6月3日の一般質問について(質問全文、答弁要旨)

6月3日、令和6年第2回定例会で一般質問を行いました。

1.住民情報系システム標準化の見直しについて

2.行政評価制度について

3.学童クラブについて
(1)認証学童クラブ
(2)学校長期休業中の昼食提供

4.5歳児健康診査について

5.水辺の事故予防について

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以下に質問の全文と答弁の要旨を掲載します。

維新・無所属議員団の松本みつひろです。通告に従い、住民情報系システム標準化の見直しについて、行政評価制度について、学童クラブについて、5歳児健康診査について、水辺の事故予防について質問します。

  • 住民情報系システム標準化の見直しについて

住民情報系システム標準化の取組については、先の予算特別委員会でも取り上げました。標準化されたシステムが提供されるという当初の目論見から外れ、自治体それぞれがベンダーと新たなシステム構築を行わなくてはならない戸惑いを代弁したところです。1-1.「区としては令和7年度までに標準化システムへ移行できるよう鋭意取り組んでいる」ということでしたが、これまで移行困難と示してきたシステム以外について、令和7年度中の標準化移行を現時点でも目指しているのか、まず確認します

令和6年度ガバメントクラウド早期移行団体検証事業の第一回公募採択結果が3月29日に公表され、都内でも11区10市1村が採択されていますが、杉並区は採択されていませんでした。1-2.同検証事業に応募はしたのか、していないのであればその理由を伺います

標準化されたシステムを構築する「土地」ともいえるガバメントクラウドについて、クラウドサービスの提供事業者は政府が選定することとなっていますが、選定された事業者は当初外資系4社のみとなっており、昨年11月に国内事業者が条件付きで選定されましたが、品質やコスト、機能において外資系と比較して水を開けられていると言わざるを得ない状況と認識しています。1-3.区が標準化システムの構築において利用する予定のクラウド提供事業者はどこか、確認します1-4.住民の個人情報を含む重要な情報を外国企業が運営するクラウドに保管することの安全保障上の問題について、区として選定する上で議論が尽くされている必要があると思いますが、この点どのような議論を経て選定に至ったか、またマルチクラウド化の必要性についてはどういった議論があったか、検討の経緯を伺います

→令和7年度中の移行を目指している。ガバメントクラウドは令和6年8月から利用開始。AmazonとOracleのマルチクラウド。

 

PaaS(Platform as a Service)を含むクラウドサーバーの活用について、基本的には私は前向きな立場ですが、今般の円安水準を見るに、為替変動によるPaaS利用コストの変動はリスクと捉えざるを得ないものと認識しています。1-5.国はガバメントクラウドを使った標準化で運用経費の3割削減を目指すという方針を示していますが、区における運用経費の見込みはどうか1-6.また方針を示した当時と比較して円安が進行していますが、為替変動の影響をどのように見込んでいるのか、伺います

→運用経費は現行の2倍近く。円安の進行に伴い利用料の上昇が見込まれる。(松本注:地方自治体によるガバメントクラウドの活用について(案)が公表されたのは令和3年2月ですが、令和3年2月1日は1ドル104.69円、質問をした令和6年6月3日は1ドル157.18円と約1.5倍になっている)

 

住民系情報システム標準化の目的の一つに挙げられている、ベンダーロックインは本当に解消できるのかについて。自治体情報システム標準化では、機能要件等の使用の標準化とガバメントクラウドの活用によってベンダーロックインを回避し、複数事業者による競争環境を確保することが重要なポイントの一つに挙げられていますが、一方で必要最低限の自治体単位でのカスタマイズは可能とされています。1-7.区では情報システム標準化に伴い、カスタマイズを事業者に求めているか、確認します1-8.カスタマイズしていない、またはそのカスタマイズが必要最低限にとどまっており参入障壁になっていない、ということであれば、ベンダーロックインが回避されることになりますが、その際システム運用・保守について令和8年度当初からの受託者を一般競争入札に付すべきと考えます。区の見解を伺います

