代表質問(令和7年度予算の編成方針とその概要について)質問全文

2月14日、令和7年第1回定例会の本会議で、区長から提案のあった令和7年度予算の編成方針とその概要について、会派を代表して質問を行いました。
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↑16:30〜
以下に質問全文と答弁の要旨を記載します。
維新・無所属議員団の松本みつひろです。
これより、会派を代表して、このたび区長から提案のありました令和7年度予算の編成方針とその概要(以下、編成方針と呼びます)等について、関連資料も参照の上、質問をしてまいります。ある程度の精査はしましたが、質問は事前にお伝えしていますので、他会派と重複があった場合も簡潔にご答弁いただきますよう、よろしくお願いいたします。
1.昨年の振り返りについて
編成方針の冒頭で、区長は昨年に引き続き、能登半島地震の話題を選択されました。私たちからも、被災された皆様に改めてお見舞いを申し上げ、一日も早い復興を祈念いたします。昨年の代表質問の締めくくりに、「区長の情報発信とリーダーシップに大きな成長が見られる令和6年度を望」むと私から申し上げました。この一年間、区長自らの情報発信についてどのように取り組んだか、まず伺います。
→有事の自治体の情報発信には正確さとスピードが求められる。首長としての発信は責任重大。防災は平時からの意識啓発も重要。防災テーマの参加型予算や広報すぎなみの防災特集記事、区長メッセージ動画等で情報発信した。今後も区民にわかりやすく発信し、有事の際には正確な情報を速やかに発信する。
日本被団協のノーベル平和賞受賞について、私たちからもお慶びを申し上げます。昨年12月、日本時間の10日夜にオスロで行われた授賞式における代表委員の方の演説は、核廃絶への純粋な思いを核保有国に届ける最善の機会であったと感じます。核抑止論という選択が、現時点で核戦争を引き起こしていないとはいえ、核兵器を減らすには至らない膠着状態にある中、核のない世界に向けた大きな一歩になることを願ってやみません。非核・平和に向けた想いを次世代につないでいく上で重要な出来事が、昨年もう一つありました。コミック界のアカデミー賞といわれるアイズナー賞を、『はだしのゲン』が獲得したことです。『はだしのゲン』は核の持つ残虐性をありありと描いた作品として評価される一方、一部の残虐表現や偏った歴史観が問題視されてきたという側面があり、平成25年には当区でも、いのちの教育月間の取組として、『はだしのゲン』の英訳を担った翻訳者に依頼していた講演が、校長からの求めにより急遽中止となる事態も起きました。日本被団協もまた、昭和45年に発生したウルトラセブンのスペル星人問題の当事者であります。区が非核・平和に向けた想いを次世代につないでいくための事業を行うにあたっては、表現の自由への配慮も重要であり、勢い余ってキャンセルカルチャーを助長することがないよう細心の注意を払って組み立てる必要があると考えますが、このことについて区長の見解を伺います。
→展示内容については史実を正確にわかりやすく伝えるとともに、当然に誰かの心を傷つけたりせず、多様な受け手に共感が得られるよう配慮する。
アメリカ大統領選挙についてはごく簡単に触れるにとどまっておられましたが、今年を占う大きな変数になりそうです。トランプ大統領の「アメリカン・ファースト」それ自体はともかくとして、それらを具現化する政策について、初日に署名した26の大統領令を見た政治関係者はもとより、民間、特に国際的なビジネスに携わる区民から、あまりに強烈な方針転換と先行き不透明さに頭を抱える悲痛な声を伺っています。政府の行き過ぎたDEI(Diversity, Equity& Inclusion)プログラムを廃止、政府が認める性別は男性と女性の2つの性のみとする、パリ協定からの離脱など、岸本区長の政策と正面衝突するような大統領令にも署名されています。各国の対応も注目されますが、超大国アメリカがその存在感と共に示していく古くて新しい価値観に、岸本区政がどのように向き合うのかにも注目しています。トランプ大統領の政策について、区長のご所見をもう少し深くお聞かせください。蛇足ながら私としては、政策の内容について理解しかねるものが多くありますが、公約を達成していく力強さとスピード感には舌を巻くものがあると感じています。トランプ大統領の強引さは捨象した上で、ぜひ参考になる部分を見つけていただきたいと思っています。
→アメリカ第一主義の政治姿勢を大変憂慮。保護主義的政策による経済の不安定化、パリ協定脱退による気候変動対策の後退、WHO脱退による公衆衛生対策の弱体化、US AID閉鎖による国際人道支援の停止などを危惧。区政に間接的な影響がないとは言い切れず、今後の情勢に注視しながら必要な対策を講じる。
石破政権についても、注視するといった簡単な言及に留まっていました。1月24日から通常国会が開会していますが、岸本さんの政治家としての視点で、今国会注目しているテーマについて、お聞きできればと思います。
→経済対策、学校給食費を含む義務教育費の無償化、区民生活と区財政の双方に大きな影響を及ぼすと見込まれる年収の壁問題、選択的夫婦別姓制度の法制化、在職老齢年金制度を含む年金制度改革など。
物価高についての言及がありました。物価上昇に対しては、区としても国の臨時交付金による給付金事業を行っているとのことですが、対象が住民税非課税世帯に限られている給付金事業が物価上昇対策とはどういうことなのか、課税世帯には物価上昇の影響がみられない、または課税世帯の生活において今般の物価上昇は大した影響を及ぼしていないと考えているのか、区長から説明を求めます。給付金事業は課題の一部にしか対応できておらず、政策を考える上では課題に直面する区民全体に対する打ち手を考えていくという姿勢は重要だと考えますが、区長はいかがお考えか。「優先順位」というのであれば、優先されない人たちもいつか順番が回ってくるはずですが、この間区の給付金事業では優先順位の高い人だけが繰り返し対象とされ、優先順位の低い人には国の施策、一律10万円と定額減税しか適用されません。そもそも所得の多寡と生活の貧富は必ずしも直結するものでなく、所得はないけれど裕福な高齢世帯は区内のあらゆる地域に多数存在しています。私はそういった高齢世帯の皆さんから、自分たちにはもういいから必要なところに支援が届くようにもっと知恵を絞れ、工夫せよと日々叱咤されています。区長にもそういった声が届いていますでしょうか。また区としての「知恵」や「工夫」について、どういった検討が行われているか伺います。
→物価高騰の影響が全国民に及びうるなか、可処分所得の少ない低所得世帯はとりわけ影響が大きいことに鑑みて給付対象を指定して実施しているものと認識。国の総合経済対策は給付だけでなく、電気・ガス料金の支援、ガソリン等の価格抑制、政府備蓄米による米の流通確保など全国民向けの取組を実施し、区も広く区民が活用できるキャッシュレスポイント還元事業を実施する。物価上昇には対応する賃金上昇や技術革新による価格抑制、産業構造の変化が必要。賃金上昇等の影響を受けにくい方への短期的な対応として基礎自治体が施策を検討し対応することは重要。物価高騰対策について本当に必要なところに税金を使ってほしいという意見は区でも受けている。意見を国に伝え、区も区民生活のために最大限の効果が得られるよう引き続き努力する。
