪地域区民センター大規模改修工事中の対応について、再度伺います。数年前にあんさんぶる荻窪の集会室を失った荻窪南口の住民に、約2年間さらなる不便を強いることを認識しつつ、他の区民センターの休館中も他の施設を利用してもらっているので代替施設は設けない、という答弁がありました。昨年の第4回定例会の都市環境委員会で審査された4陳情第17号「荻窪の防災・人に優しいまちづくりに関する陳情」に関する質疑の中では、陳情者から集会施設の不足感が指摘されており、委員の私も同様に感じていることを申し上げました。それを受けて5-1.当時の地域施設担当課長が「荻窪地域の代替施設としてほかに利用できる施設がないか、今後検討してまいりたいと思います」と答弁していますが、代替施設の検討は答弁通り行われたのか、確認します。いずれにせよ、荻窪地域の代替施設の必要性を区として一時は認識していたにもかかわらず、その後代替施設を設けない、他地域の施設に行けばよい、と変節していることは指摘しておきます。

陳情者や私以外の皆さんが、荻窪の集会施設に不足感を感じているか否かを念のために確認する目的で、LINEを通じて2,000名の杉並区民にアンケートを行いました。区民センターを利用していない方の6割が、駅近くに施設が設置された場合は今後利用意向があると回答し、30代の女性から「駅から遠く駐車場もない区民センターは子連れでは行けないと感じる」50代の女性から「公共施設が少ない、古い」70代の男性から「地域支援センターをたくさん作るべき」といった声が寄せられました。5-2.区民との対話を重視する岸本区政を牽引する区長は、この結果をどのように受け止められたか、その上で荻窪地域区民センター大規模改修中の代替施設は不要と考えるのか、答弁を求めます。

→荻窪会議室や他の地域区民センターの他にも利用できる施設がないか検討し、ゆうゆう荻窪東館を講座等の事業実施や夜間の代替利用の際に案内する。新たな代替施設を設ける考えはないが、荻窪地域の施設配置のあり方はグリーンスローモビリティによる駅からのアクセス向上も含めて検討する。

一昨年の冬に、南荻窪三丁目にある杉並視覚障害者会館を視察しました。運営しているNPO法人杉並区視覚障害者福祉協会の代表とお話しした中で、荻窪駅から徒歩12分、坂道を上り下りし、環八を渡る立地を視覚障害者会館として使う不便さを伺いました。荻窪地域区民センターの大規模改修中の代替施設としての活用にとどまらず、保育室荻窪第四跡地に杉並視覚障害者会館を暫定移転してはいかがでしょうか。駅直結の立地のため、視覚障害者が交通事故に遭う危険性がなくなることや、立地の良さから三療施術がより多くの区民に活用されることなど、様々なメリットがあるものと思われます。5-3.三療施術について、現状の実施状況とそこから見える課題をどのように認識しているか確認し5-4.この提案について区の見解を伺います

→利用率が20〜30%程度と低位、施術者が高齢化に伴い減少している。視覚障害者会館の交通アクセスは良いとはいえず、施設の改修等について検討を今後行う。提案のあった場所は使用にあたって年間1800万円程度の賃借料が必要となる。

杉並視覚障害者会館の立地は、視覚障害者が利用するには不便でも、西側にたんぽぽ公園が隣接していることもあり、住宅用地としては高く評価される敷地と考えられるため、売却した際の行財政効果額が相応に見込めます。また、公園の拡張用地と捉えると、拡張後の公園は三方角地の約790平方メートルとなり、現在は遊具のない公園ですが、遊具の設置も検討でき、既設のすくすく広場とあわせて地域の子どもに愛される公園になると思います。さらには、既存の建物を改修し保育園として活用することも視野に入るかと思います。4丁目まで約7,500世帯、6歳までの子どもが800人以上いる南荻窪には、保育園が3つしかありません。荻窪・西荻窪の駅周辺の保育施設を利用している南荻窪の方にとって、魅力的な選択肢になるのではないでしょうか。

保育室荻窪第四跡地を適切に活用することができれば、保育施設や公園の配置最適化、行財政効果の創出、また区立施設マネジメント計画(第1期)で今後の方向性が明確に示されていない視覚障害者会館を含めた施設再編整備の一層の推進など、様々な観点で行財政改革を前に進めることができます。5-5.保育室荻窪第四の原状復帰以降も跡地を継続契約し、集会施設等として暫定利用しながら、視覚障害者会館機能の再編や跡地活用について前倒しで検討することについて区の見解を伺い、質問を終わります。

→保育室荻窪第四跡地を集会施設として暫定活用、視覚障害者会館機能の再編として活用することには課題がある。関係所管に跡地活用の意向を確認したが特段の希望がなく、所有者に現場復帰後退去する旨伝えている。