杉並区はかつて、住基ネット(住民基本台帳ネットワークシステム)に稼働開始時点で参加せず、東京地裁判決においてこの判断が違法であると認定され、最高裁まで争うも上告棄却となり判決が確定し、稼働開始から約6年半後に接続するという経験をしてまいりました。この時は稼働約1年前に、当時の区長が記者会見で「住基ネットへは参加せざるを得ない」という認識を示しており、その後稼働一ヶ月半前に議会答弁で、個人情報保護法が未成立での住基ネット稼働は違法の疑いがあると指摘する、といった変遷を辿っています。1-9.住民情報系システムの標準化対応は自治体の義務規定、ガバクラの利用については努力規定とされていますが、対応しないことによる違法の虞があるか、区の見解を求めます

→カスタマイズは行わないが、令和8年1月に標準化したばかりなので、すぐに入札で受託事業者を選び直すのは困難。ガバメントクラウドの利用は努力義務なので利用しないことが法違反になるとは認識していない。

 

ここまで住民情報系システム標準化の取組について、懐疑的な視点から縷々指摘をしてまいりました。私はあくまでも、SaaSアプリケーションのような標準化されたモダンなシステムが政府から提供されるべきであったと今も考えていますが、自治体単位で構築せざるを得ないとしても、そのシステムが標準化され、かつモダンであることは重要なことと考えています。1-10.この文脈における「モダン」を区はどのように解釈しているか見解を求め1-11.システムがモダンであることの必要性について、答弁を求めます1-12.モダンなシステム構築は標準化対象外のシステムも含め、着実に進めていく必要があると考えますが、このことについて区の見解を伺います

住民情報系システムの標準化を、モダンなシステムにシフトしていくこととそれをクラウド上にリフトしていくという2つのプロセスに分けた場合、前者については不満もありつつ一定の有用性を認める一方、後者については先ほど指摘した様々な課題にある程度の折り合いがつくまで当面見合わせるべきではないかと考えています。モダンで仕様が標準化されたシステムについては、新住民系情報システムの稼働開始にあたって整備したデータセンター上で活用してはと思いますが、1-13.モダンで仕様が標準化されたシステムを構築し、ガバメントクラウド上にリフトしない場合、システム構築費用を国費に求めることは可能か、見解を伺います

→モダン化は最新技術などを利用して最適化を図ること。標準化移行では安全性と確実性を最優先にしている。ガバクラ以外のクラウドにシステムを構築してもシステム構築費用は補助金の対象になるが、標準化の趣旨や、ガバクラで稼動することを前提にシステムを構築しているので、ガバクラを使う。

 

この項の最後に、1-14.自治体が個別に標準化されたシステムを構築することの不経済などについて国に表明し、国においてSaaSアプリケーションのような標準化されるシステムを提供するなど、あるべき姿に切り戻しをすべきという主張を杉並区として行うべきではなかったか、区長に答弁を求めます

→指摘の通り、課題が様々あることは承知している。財政支援の拡充や移行目標時期の柔軟な設定について、これまでも意見表明してきた。今後も必要に応じて要望を伝える。

 

作家で参議院議員の猪瀬直樹氏が著した『昭和16年夏の敗戦』には、官民から集められた36人の有望な青年によるシンクタンクが「日本必敗」の結論を出していたにも関わらず、開戦やむなしという「空気」によって日本が戦争へと突き進み、そのことに懊悩する若きエリートの心情が描かれています。「空気」に押されることなく、区にとっての最善を追究する最大限の努力を求め、次の項に移ります。

 