2.区民と共に進める区政について
ここからは、「区民と共に進める区政」について伺ってまいります。
気候区民会議からの33の意見提案を真摯に受け止め、組織横断的に検討し、令和7年度以降の事業に生かすということで、今後の区民参加を活性化する狙いもあろうかとは思いますが、区議会の意見提案よりも事業反映度合いが高そうな印象を受ける点にはモヤモヤも残ります。具体的な意見提案の中では、私有地のみどりを守る「推し樹林」の中で、所有者の意思確認を行うということが明記されているなど、区民の熟議がバランスの良い結論を導かれていました。これらの提案の中から一点伺いますが、「19 みどりのおもてなし 駅周辺や大規模な土地に、杉並の顔となるような良質なみどりをつくり区民と守り育てる」について、駅周辺でもあり大規模な土地でもある荻窪五丁目の10階建て社宅跡地に16階建てを新築しようという計画の土地利用構想届出書によると、緑地として構想されているのはわずか75㎡余、敷地面積に対して約4%となっています。みどり公園課が発行している「緑化の手引き」に記載のある緑地面積の基準に照らして約半分程度しか確保していないわけですが、この面積基準は屋上緑化の面積でカバーできることになっています。気候区民会議の意思を尊重する上では、現状の緑地面積基準にも見直しが必要と考えますが、見解はいかがか。提案では良質な緑化にインセンティブを与えるなどのステップが記されていますが、この提案についてどういった時間軸で実現していくのか、伺います。
→提案された良質な緑化を推奨する制度の実現は、今後詳細に検討を重ねるが、その実現のために緑地面積基準の見直しが必要となれば、適切な基準を設けることになる。みどりの基本計画との整合性を図り早期の事業実施を目指す。
関連して、当該社宅建て替え案件と対話の区政について伺います。荻窪駅周辺では、第4回定例会の一般質問で取り上げた、北口駅前広場に隣接した共同建て替えプロジェクトも進行しています。北口の事業について、「民間事業だが、駅前広場の歩行空間の環境改善や、将来的にもしペデストリアンデッキ(歩行者用の高架の通路)を設けた場合の接続への考慮なども含め、区から事業者に対してまちのビジョンや必要な情報を共有すること等を通じ、事業者と連携して荻窪駅周辺の利便性向上、にぎわいと住環境が調和したまちづくりが進められるよう努める」という答弁がありました。まちづくり条例に定められる大規模開発事業の手続等のような、具体的な手続きに入る前の段階でありながら、区と事業関係者が情報交換を行い、民間事業者にまちづくりへの協力を早い段階から求めていく区の姿勢に、対話の区政の意義を感じるものがありました。事業者と連携したまちづくりが行われようとしている点は評価できるものであり、長年「機会を捉えて」という名の先送りが続いていた荻窪駅南北移動問題が、対話を梃子として動き出す兆しを感じる答弁でありました。
そのわずか二ヶ月後に、荻窪駅の南側で、解体工事が進んでいた三菱重工業社宅跡地の建築計画のお知らせが、敷地周辺の住宅等にポスティングされました。大規模開発事業の手続等に定められている説明会の開催案内と合わせ、数種類の図面が同封されていました。説明会の開催案内と同時に、図面が地域に配布されることは一般的なのか。高さ規制のない商業地域なので、高い建物が立つのは仕方がないと所管は簡単に仰いますが、10階建ての跡に16階建て、50メートル四方の正方形の壁の如きマンションが建ったとして、地域との調和が図られるのか、現時点で私はとても疑問に思っています。敷地の近傍には19階建ての賃貸マンションがありますが、総合設計制度を活用した建築物で町会や商店会の倉庫も提供されており、地域との調和への考慮が窺えるものです。そのような、地域や行政機関との対話を全てすっ飛ばし、生活環境の激変を想起させる図面を突然配布した上で行われた説明会は、豈図らんや紛糾したと聞いています。対話の区政を掲げる岸本区長として、当該プロジェクトのここまでの進め方についてどのような感想を持ったのか伺い、北口プロジェクト同様、民間事業であっても区から事業者に対してまちのビジョンや必要な情報を共有すること等の対話を通じ、事業者と連携し、地域と調和した開発とすることを求めますが、区長の見解を求めます。解体前の三菱重工業社宅は、ファミリータイプの住戸で構成されていて、多くの子育て世帯が暮らしていました。建て替えプロジェクトでは建物延べ面積約13,404㎡に対し、210戸で計画していることが明記されています。レンダブル比65%で試算すると、専有面積の平均は41.5㎡となります。子育て世帯が暮らせる住戸の供給、3人家族の都市居住型誘導面積水準の75㎡以上の住戸と、4人家族の同95㎡以上の住戸はそれぞれ何戸程度計画されているか、事業者に聞き取った情報をお知らせください。令和7年1月1日時点で杉並区には33万4,466世帯、57万7,147人が暮らしており、世帯あたりの人数は1,73、荻窪1−5丁目では1,78と算出されます。ところが荻窪5丁目単体で見ると1,55となっており、地域の将来を考えれば、新規の大規模マンションには子育て世帯を呼び込み、将来を見据えた人口構成を構築することへの貢献を求めたいところです。現時点で区とも地元とも、そういった問題意識の交換を行っていない事業者のマンションブランドが「その街が輝いていく」などと謳っていることについては、主開口部を壁で塞がれる建物所有者からすれば「街に元々あった輝きを奪われる」わけで、残念なことですが今のところ悪い冗談にしか感じられません。
→図面の配布は事業者の判断で行うこともある。専有面積75㎡以上は計画がなく、区の住環境指導要綱でファミリー形式の住居として規定している40㎡以上は98戸程度。手続き等法的には問題ないものの、今回の事業規模を考えると地域住民への周知などより丁寧に進めていく必要がある。今後区は事業者に対し、住民説明会などで出された意見等を踏まえ、地域の発展やまちづくりに貢献する計画となるよう積極的に求めていく。
ジェンダー平等に関する審議会について、昨年の第三回定例会で条例が制定され、1月27日に第一回が開催されました。条例第3条の分類に沿って、委員を何人委嘱したのか、委員のプロフィールについても簡単にお示しください。
→学識経験者4名、ジェンダー平等関連の団体関係者3名、公募区民2名、人権擁護委員1名。
荻外荘公園について、来場者数が好調ということですが、1月末時点で累計何名の方が来場して下さっているか、指定管理者の集客計画と比較してどのように評価されるか、伺います。
→年間24,000人の想定に対し、1月末までで12,700人。地域や指定管理者の協力、多くの方の支援があってこその反響との受け止め。
1月16日に関東バス五日市街道営業所の8系統が乗務員不足により減便となり、地域公共交通網を維持していく危機意識が高まりを見せていますが、新たな希望としてAIオンデマンド交通の実証運行が1月8日に始まりました。実証運行の状況と課題について、また実証運行は12月末日までを予定していますが、その後の展開をどのように想定しているのか、伺います。