  • 行政評価制度について

先の予算特別委員会で、財政効果見込額について質疑しました。その中で自治権の拡充への対応たる職員人件費の増によって財政効果見込額が目減りし、財政効果創出の取組が評価されにくい構造になっていることを指摘したものです。またそれに先立って行った代表質問では、新規事業の創出における品川区との比較についても議論しました。杉並区と品川区はいずれも、全予算事務事業に対して事務事業評価を行っている自治体です。令和5年度杉並区行政評価報告書の3ページ目には行政評価の体系図が掲載されており、区の行政評価では施策と事務事業それぞれを評価する一方、明示的に政策評価をしていないことを表しています。品川区行政評価基本方針では、政策と事務事業を評価しており、施策については評価対象外としているようです。2-1.杉並区が政策評価を行わない理由について確認し2-2.品川区の取組と行政評価の結果を踏まえ、今後区として政策評価を行うことについて、見解を伺います

杉並区では行政評価を当初予算の査定資料として活用していますが、代表質問でも指摘した通り、その成果は要求時と提案時の歳出規模の差を見るだけでは明確にならないものとなっています。品川区は予算査定における減額分を行政評価の成果として公表し、これを財源として時機に適った新規政策を複数予算案に盛り込みました。具体的には「全665事業の事務事業評価を実施 一般会計予算の1% 20億円の財源を捻出」「事務事業評価の果実である財源を区民のしあわせへと振り向ける」とし、事務事業評価で捻出した20億円を主な財源としてウェルビーイング予算を編成、と表現していました。2-3.区民の新しいニーズに応え続けていくために、予算査定における減額分を明示し新規政策に振り向けるという手法について、杉並区としても検討してはと考えますが、区の見解を伺います

いたずらに数字を大きく見せるべきという主張をしているつもりはありませんが、財政効果を創出するための区職員お一人お一人の努力が、他の要素と相殺されることなく、定量的に可視化され評価されることは重要であると考えています。これは令和元年の第4回定例会の一般質問で紹介したSMARTの法則におけるMeasurable、Relevantの指標とも軌を一にするものです。行政評価の評価結果や財政効果について、将来的に職員個人の成果として活用すること、その前段階として課の単位で財政効果額を算出する仕組みの構築を要望します。それらも視野に入れながら、2-4.行政評価をより有効に活用し、財政効果を生み出すことにつなげていくことを求めますが、このことについて見解を伺います

東京都では令和3年度予算案から、都財政の見える化ボードを公開し、PowerBIを活用して都財政の情報をわかりやすく伝える取り組みを行っています。見える化ボードの一つでもあるTOKYO政策評価・事業評価・グループ連携事業評価見える化ボードを確認すると、都の事業評価における財源確保額は1,266億円となっており、総額はもとより歳出総額における財源確保額の割合も高いものとなっています。区を通じて都に確認したところ、都が所管する約6,000の事業のうち、終期が設定されており終期が到来した事業を機械的に評価しているということでした。行政評価の網羅性は杉並区の方が高いにも関わらず、都がより財源確保を効率的に行えている、といった見せ方になっていますが、その要因は各事業に終期を設定していることにあるのではないかと考えます。令和4年第4回定例会では10分の10の補助事業を積極的に利用する際のサンセット方式を提案しましたが、2-5.財源確保を目的に区の幅広い事業にサンセット方式を導入することについて、改めて見解を伺います。事業の棚卸しや定時的な創意工夫の機会としても、終期の設定は重要と考えます。

→政策評価は平成23年度まで行っていた。24年度から総合計画の体系に合わせて評価体系を変更し、施策評価と事務事業評価に変更した。特段問題があるとは考えていないので、政策評価を実施する考えはない。行政評価の今年度の活用については、事業廃止も含めて今後の方向性を検討する。新規事業を立ち上げる際には、既定事業の廃止・縮小などの見直しを基本としている。改める予定はないが、今後も財源確保も含めた新規施策立案に結びつくのか手法を研究していく。区の事業に幅広くサンセット方式を導入する考えはないが、原則全ての補助金に終期を設定している。

 