→一日数名の利用しかなく、地域へのプロモーションが課題。次期計画改定を見据え、他地域での実証運行などを見定め取り組む。予約の際活用する杉並産MaaS「ちかくも」と連動し、AIオンデマンド交通だけでなくバスやシェアサイクルなどの移動・利用データを総合的に分析に、交通サービスの適正配分や、健康や環境など移動から派生する多面的な価値を可視化できるよう検討する。
教育分野について、昨年11月に取りまとめられた「杉並区教育委員会事務局等における不適切事案等の要因分析及び再発防止対策検討委員会報告書」に言及がありました。各事案に共通する再発防止の取組として、教育SATの機能を向上させた学校問題の対応支援に係る専門組織(仮称:学校問題対応支援係)を区役所本庁舎の事務局内に新たに設置するとのことですが、今年4月から立ち上がるのか、この係が所属する課はどこになるのか、専門家で構成するということだが人材確保はできているか、確認します。
このような不適切事案については、検証し再発防止策を策定するなど、対策に一定の目処が立った時点で、責任の所在を明らかにすること等を目的に、特別職の給与を減額する処分が議会に諮られるのが通例ですが、今回はこのような処分は行わないのか。行わない場合はどういった理由によるものか、伺います。
→教育人事企画課を教育人事・指導課とし、学校問題対応支援係を置く。元教育管理職、心理職、元警察官を配置予定で人材確保を進めている。給与減額については、本区の事例や他団体の事例を踏まえ案件ごとに要否を判断。今回は行わないと判断した。
3.令和7年度予算編成方針の基本的な考え方について
次に、令和7年度予算編成方針の基本的な考え方として示された事項について伺います。
区民のいのちと暮らしの安全・安心を守ることについて、改めて区内建築物の耐震・不燃化の促進が挙げられています。耐震化率は令和4年度時点で93.7%であり、また実行計画にも明記されている通り「建物所有者等の主体性が必要」となる取組です。令和12年度目標値の99%に対する残りの5.3ptを引き上げるためには、従来通りの周知・啓発に加え、個々の建物や建物所有者の課題に応じた個別的な打ち手も必要になっているのではないでしょうか。このことについて、区長の見解を伺います。
→区役所での耐震相談会の他、特定緊急輸送道路沿道建築物については個別訪問を実施し個別相談にも応じてきた。議員の指摘も踏まえ引き続き検討する。令和7年度から災害時に直ちに避難することが困難な障害者等が居住する住宅に補助額の加算を行い、木造住宅の耐震改修助成額の補助限度額を引き上げる。
防災・防犯カタログギフト配布事業について、防災・防犯グッズの一過性のバラマキになることがないよう、カタログに防災・防犯に関する必要な情報を盛り込み、杉並版『東京防災』のように家庭で保存されるようなカタログにしていくことを求めます。見解を伺います。
→指摘の通り一過性にならないようにする必要がある。防災・防犯に関する情報やLINEセグメント配信の案内を掲載し、折りに触れて見返す保存版とする。
区立学校の天井断熱化等に取り組むとのことでした。天井の断熱化は一般的に天井裏に断熱材を施工することを指しますが、この対応を進めるということでしょうか。複数の研究から、屋上緑化には高い断熱効果があることが確認されており、設備スペースを含めた天井全体にできる限りの屋上緑化を施すことでも熱中症対策としての目的が達成でき、かつ緑被率の引き上げにも一定寄与することが期待されますが、それは行わないのか、確認いたします。
→昨今の猛暑から児童生徒等の教育環境を守ることは喫緊の課題。屋上緑化は断熱効果やみどりの創出の観点で有効な手法と考えるが、維持管理コストや学校による屋上利用の制限、構造上設置が困難な場合があるなどの課題もある。改築や改修の機会に校舎断熱化に取り組むほか、既存校の最上階にある普通教室の天井裏に断熱材を敷き込む。
将来にわたり持続可能な財政の健全性確保に努めたことに言及がありました。令和7年度税制大綱では103万円の壁が123万円に引き上げられ、令和7年分以後の所得税及び令和8年度分以後の個人住民税について適用することとされています。基礎控除が仮に178万円に引き上げられた場合の区の減収想定額は130億円と第4回定例会で答弁がありました。年収の壁の引き上げに伴い、住民税について、給与所得控除55万円の最低保障額が65万円に引き上げられた場合の、住民税の令和8年度影響額について、答弁を求めます。
→1億円強の歳入減となる見込み。
平成23年度の1,488億円から14年連続となる歳入予算の増が続き、令和7年度は2,456億円、14年前から約一千億円の歳入増となっています。国の政策による地方財政への大きな影響が予見される状況下にあって、事業の見直し・廃止をお題目としていては財政の健全性確保に黄信号が灯ります。令和7年度予算における事業の見直し・廃止について、予算削減額が大きかったものから3件の具体的な内容と、件数・総額をお示しください。昨年11月18日に公開された予算要求(見積)状況公表資料によれば、要求額は2442億円余でしたが、示されている予算案では2456億円余と要求から増えています。令和5年度は29億円余の減、6年度は1億円余の減でしたが、要求から増えた理由を伺います。要求から当初にかけて削減した主な要求事業と削減額を確認し、資料公表後に追加した事業について、その内容と要求額をお示しください。既定事業が466と前年から4件増えていますが、令和6年度の新規事業は3事業でした。増えた残りの1事業について説明を求めます。
→定期利用保育事業の廃止2,470万円余、保育室若杉廃止(人件費除く)740万円余、保育施設として賃借していた物件返却の540万円余。事業の見直し・廃止は15件5,800万円、要求額から削減したのは252件48億8千万円。私立幼稚園支援事業の実績減による3億1800万円余など。区役所庁舎整備基金の積立金と補正予算で議決したキャッシュレスポイント還元事業の計上により、要求から当初予算額が増加した。既定事業の整理・統合の結果8事業が増、7事業が減、昨年度の新規3事業を加え4事業。
4.主要な施策の概要について
基本構想が掲げる8つの分野に沿った主な施策について、それぞれお話しいただきました。
防災については先ほど申し上げましたが、防犯面について、1月27日未明には堀ノ内三丁目で強盗事件が発生するなど、凶悪な強盗事件発生は区民の安心・安全な暮らしを脅かしています。安全パトロール隊による防犯パトロールや防犯診断の実施、街角および公園防犯カメラの設置はいずれも重要であり、その他町会・自治会が主体となって行うパトロールや、区立天沼小学校などで行われている地域防犯マップ作成など、様々な手法を組み合わせて防犯体制を強化していく必要があります。追加でご紹介したいのが、まちづくり、道路整備の視点から防犯対策を行った取組として、古い事例ではありますが、愛知県名古屋市守山区の「防犯モデル道路」事業があり、令和2年9月に国土交通省が公表した防犯まちづくり取り組み事例集でも紹介されています。歩道の新設や蛇行させた道路の整備、イメージハンプの整備、ガードレール・街路灯の整備、非常ベルの設置や防犯連絡所の増設などが具体的な取組で、昭和58年に設定した防犯モデル道路では、昭和60年までの間に犯罪発生件数が半減したことが、その後の調査で明らかになっているそうです。防犯モデル道路を設置することについて、またまちづくりに防犯対策の視点を取り込むことについて、区長の見解を伺います。
→まちづくりにおいて、防犯道路の視点を踏まえて進めることは防犯対策にとって大変重要。
まちづくり分野では、都市計画道路について言及がありました。補助132号線、133号線、221号線それぞれの事業の進捗状況をご説明いただき、(仮称)デザイン会議を行った成果のうち、まちの将来像に具体的な変化をもたらした要素がありましたら、お示しください。また区施行の優先整備路線である残りの2路線、補助216号、227号についても現状を伺います。
→用地取得率(面積ベース)は132号線28.5%、221号線5.1%。133号線は事業着手していない。デザイン会議によるまちづくりの方向性への変化はないが、今後より具体的な各地域の将来像を考える。事業着手していない216号線は構造的な問題、227号線はまちづくりへのさらなる機運情勢が必要で、現事業化計画期間における事業着手は困難と考えている。
自転車の活用推進について、努力義務であるヘルメットの着用状況が直近でどのようになっているか、確認します。またヘルメット着用推進の施策について、令和7年度に実施すること、または検討していることをお示しください。
→着用率の最新調査は、区の独自調査を昨年6月に実施し8.6%、一年前から2.9pt上昇。自転車フレンドリープロジェクトの展開の中で、特に子育て世帯への啓発に注力。
住宅施策について、「住まいは権利であるという理念」と仰いましたが、これは区長の理念か、区の理念か、明快な答弁を求めます。ひとり親世帯および多子世帯を対象とした民間賃貸住宅の家賃助成制度について言及がありました。代表質問の中で既に議論がありましたので、私からは違う角度から、区の住宅政策全体との関連も踏まえて確認していきます。住生活基本計画における都市居住型誘導面積水準は4人家族で95㎡とされていますが、区の令和4年度版統計書によると、区内の住宅のうち70㎡未満が64%、70~99㎡が18%、100㎡以上が18%となっています。広い住戸の大半は持ち家の戸建て住宅と仮定した場合、多子世帯が住むことのできる民間賃貸住宅はかなり限られていると考えられ、実際に不動産情報サイトを検索しても広い物件はほとんど見当たらない状況です。創設される家賃助成制度では、世帯人数に見合った広さの住宅を対象とするなどの条件を付す考えか、見解を求めます。多子世帯が健康で文化的に暮らすことができる広い賃貸住宅が区内に不足していることについて、区は認識を持っているか。分譲住宅の価格高騰とあいまって、家族数に対して狭い賃貸住宅での暮らしを強いられている、家が狭いことでもう一子産むことを見送る、という多子世帯が直面している実情に、「住まいは権利」という理念は空虚に響いています。賃貸住宅の所有者の視点に立つと、面積当たりの賃料が最も高く取れる1K、1LDKなどを極力多く作ることが経済合理性にかなった判断であり、不動産業者もそれをクライアントである所有者に強力に推奨している状況から、神の見えざる手が機能することを期待できる状況になく、こういった課題にこそ公の介入が必要です。都市居住型誘導面積水準などを念頭に、一定以上の規模の住宅建設にあたり、多子世帯がゆとりある暮らしができる広さの住戸の設定を義務付ける、またインセンティブを与えて設定を促すことによって、多子世帯の生活と子育てを側面支援し、区内の住宅ストックを健全なバランスで形成していくことについて、区長の見解を伺います。
→住まいは権利である理念は杉並区住宅基本条例でも示している、区の基本的な考え方。区長は公的な責任として誰もが経済的な理由で住宅の確保に困窮しない状態が理想と考え、住宅に困窮する低額所得者への支援策の一つとして家賃助成制度を創設。広さを条件に付す考えはない。区内に広い間取りの住宅が少ないことは承知している。一定規模を超える集合住宅の建設時にファミリー形式の住戸を設置するよう基準を設け事業者に協力を求めている。住宅は公共性を有しており、多様な世帯が暮らしやすい質の高い住宅ストックを形成することが、暮らしやすさや区への愛着につながる。
学校給食での杉並産農産物の利用拡大に向けたモデル事業については、事業目的に対して有効な施策となることを期待しています。
環境分野では、受動喫煙対策として、荻窪駅南口公衆喫煙場所を煙の漏れないコンテナ型に改善することを表明されました。予算要望や議会質問で重ねて求めてきた施策であり、地元の荻窪五丁目町会長が提出し都市環境委員会の審議で趣旨採択となった陳情の中でも求められていたものです。この施策について、高く評価いたします。荻窪駅南口公衆喫煙場所をコンテナ型に改善していくスケジュールとコンテナ内の広さ、同時に収容可能な人数について伺います。陳情審査の中では、町会全域を路上禁煙地区に指定することについては否定的な意見が多かったものの、現状の路上禁煙地区の指定を拡大していくことに対しては一定の肯定的な意見もあったものと認識しています。路上禁煙地区の見直しについて、令和7年度に行っていく考えがあるか、伺います。陳情審査の中で路上禁煙地区を広げることによって、路上禁煙地区との境における路上喫煙やポイ捨てが増える、という趣旨の発言がありましたが、全域路上禁煙の世田谷区との区界でそういった現状があるのか、見解を伺います。43万人の喫煙者が暮らしていると推測される大阪市でも、1月27日から市内全域の路上を禁煙とし、規制の対象に電子タバコを明確に位置付けました。特別区9区や大阪市が全域禁煙としていることに関する、岸本区長の受け止めをお聞きしたいと思います。
→令和7年秋頃から現場の改修、竣工は令和8年2月末頃の見込み。広さは約17㎡、15人収容。路上禁煙地区見直しは先般の生活安全協議会から「現状の対応で良い」と意見を受けている。今年度再度見直しを行う。区界のポイ捨てについて調査は行っていないが、巡回時の感覚や電話での相談状況から、区界のポイ捨ては若干増えていると捉えている。区域内全面禁煙としている区や市は、総合的に判断しているものと認識。
荻窪駅南口公衆喫煙場所をコンテナ型に改善する取組に令和7年度3600万円余を投じるということですが、以前にも申し上げたことがあるように、非喫煙者の中には、公衆喫煙場所の整備など税金の無駄遣いであると強く思っている方がいらっしゃいます。そうした考えを捉えた時に、公衆喫煙場所が自ら稼ぐことが重要な要素になると考えます。運営コストを稼ぐために、高円寺マシタの喫煙所で行っているようなデジタルサイネージ広告の設置を行うことや、消費するエネルギー分を稼ぐためにペロブスカイト太陽電池等新たな創エネ技術を搭載することについて、見解を伺います。
→運営コストの軽減や新たな再エネ技術の活用は重要なポイント。広告宣伝やネーミングライツを検討したが、都の補助金を活用する場合収益事業が一定期間できないため、補助金額と収益事業による収入を比較しつつ適切に判断する。本体屋根に太陽光発電設備等を設置し、エネルギーコストとCo2排出削減に取り組む。ペロブスカイト太陽電池の導入検討は行ったが、耐久性や発電量等の課題から見送ることにした。