都財政の見える化ボードに見られる、2-6.デジタル技術を活用し自治体情報を分かりやすく伝える取組は、オープンガバメントの取組として重要なものではないかと考えます。杉並区でも取り組むべきではないか、とりわけ2-7.財政の見える化ボードについては令和5年度決算から開始してはと思いますが、区長に見解を伺います

→指摘があったダッシュボード等のツールは、区の取組状況を見える化するだけでなく、公開されたデータの区民等の利活用の推進などにも有効。財政の見える化ボードを令和5年度決算からの開始するのは困難だが、財政情報に限らず、気候変動対策や防災・減災など様々な区の取組成果について、来年1月の区公式ホームページのリニューアルに合わせて見える化することを目指し、今後検討する。

 

見える化ボードに関連して、GovTechTokyo(以下GTTと呼びます)について伺います。先日視察させていただきました。2-8.GTTが実施した5品目の共同調達に、杉並区はRPA、e-Learning、パソコン端末等の3テーマで参加したと聞いていますが、この取組による財政効果をいくらと積算しているか、この財政効果は区の現行の財政効果額に算入される見込みか、見解を伺います。新宿NSビルにあるGTTのオフィスには、自治体のCIOが招かれ、周辺自治体と一緒に話を聞くなどして、自分たちのデジタル化が進んでいるのか遅れているのかを可視化するような取組を進めている、という説明がありました。GTTを訪問しコミュニケーションを取る中で、2-9.CIOとしては杉並区のデジタル化について、進んでいると捉えているのか、遅れているのか、またどのような点に今後意を用いていく考えか、見解を伺います。また、GTT側としても、基礎自治体側に積極的に手を突っ込んでいくような動きではなく、DXを自分ごととして意思を持ってGTTを使い倒そうという組織との協業になるという見解を示していました。そういった面では、区の側が受け身ではなく、積極的に協業の場面を設定すべきと考えますが、2-10.今後CIO筆頭にどのようなメンバー、頻度、テーマでGTTと向き合っていく考えか、見解を伺います

→共同調達によって、予算1800万円から790万円程度の経費削減になったが、区が主体で行う取り組みではないので、財政効果額には算入しない。区のデジタル化を他自治体と比較し、進捗を評価することは困難。デジタル戦略担当を中心に、共同調達やデジタル人材確保など広域的に取り組むテーマについて情報共有・意見交換を行っていく。

 

この項の最後に、2-11.教育DXについても技術的な側面には伴走したいというお申し出があり、NEXTGIGA端末については具体的に相談を持ちかけている自治体もあるようですが、教育委員会として教育DX実現の観点からGTTにどのように向き合っていく考えか、教育長に見解を伺い、次の項に移ります。

→GTT主催の「統合型公務支援システムの共同化」に関するワーキンググループに参加し、文科省が示す次世代型校務支援システムの導入や共同調達によるコストメリットの検討に加わった。

 

  • 学童クラブについて
    • 認証学童クラブ

東京都の令和6年度予算に「認証学童クラブ制度の創設に向けた取組」が盛り込まれました。3-1-1.現時点で区として把握している制度の概要を確認します。都の予算説明資料によると、調査研究テーマに準じた先行実施を行う区市町村に対し必要な経費を補助、という記載がありますが、3-1-2.この「調査研究テーマ」は現時点で区に示されたか伺います

→都民ニーズに応じた都独自の制度創設を目指す取り組みで、令和7年度から段階的に実施予定。「学童クラブにおける適切な人員配置」や「学童クラブの質の向上や人材確保・定着につながるための支援」など5つのテーマが示された。

 