松庵2丁目と大宮1,2丁目で試行実施中の製品プラスチックの収集について、プラスチック製容器包装だけを回収している場合と比較して、収集量はどの程度増えているのか、伺います。
→実施前3,851kg、実施後4,435kgと15%増。令和8年度から区内全域回収。
みどりの基本計画を改定するプロセスに区民の参加を求める、というお話がありました。今回も気候区民会議のような座組を設けるのか、現時点で想定している区民参加の態様と、計画改定のスケジュールを確認します。
→さらに広く区民から意見聴取するためのワークショップの開催を考えている。来年度の早い時期からワークショップ、12月目処で計画案パブコメ、令和7年度末の改定を目指す。
健康・医療分野では、女性特有の健康課題解決に向けたオンライン相談窓口の拡充が示されました。不妊治療のオンライン相談に続き、必要な施策であると評価するものです。小児救急医療体制の確保支援について、昨年3月末をもって河北総合病院の小児救急診療の受付が中止されましたが、当該事業は杏林大学杉並病院の小児科医確保のための補助であるということです。河北総合病院の撤退後、区内唯一の都指定二次救急医療機関となった杏林大学杉並病院とは、この間密に連携してきたものと承知していますが、現状の小児救急医療体制確保における課題と、確保支援による効果について伺います。河北総合病院が小児救急診療を中止したのは小児科医不足も原因だったかと思いますが、小児科医確保施策を区が行うことによって、河北総合病院でも小児救急診療を再開できる可能性があるのか、見解を伺います。
→小児救急外来の受診者や地域医療機関から紹介される小児科の患者数が大幅に増加し、小児科医の過重労働が課題となり、医師確保が非常に困難となっている。確保支援は救急や紹介受診の対応を行う医師3名分の経費助成で、小児科医の安定確保と医師の過重労働改善による小児診療の質の確保も期待できる。河北総合病院の小児救急診療再開について、受診者が急激に減少していることに加え、その大多数が入院を要さない軽症者であり、今後の需要を考え24時間体制で医師確保をする必要性がないと判断したとのこと。再開の意思を示した場合には相談に応じる。
編成方針の中には記載がありませんでしたが、令和6年度に都補助が設定され、16区で実施しているHPVワクチン男性接種にかかる助成事業を令和7年度から杉並区でも実施するということです。この取り組みを評価しますが、実施に至る検討の経過と接種対象者、補助率を伺います。
→対象者等が接種するかどうか自らの意思で選択できることが重要であるという認識に至り、体制整備し来年度から実施する。小学校6年生から高校1年生までの男性に全額補助する。
福祉・地域共生分野では、ひきこもり当事者に対する支援について、専門相談窓口の新規設置をするということです。保健福祉委員会では昨年秋に広島県尾道市に視察に伺い、重層的支援体制整備事業について学びました。尾道市も総合福祉センター内にひきこもり相談窓口が設置されていますが、ひきこもりや孤独・孤立の問題は生活困窮や障害分野と関連するケースが多いことから、尾道市版重層的支援体制の中にひきこもりも位置づけ、多機関協働で取り組んでいるということです。杉並区でも令和6年度の新規事業として重層的支援会議を設置したところですが、設置以降の取組や区の体制について確認した上で、区の重層的支援体制の中に今後ひきこもりや孤独・孤立を位置づけていくことについて、区長の見解を伺います。
→他分野にまたがる相談への対応支援として、各分野の制度やサービス内容を庁内ネットワーク上で検索できるシステムを新たに稼働するなど、相談体制の連携強化に取り組んだ。今後ひきこもりや孤独・孤立も含めた他分野にまたがる課題を取り上げていく中で、現状の17課以外の所管課職員も参加し、連携強化を図る。
こどもの学習等支援事業の実施箇所拡充については、地域の偏りを見ながら、今後も着実に拡充していただくことを求めておきます。介護サービス事業所等に勤務する無資格者に対する研修受講料助成や、放課後等デイサービスの送迎利用範囲の見直し、障害児の中学生以降の居場所確保に向けた取組などについては、これまで会派から求めてきた取組であり、評価するものです。
こども分野の取組としては、里親の支援や社会的養護経験者の自立支援は重要であると認識しています。放課後等居場所事業は、令和6年度17校で実施、令和7年度は新たに3校で実施されるということです。8年度・9年度の2ヶ年で新たに20校が実施する計画となりますが、実現可能なのか、現時点で8年度に開始できる見込みの学校数について伺います。保健福祉委員会への報告の際には、専管組織の設置についても言及があったように記憶していますが、専管組織は設置するのか、その他全校実施に向けた課題について伺います。
→令和7年度3校、8年度10校、9年度10校。拠点となる部屋や利用諸室のさらなる拡大が課題。今後も児童青少年課が担当し、教育部門と連携し、継続的に検討協議する場を設ける。
学びの分野では、学校ICT担当課長がこれまで庶務課長の兼務だったところから、民間人材の登用を行うということで、取組が加速することを期待しています。お目にかかる日が来ることを楽しみにしています。
「杉並区いじめの防止等に関する条例」が提案されているところですが、条例が制定された場合に、児童生徒に対する周知をどのように進めていく考えか、教育長の見解を伺います。
→校長が朝会等で児童・生徒に話をし、教育長メッセージをホームページで発信。子どもワークショップで条例の基本理念を普及啓発し、内容をわかりやすく示したクリアファイルを作成し配布する予定。
拠点校方式による合同部活動について、どの競技で合同部活動を行うか、確認します。関連して、部活動指導における外部人材の活用について、令和7年度に取り組む内容を伺います。
→サッカー、卓球、硬式テニス、軟式野球、バトミントンの5種目で合同部活動。部活動指導員、外部指導員、部活動活性化事業によるコーチの配置など従前の取り組みに加え、従来の部活動にかわる中学生の放課後等の活動の充実を図る。
学校給食費の公会計化が令和7年度当初から始まりますが、他の私費会計について、公会計化に向けたロードマップをどのように考えているかについて、見解を伺います。給食費無償化以降、給食の質を懸念する声が議会でも上がっていましたが、残菜率は無償化前後でどのように推移しているか、伺います。トイレ便器の洋式化については、他会派からも指摘がありました。着実に進めていくことを私たちからも求めておきます。
→徴収管理システムの構築が必須だが、それと連携不可欠な学齢簿システムの標準化が遅れているため、構築に着手できていない。そのためロードマップを示すことができないが、できる限り早期の実施を目指す。令和5年度1学期と、無償化後の令和6年度1学期で残菜率を比較すると、小学校は約10%で変わらず、中学校は約5%から4%と残菜率に変化は見られない。
区立小中学校の教員が体調不良等で休職・退職する事案が増えているように感じています。現時点で担任が不在になっている事案が何校何クラスあるか、校長・副校長の休職・退職の発生状況についても確認します。区内のいくつかの小学校では、始業前の時間帯にCSなどが協力をして校庭を開放し、見守りを行っており、それまで昇降口で待機していた児童たちから喜ばれているようです。朝の見守り活動の拡充について、令和7年度に計画していることがあればお知らせ下さい。
→令和6年末時点で、担任不在は4校4学級、副校長の休職1名、校長の退職1名。CS等の協力体制が整った2校程度で、新たに校庭等を解放した朝遊び活動を令和7年度試行実施する。
スポーツ分野では、学校施設を活用したスポーツ教室等の事業を新たに実施するということです。身近な学校施設でスポーツ教室に通えることをメリットと捉える区民は多くいると思いますが、どのようなスキームで、どこの学校で事業を実施するか、伺います。
→区がスポーツ教室を事業者に委託して実施。実施校は検討中だが遊びと憩いの場事業を校庭全面で実施しており、近隣に区立体育施設がない1校での実施を想定。
デジタル技術を活用した区民とのコミュニケーションとして、ホームページのリニューアル、ダッシュボードの掲載、公式ラインセグメント配信など、有効な打ち手が続々と実装されているものと感じています。ダッシュボードの掲載位置について、トップページからはデータライブラリー、次いですぎなみデータラウンジとクリックすると表示されますが、トップページに掲載してはいかがか。ダッシュボードは複雑・膨大な情報を見てわかりやすい形に整理したものであり、目的をもって深い階層まで探しに来た人に見てもらうというよりも、偶発性のある位置に設置して目にしてもらうことで、たとえば環境ダッシュボードの区民意向調査の結果を見た人が自分自身の環境意識をアップデートする、といった効果が期待されるものです。見解を求めます。
→システム上の制約はあるが、できる範囲で工夫できないか検討する。
総合的なデジタル相談窓口を10月目途に開設し、複数の地域区民センターを巡回するというお話もありました。区がデジタル技術を活用することによって生み出した時間で区役所を飛び出し、デジタルデバイドを抱えている区民の近くで支援を行う、という美しい取組が始まることに期待をしています。地域区民センターを巡回するということですが、荻窪地域区民センターは現在大規模改修中です。荻窪地域は別の区立施設でデジタルデバイド対策の巡回事業を行っていただきたいが、見解を伺います。他の地域についても、段階的に地域の目を細かくしていきながら、一人でも多くの区民がデジタル技術を活用できるよう、取組を進めていただくことを要望いたします。
→井草、高円寺、高井戸の3地域区民センターを巡回する方式で委託により実施。
職員の働く環境づくりについてもお話がありました。エンゲージメント調査を実施するとありますが、その目的の中に人材の定着が含まれています。公務員は先進的な人事制度と安定した待遇を有しており、人材の定着度合いは高いのではないかと考えられますが、人材の定着状況にどのような課題があるのか、伺います。調査の結果得られたデータをどのように活用するのかが重要ですが、エンゲージメント調査の実施にあたり、外部コンサル等の外部知見をどのように活かし、具体的にどういったことに役立てることを検討しているか、確認します。
→公務員の勤務条件や環境、仕事に対する価値観の変化などが離職者増の原因で、23区共通の課題。民間事業者の知見活用は検討中。
5.令和7年度予算の全体像について
ここまで、編成方針に沿って主な項目について質問してまいりましたが、昨年の編成方針とは受ける印象に大きな違いがありました。昨年の編成方針では、最初と最後のパートで区長の考えが明確に述べられていましたが、今年の編成方針は全体を通じて「こういうことをやってきた」「今後このように取り組んでいく」という、主体性のない内容であったように感じます。その理由について、2つの仮説を立てました。
一つ目には、自らの考えを編成方針に記すことにより、異論や批判が向かってくることを避けた、というものです。この間区長と議会は、時に激しい議論を重ねてきました。一つの事例を挙げますと、昨年の代表質問では、阿佐ヶ谷北東地区まちづくりについて、「なぜこのような公約を掲げることになってしまい、そのことによって事業を停滞させ分断を深めてしまったのか」「客観的な立場から見て総括が必要」といったことを私が申し上げたところ、区長から「実現不可能なものであったとの指摘には当たらない」「これを議員がどのように認識されるかは自由」「区政の混乱、事業の停滞、分断を激化したとは考えておらず、検証する考えもない」と答弁を受けました。この議論のきっかけは、公約を守ることができなかった無念さを押し殺し、前向きに振る舞おうとする区長の激情を、編成方針の中から私が読み取ったことにあったと理解しています。
私は、今回の編成方針から、区が令和7年度に取り組もうとしている施策について一定の理解ができたと感じる一方、岸本聡子区長の思いを読み取ることがあまりできませんでした。定例会は滞りなく大過なく進め、議案や予算を可決してもらえばいい、という考え方の首長もいらっしゃるだろうと思います。それは首長としての成熟とも言えるのかもしれません。しかしながら、対話の区政を掲げ、区民や議会との熟議を大切にされてきた区長が、自らの思いに蓋をすることで成熟を目指すのだとすれば、対話の区政はそこで終わってしまうのではないでしょうか。
区長が就任されて初の定例会、令和4年第3回定例会で、私はオープンデータについて一般質問で取り上げました。その時の答弁では、CSV形式のオープンデータは1件しか掲載がないという答弁だったところ、今朝時点では157件まで増えていました。この間区の情報公開やオープンデータの取組は大きく進み、これは岸本区長の考えが反映された部分もあろうと感じていますし、そのことは率直に一定評価しています。ですが、区の情報は区民のものという考えの元、区政の情報を公開したところで、予算編成権者たる区長が自らの考えをオープンにすることなく、予算審査をつつがなく乗り越えよう、という考えなのであれば、少なくともそれは対話の区政と呼べるものではないと思います。予算や編成方針に対し、区長が自ら臨んだ「対話」から得たものや、自らの考えを反映させたと考えている箇所を具体的にお示しください。
→対話から得たものは、議論を重ねることで大まかな合意形成が図られ、機構区民会議の意見提案や区立施設マネジメント計画における各地域の施設再整備案のような具体的なものがある。対話の中で得られた意見や思い、知見が私や職員に蓄積され、咀嚼されたものが次の事業で生かされていくものもある。予算編成方針は部分的に私の考えを示した箇所があるのではなく、全てが来年度予算にかける私の考え、思いであると受け止められたい。
もう一つの仮説は、私が自ら考えたというよりも、まちの皆さんから聞こえてくる話から思い当たったものです。年始の各種会合で、区長の挨拶でよく聞かれたフレーズの一つが、「地方自治の立場から」というものでありました。立場上当然のことでありながら、少なからぬ地域の皆さんから、妙に力が入っていた、といった印象を伺っております。今年は6月に都議会議員選挙、7月に参議院議員選挙が予定されており、衆議院議員選挙も参院選と同時に行われるのではないか、という憶測が年末から飛び交っているところです。念の為伺います。提案されている令和7年度予算案はいわゆる骨格予算ではなく本格予算であると認識していますが、区長は令和7年度を通じて辞職することなく、年度末まで予算を執行する考えでいるか、予算の賛否に直結する重要なポイントですので、明快にご答弁ください。