杉並区では以前から学童待機児童の解消に向けて公設公営の学童クラブ設置に取り組んできましたが、解消には至っていません。その主要な要因として挙げられるのが、保育園における待機児童ゼロ時代のこども達が小学校に進学し、そのこども達の学童クラブニーズが非常に高いことにあると認識しています。3-1-3.令和5年4月1日時点の5歳児人口は4,178名でしたが、同じ時点での5歳児クラスの保育総数と、令和6年度の小学一年生の学童クラブ申込児童数を確認します。学童クラブに登録せず習い事に通うケースや、通学時間がかかる国私立小学校への進学など、様々な変数があるので、今伺った指標で学童ニーズを精緻に予測することはできないわけですが、公設公営で需要を賄うという意思決定をしているからには、区でもちうるこれらの数字から予測を立てて対策する必要性はあると考えています。学童クラブの認証制度によって児童一人当たりの面積基準が引き上げられた場合、都の認証を得るために定員数を減らす必要が出てくることも考えられることから、学童クラブ待機児童の課題は外部環境の変化に伴い深刻化していると見るべきではないでしょうか。

→令和5年度の保育園5歳児が2,432名、令和6年度の小学校1年生学童クラブ入会申請数が2,308名(待機児童5人を含む)

 

代表質問でも取り上げましたが、私は学童クラブ待機児童の解消については、保育待機児童の解消に向けて民間保育施設を増やしていったプロセスをなぞり、民間学童クラブを活用するべきという考えです。保育施設と違い民間学童は既に区内に多数存在しており、送迎や預かり時間中の教育など付加価値の競争が事業者間で起きている状況です。ですが代表質問の答弁では、そういった付加価値がむしろネックである、放課後児童健全育成事業の趣旨である遊びと生活の場と性質が異なるという答弁でした。逆に3-1-4.遊びと生活の場という役割に特化した民間学童クラブがあった場合には、代表質問の答弁にあった課題は解消されるものと思いますが、その場合は当該施設の活用も視野に入ってくるということで良いか、伺います

→民設民営への補助という枠組みでは、運営の質を継続的にどう担保するか、退位が生じている地域とのマッチングをどう図るか、運営補助を行っても区立学童クラブとの利用料の乖離が大きく生じる、などの課題がある。そのため区では区立学童クラブを整備する方策により質を維持しながら待機児童対策を講じていく。

 

大阪市の習い事・塾代助成のような仕組みは、区長公約にも掲げられており、教育費の負担を感じる経費として習い事や塾にかかる費用が86%の保護者から挙げられていました。習い事に対して区が助成する、と意思決定した場合には、付加価値を持つ民間学童の費用の付加価値分を習い事・塾代助成で補うことで、遊びと生活の場相当額の助成を持って公設公営学童の代替としての利用促進に踏み出せるとも考えられます。

民間学童の実態把握に関する代表質問の答弁では、可能な範囲での情報収集に努めているが、届出の義務がないので詳細な実態把握は行っていないという答弁でした。3-1-5.隣接区の中野区では17、練馬区では13の民間学童の情報が掲載されています。事前の聞き取りによると、杉並区と同様に事業者側が児童福祉法に定める放課後児童健全育成事業としての届出を行っている民間学童の掲載をしているということですが、同届出を行っている民間学童が杉並区に少ない理由について、区としてどのように捉えているか伺います。この間、補助制度を用いて民間学童を活用することを提案していますが、補助がなくとも民間学童を利用している児童が多数いる現状を考えれば、3-1-6.区からの民間学童の情報提供だけでも、結果的に学童待機児童を減らすことができる可能性はあるものと考えられます。当区も区ホームページへの掲載をはじめ、積極的に発信すべきではないか、見解を伺います

安全性の観点で、学童クラブにおける事故の状況について確認します。教育・保育施設等事故報告集計によると令和4年に全国の学童クラブで565件の負傷等が発生し、うち452件が骨折ということですが、3-1-7.区の学童クラブにおける事故の発生状況を確認します

→届出を行っている民間学童が杉並区に少ないのは、区には以前から全区立小学校に対応する学童クラブが存在し、需要増加に応えるため区立学童クラブの整備を積極的に進めてきたことが主な要因。杉並区学童クラブ入会案内には掲載しそれを区公式ホームページに公開してきたが、新たに、放課後児童健全育成事業の届出をしている民間学童クラブを紹介するサイトの充実を図る。国への報告を要する重大事故は起きていないが、報告を要さない軽微なケガは全学童クラブで350件ほど発生している。

 

  • 学校長期休業中の昼食提供

杉並区議会でも定期的に話題になっている、学校長期休業中の学童クラブにおける昼食提供についても、あらためて確認します。東京都の予算の中で、子供家庭支援区市町村包括補助として学童クラブ昼食提供支援事業が盛り込まれ、また中央区でも今年度から実施することになるなど、機は熟したのではないかと思います。夏季休業前最後の定例会ですので、3-2-1.学童クラブにおける昼食提供の実施について、区の検討状況を伺います。学童クラブに昼食を提供する民間のサービスも複数存在していますが、地域の飲食店やお弁当屋さんと連携し、学童クラブが取りまとめるような実施方法も検討いただきたいと思っています。

→検討しているが、昨年末に先行自治体を視察し、いくつかの新たな課題が把握できた。事業者を公募型プロポーザル方式により選定しているケースが多く、サービス導入にあたっっては一定の時間を要するため、今夏のサービス開始は難しい。子育て家庭の負担軽減に取り組むことは必要であると認識しているので、引き続き導入に向けた具体的な検討を進める。

 

令和4年第3回定例会の一般質問では、学校の給食室で調理した給食をセンター方式で提供することを提案しました。その際の答弁では、食数の管理やアレルギー対応等の問題が示されましたが、茨城県境市ではむしろそれらの課題を解決するための手法としてセンター方式を採用しているということです。3-2-2.学校の長期休業中、区の調理職員や学校給食調理業務の委託事業者はどのようにしているか、委託費や給与等は業務に見合った支給がされているのか、確認します

→区の調理業務職員は、調理器具の点検・清掃、食品衛生などに関する研修への参加や区立保育園での調理業務の応援を行うなど。給与は通常通り支給。そのうち会計年度任用職員には勤務を要しない日を設定している。業務委託は長期休業中に10日程度、調理器具の点検・清掃、食品衛生などに関する研修、給食開始準備を行う契約で、それに見合った委託費を支払っている。

 

  • 5歳児健康診査について

ここからは、5歳児健康診査について伺います。乳幼児健康診査は母子保健法第12条において、1歳6ヶ月児健診と3歳児健診は実施の義務が、第13条では必要に応じ、妊産婦または乳児若しくは幼児に対して、健康診査を行い、または健康診査を受けることの勧奨の義務が市町村に課されており、第13条の対象として妊婦、3-6ヶ月、9-11ヶ月の健診や、新生児マススクリーニング、新生児聴覚検査などについては地方交付税措置がされているところです。4-1.第13条が対象とする任意の健診のうち、区で実施している健診とその受診率を確認します

→妊婦健康診査(95.5%)、妊婦歯科健康診査(41.5%)、産婦健康診査(37.6%)、新生児聴覚検査(99.4%)、4ヶ月児健康診査(98.7%)、6ヶ月児健康診査(94.2%)、9ヶ月児健康診査(94.5%)。

 

令和5年6月13日に閣議決定されたこども未来戦略方針の中で、妊娠期からの切れ目ない支援の拡充が挙げられ、乳幼児健診等の推進が明記されました。このことの具体的な予算事業として、「1か月児」及び「5歳児」健康診査支援事業が令和5年度補正予算に計上され、財政支援に加えて必要な技術的支援を行うことで、全国の自治体で両健康診査の実施を目指すとされたところです。4-2.令和6年度当初予算編成における、「1ヶ月児」及び「5歳児」健康診査について、どの部門において検討したのか、また国の補助要綱が発出されたのがいつだったのか、確認します