→当然ながら本格予算であり、引き続き区長としての責務を果たす。
もっとも、令和7年度予算も新規事業は3事業にとどまり、予算額にして 4,600万円余と、肉付け予算と呼ぶほどの肉肉しさもみられず、政策的経費によるものではなく既定事業、臨時事業にかかる経費の増に押される形で財政規模が1割以上拡大している予算と理解しています。新規事業が少ないことは昨年の代表質問でも指摘し、事業単位では少ないが取組は増えているのだ、という答弁でした。令和7年度の取組数とその推移について、伺っておきます。
→令和4年度16件、5年度22件、6年度42件、7年度は35事業。
区長の中に杉並区で実現したいことが乏しく、その自覚に基づいて対話の中から新たな事業・取組を作っていこうというのが、別の角度から見た対話の区政ではないかと思っています。そこで伺いますが、ワークショップやさとことブレストなど、岸本区政下では多種多様な対話の場を設けていますが、区長就任以降いくつの対話の場を設け、どのような効果を把握していて、結果としていくつの施策が生まれたのか、定量的にお答えいただき、その上で具体的にどのような施策が出てきているのか、答弁を求めます。
→主なもので15事業、約211回。新たな施策を生むことのみで対話の成果を評価できると考えていないので定量では示せないが、区立施設再編整備計画からマネジメント計画への改訂、各地域の施設再編の具体化、コミュニティふらっとにおける高齢者団体の優先枠等の見直し、参加型予算によるLED街路灯給電スポットの設置、子どもの居場所づくり基本方針の策定と児童館機能の拡充など、様々な成果を挙げてきた。
2月3日に東京都総務局から、令和7年度都区財政調整及び令和6年度都区財政調整再調整について、報道発表がありました。特別区の配分割合については、児童相談所の区移管を見据え暫定的に55.1%とされ、移管後の実績を踏まえ55.8%が適切と特別区長会で判断したものの、そのことを協議する場を持つことができず、都からは藪から棒に55%に戻すという話が出てくるなど、先行き不透明な状況でした。そこから突然、配分割合56%、特別交付金の割合6%という発表がなされました。このことについて「本合意」と表現されていますが、この協議合意に至る経緯を時系列でご説明ください。また、今回の合意内容に対する区長の受け止めをお聞かせください。令和6年度の再調整部分については、今定例会に提案されている令和6年度杉並区一般会計補正予算(第十号)の提案内容に含まれているか、令和7年度の上振れ分については例年通り第三回定例会の補正予算で提案される予定か、見解を伺います。
→平成19年度から区の配分割合55%。児相移管を受け令和元年度都区財政調整協議において、特例的な措置として暫定的に0.1%引き上げ、改めて令和4年度に協議することにした。しかしその後の協議がまとまらず、令和5年度に都区の見解の乖離を埋めるためプロジェクトチームを作って検討を進めてきた。検討結果を踏まえ昨年12月に都区財政調整協議が始まり、今年1月8日に第二回都区財政調整協議会が開催され、特別区の配分割合を56%、災害対応経費等に充当される特別交付金を6%に変更することを含む合意がなされた。受け止めについて、首都直下型地震に対する備えを充実させていくと共に、児相運営に関し都区の連携・協力を引き続き円滑に進めていくためのものと受け止めているが、妥当性については区立児童相談所設置や高校生医療費負担の状況も見ながら検証していく必要がある。6年度分は補正予算に反映、7年度分は例年7月に都区財政調整の当初算定額が示されるので、その後必要に応じて補正予算を提案する。
6.さとこビジョンについて
昨年6月に公表した「区長公約(さとこビジョン)達成状況のご報告」によれば、101項目中の31項目がキ「実現に向けて引き続き検討するべきもの」ク「公約通りの実現は難しいものの代替方法により実施するもの」に分類されており、令和7年度予算はこの31項目のうちの一部を実現する予算という側面を持つものと解釈していますが、提案された令和7年度予算では、キ・ク分類のどの項目が実現されているのか、見解を伺います。
昨年も話題にしましたが、キ区分「駅前再開発、大規模道路拡幅計画など、住民の合意が得られていないものはいったん停止し、抜本的に見直します。」については、具体的な検討の方向性において「「(仮称)デザイン会議」において、区と区民、そして区民同士が「対話」を通じて相互理解を深めながら進めることとする。」と記載されています。これは本当に「実現に向けて引き続き検討する」というあり方になっているのか。や「反対意見が強くある場合は計画を凍結し見直します。」もそうですが、できないものをできないと認めず、いつまでもタスクとして積み続けることは事務の効率化を大きく妨げる悪癖であり、この間指摘を重ねてきた事業の見直し・廃止が進まない区の課題とも重なって問題の核心であると指摘するものです。ケ「実現に向けた取組を中止する」という区分を新たに設け、精査することを求めますが、区長の見解を伺います。
→エデュケーションアシスタントの配置、ユース世代を対象としたゼロカーボンシティ機運醸成事業など。取組を中止することなく、代替策の検討を含め、何らかの形で公約実現を目指す。
キ区分のうち、「国民健康保険の高すぎる保険料の負担軽減を、東京都とも協力しながら進めます。」では、具体的な検討の方向性の欄に「引き続き、特別区長会等を通じて、国や都に対し、保険料の負担軽減に必要な財政支援の拡充等を求めていく。」とありますが、給付の適正化や予防医療の充実への取り組みはどこに行ったのか、取り組んでいるものと認識しているが、その成果について答弁を求めます。
→杉並区国民健康保険データヘルス計画に基づき着実に取り組んでいる。令和5年度は多剤服薬や重複服薬の方に通知を行い、約8割の方が是正されたほか、特定健診の結果から医療機関の受診が必要な方に対し案内したことで約4割の方が医療機関に結びついたなど、一定の成果が出ている。
また同じく、キ区分の学用品費等や修学旅行など、学校の保護者徴収金に関する保護者負担軽減について、直近の検討状況を確認しておきます。
→令和5年10月から学校給食費の無償化を実施するとともに、保護者負担軽減について引き続き検討を行ってきた。令和7年度から移動教室のまかない費相当分の徴収を廃止。保護者負担がある学用品費や修学旅行費についても、今後公費化に向けて検討。
7.学校給食費無償化について