→2月に母子保健衛生費国庫補助交付要綱が発出され、本年3月に保健・福祉・教育部門と連携して検討を開始した。

 

妊娠期からの切れ目ない支援の観点で、3歳児健診から就学児健診まで健康診査が行われないことから、自主事業としてこれに取り組む自治体も少なからずあり、令和3年度の調査で15%の自治体が公費負担を実施していた、ということです。4-3.5歳児健診の意義について、区の見解を伺います。少なくない自治体が意義を認めて自主事業として行っていた健診に、国庫の1/2負担が設定されたということになりますが、4-4.23区で5歳児健診を公費負担で行っている自治体を確認します

→こどもの言語力や社会性が高まり、発達障害が認知される時期に健診を実施することにより、こどもの特性を早期に発見し、特性に合わせた適切な支援を行うとともに、生活習慣その他育児に関する指導を行い、こどもの健康の保持および増進を図るもの。千代田区、目黒区、板橋区、葛飾区が実施している。

 

5歳児健康診査の意義として、3歳児健診等でも行われる身体や視力等の検査に加え、社会性発達の評価、発達障害等のスクリーニングなどが挙げられます。特別な配慮が必要な児に対して早期介入を実施することで、保護者の課題への気づきや生活への適応が向上する可能性が指摘されており、5歳児健診により学童期の不登校発生数が減少したという研究結果もあるということです。

就学前のこどもに対する教育的支援という観点では、4-5.杉並区は先駆的な取組として令和元年9月に就学前教育支援センターを開設していますが、開設以降の取組とその成果について、答弁を求めます。就学前の教育的支援に強い関心を抱き、区立の就学前教育支援センターを都内で初めて開設した杉並区が、発達状況の悉皆調査ともいえる5歳児健診を実施していないのはなぜなのか。4-6.就学前のこどもに対する教育的支援における5歳児健診の有効性について、区教委に見解を伺います。この項の最後に、4-7.国の補助を活用し、義務化を待つことなく、杉並区でも5歳児健診を実施することについて見解を伺い、次の項に移ります。

→保護者同意のもと、健診結果を適切に関係機関と共有することにより、特別な教育的配慮が必要なこどもへの早期の支援が可能となり、就学前教育施設における幼児の指導上の工夫や就学後の教育的支援にも有効に活用できる。実施に当たっては、健診を担う医師等の専門職の確保やフォローアップ体制の整備などが課題。関係課で課題の整理を進め、他区の動向等も踏まえ対応する。

 

  • 水辺の事故予防について

日本気象協会によると、今年の夏休み期間は厳しい暑さが見込まれるということです。暑い夏の日々にあっても、杉並のこども達が遊びを通じてたくさんのチャレンジができるよう、安全面を大人側で担保していければと思っています。杉並区における「水辺」は、学校や体育館のプールを除けば遅野井川親水施設や公園の流れがある程度で、報道で接する水難事故の現場のような環境が区内に存在するわけではありません。

先日、副会長を務める子どもの事故予防地方議員連盟で、公益財団法人日本ライフセービング協会の副理事長を招き、「水辺の事故ゼロへの挑戦」と題した講演を拝聴しました。令和5年夏季の水難事故における中学生以下の死亡・行方不明者は16名いますが、警察庁が発表している令和4年年間の小学生の交通事故死は9名ということで、交通事故を上回るほどの事故リスクが推認されるところです。事故の詳細を見ていくと、夏休み中家族で、また中学生が友人同士で海や川に遊びに行き、そこで事故が起きてしまうという事例が多くあり、そういった事実から、区内にはリスクのある水辺がなくても、杉並区民のこどもの命を守るために、杉並区においても水辺の事故予防対策が必要であることを痛感しました。交通事故を学校における安全教育で大きく減らしてきたのと同様に、水難事故も教育の力でなくしていきたい、という決意の元、質問をしてまいります。

近年猛暑の夏が続いており、熱中症対策としてWBGTが採用されていますが、WBGT31℃以上の日は水泳の指導を実施しないという判断がされているものと認識しています。事例として一つの学校名を挙げますが、5-1.昨年夏の水泳指導について、桃井第二小学校で中止となった回数と、そのうちWBGT31℃以上が理由となっている回数を確認します。また5-2.水泳の授業を見送った時間は、どのような学習に振り替えているのか、伺います。

→授業は予定通り10時間実施できたが、夏季休業中は実施予定15回中7回、WBGT31℃以上の理由により中止。水泳の授業を見送り場合は、他教科等の学習に振り替えている。

 

学校教育の中では平成29年度の学習指導要領改正によって、小学校高学年に安全確保につながる運動が新設されました。5-3.区ではこの項目に対し、溺水対策として背浮きを教えているか、確認します。ライフセービング協会の調査によると、プールと水着で背浮きによって30秒呼吸を確保できた児童は3割強にとどまったということです。流れのある川や波のある海では、背浮きによる呼吸確保はさらに困難になるということで、溺水事故の防止にはライフジャケットの着用が重要であるとされています。ライフジャケットの着用について、岐阜県のホームページには「ライフジャケットを着用することは、贅沢どころか、最低限の水難事故リスク対策」、関東地方整備局のホームページには「川のシートベルト」といった発信がされており、香川県では令和4年度から小学校の水泳の授業にライフジャケットを導入しています。5-4.香川県の取組を区教委は認識していたか、また5-5.ライフジャケットを活用した水泳指導を区立学校で実施することについて、見解を伺います

水辺の事故予防教材については、令和2年に現役の教員が作成し、文部科学省、スポーツ庁、消費者庁、海上保安庁他が推奨する「e-Lifesaving」が公開され、昨年9月の時点で約400万回閲覧されています。この動画教材で学んだ上で、プールでのライフジャケット実技体験を行うと、ライフジャケットを正しく着て活用できるかという質問に9割以上が肯定的な回答をするということですが、動画教材で学び教室で着用体験をする場合でも約8割が活用できると回答するということです。5-6.教室での着用体験にも一定の有用性があることから、プールでの実技体験は指導する先生の負担が大きいということであれば、教室での指導であったとしても行うべきと考えますが、このことについて区教委の見解を伺います

→背浮きの指導をしている。済美教育センターで毎年、水泳指導推進者となる教員等を対象に、水泳救命実技講習会を実施し、背浮きの指導も扱っている。香川県の取組は承知している。区立学校では水の事故を防ぐための安全指導の取り組みとして、着衣泳やペットボトルを活用した浮く練習などを実施している。今後は動画視聴やライフジャケットの活用、外部講師による指導など、新たな試みについて研究していく。

 

昭和30年の紫雲丸沈没事故や同年の橋北中学校水難事件によって、児童生徒の水泳能力の向上を望む民意が広がったことから、昭和33年の学習指導要領の改訂によって、体育に「水遊び」「水泳」が設けられました。この当時、水泳のための施設を欠く学校が多く、施設がない学校は他の学習をする、ということも当時の学習指導要領には書かれていたようです。その後昭和39年の東京オリンピックがあり、競泳男子800メートル自由形リレーで銅メダルを獲得するなどの盛り上がりもあり、「長く早く泳げるようにする」といった泳力指導を重視するようになった、という変遷を経て、あらためて安全確保が重視されるようになっています。それは重要なことですが、5-7.安全を重視するあまり杉並に育つこどもやその保護者が水辺から遠ざかるのではなく、水辺を楽しみ、大切な思い出を水辺で作っていってほしいと私は思っています。水辺を恐れすぎず、水辺に内在するリスクをコントロールできるよう、区立学校における水辺の安全教育の拡充を求めますが、このことについて見解を伺い、質問を終わります。

こども達が水辺での体験を楽しみ、命を守る行動ができるよう、安全確保につながる運動について、指導の充実に努める。