関連して、学校給食費用の無償化について伺います。昨年末に文部科学省が「「給食無償化」に関する課題の整理について」と題した資料を公表しました。その中で、「全員を対象にした給食無償化は、一部の自治体において、「子育て支援」や「少子化対策」の目的で実施され、結果的に保護者世帯の所得増加をもたらす施策であり、給食の目的・目標の実現とは異なる」とし、子育て支援や少子化対策のための基礎的な給付として捉えた際の課題を「児童生徒間の公平性」「格差是正策の妥当性」「国と地方の役割分担」「効果的な少子化対策」と整理しています。区は都補助を活用しながら一般財源も用いて令和7年度も学校給食費用の無償化を行いますが、一方で一義的には国による無償化があるべき姿であ流として、国による無償化を求めてきた立場でもあります。この課題の整理に対して、先行自治体でもある杉並区として意見を示すことが、国による無償化の実現に向けた重要な取組であると私は考えますが、国による無償化を求めながら、現時点で国が示した諸課題に区として意見を示していない理由を区長に伺います。その上で、国が示した学校給食費無償化における4つの課題に対し、区長はそれぞれどのように考えているか、答弁を求めます。
→国が、経済的困窮による給食費の支払いが困難な世帯に対する負担軽減を進める上で、給食費無償化の課題を示したものと認識。私は以前から「義務教育の一環である学校給食は、全ての児童・生徒に対し、等しく無償で提供するべきものであり、本来、国の負担で行われるもの」と考えを述べており、東京都、特別区も同じ考え。国が示した4つの課題は視点が異なる。根本的な視点が相違しているので、個々の課題に対して現時点で意見を申し上げていない。
8.デジタル化について
住民情報系システム標準化について、昨年の第2回定例会の一般質問で見直しを提案しましたが、あくまで計画通り移行を進めるという答弁でした。先月29日に中核市市長会が調査をまとめ、運用経費が平均で移行前の2.3倍に膨らむ見通しにあることを明らかにしました。先の一般質問でも引用した『昭和16年夏の敗戦』になぞらえて申し上げれば、杉並区必負(ひっぱい)の結論を出しながら、標準化やむなしという空気によって不可逆な既定経費の大幅増に突撃しようとしていると私は感じますが、引き続き令和7年度もガバメントクラウドを活用した住民情報系システムの標準化を進めていくのか、区長に伺います。
→標準化システムの使用はクラウドサービスの利用が前提で設計されており、ガバメントクラウドを活用したシステム構築を進めている。運用経費は増加が見込まれるが、東京都などと連携し、国が責任を持ってコストの縮減方法の検討や必要な財政支援を行うことを求める。
デジタル技術に関連して、AIの活用について伺います。区ホームページのリニューアルに際し、検索メニューにAIを搭載しています。AIを搭載した目的はキーワードのずれをAIで補正し、検索した方が意図したページを的確に表示することと理解していますが、その成果を測る指標を用意しているのか、伺います。AIオンデマンド交通も含め、区政に着実にAIが装着されていると認識していますが、令和7年度に予定しているAIを活用した新たな取組がありましたら、お示しください。
→検索キーワードの記録やGoogle Analyticsを活用し、有効性を分析しながら運用する。令和7年度の新しい取組としては、ごみの収集運搬業務における収集ルートの自動作成にAIを活用することを予定している。
9.インフラ整備について
先月28日に埼玉県八潮市の中央一丁目交差点で発生した道路陥没とトラック転落事故では、 転落したトラックの運転手の安否が半月以上不明の状況が続いており、復旧の目処も立たない状況が続いています。事故現場周辺にも広範囲に影響が及び、9市3町120万人に対し下水道の使用を自粛する呼びかけを行う事態となりました。国土交通省は東京都などに対し、大規模な下水処理場に接続する一定以上の口径の下水道管について、陥没を招きかねない腐食などがないかどうか目視などによる緊急点検を求め、7日までに報告することとなっていました。緊急点検対象の下水道管は杉並区内に存在するか、また国交省に報告した内容を速やかに区として把握し区民に周知すべきと考えますが、見解を伺います。下水道管の破損による道路陥没は令和4年度全国で2,625件、そのうち下水道管の整備が早かった政令指定都市と東京都区部の「大都市」が1,528件と全体の6割弱を占めています。「老いる東京」とどのように向き合っていくか、その重要な課題の一つが下水道インフラの維持管理であり、手を拱いていると住民の生命と財産にどのような影響が及ぶのか、八潮市の事故を杉並区に引き付けて考えていくことは重要であると考えます。東京外環道大泉側シールドトンネル工事が今夏にも杉並区内に到達するということが話題になっていました。区内の掘進(くっしん)工事中、工事箇所の近傍で道路陥没が発生した場合に、原因がシールドトンネル工事の影響によるものなのか、老朽化による下水道管破損なのか、適切に見定めることは、東京外環道の早期開通に向けて重要です。緊急点検後の早いタイミングで、区内東京外環道工事エリアの下水道管の点検を都に求めていただきたいが、区長の見解を伺います。
→緊急点検の対象は晴天時1日最大処理量30万㎥/日以上の大規模な下水処理施設に接続する口径2,000㎜以上で、区内には該当する下水道管がないことを確認。外環道については、国道及び都道下に敷設されている下水道管の上部路面約1,200㎞を対象に緊急巡視点検を実施し、異常がないことを確認。
八潮市の事故発生現場は県道であり、転落事故被害者の救助活動や下水道管、道路の復旧工事については、埼玉県を中心とした公助によって担われるものと承知しています。杉並区には把握することもできないほどの無数の私道があり、大型トラックを含む車両が頻繁に通行する私道も珍しくありません。区内の私道で下水道管の破損による陥没事故が発生した時、その責任を私道管理者がどの程度背負うことになるのか、私道を所有・管理することの巨大なリスクも、八潮市の事故が提起しているものと感じています。陥没事故が発生した場合の被害者の救助活動、人的被害に関する補償、陥没に巻き込まれた家屋や物件の補償、下水道管が利用できなくなった場合の下水道管利用者に対する補償、下水道管や道路の復旧にかかる費用は、私道管理者と行政のどちらが担うのか、見解を伺います。
→私道に埋設された下水道管は私道の所有者や下水道管使用者の私有物で、責任は私道所有者や下水道管使用者が全て負う。被害者の救急活動は消防・警察が適切に行うと考えるが、人的被害、家屋等物件の補償、下水道利用者への補償、下水道管や道路復旧に係る費用はいずれも私道管理者や下水道使用者の負担になると考える。
10.区長の政治姿勢について
先月、1月13日に二十歳のつどいが行われ、私も午前中の会に参加させていただきました。二十歳の集いの挨拶では、他の自治体でも首長や議長がどういったメッセージを送るべきか熟慮し、魂を込めたメッセージを二十歳の皆さんに送り、時に歌う首長、議長が話題になります。区長もおそらく、ギリギリまで原稿を推敲した結果、ご自身のスマートフォンに表示された最新の原稿を読むことでメッセージを伝えられたものと思います。
自己決定とコンフォートゾーンについてお話しされていました。このメッセージの中で、区長はこのように仰っていました。「自分や周りの人が何かを選択しようとしたときに、阻まれたり、辛かったりする非合理や不正義があれば、自分のせいにせず、考えることをやめず、社会に対して言葉を発してほしいと思います。」
残念なことにこの社会に、非合理や不正義は存在しています。非合理や不正義に直面した時に、若かった私は、この状況で自分にどんな努力ができるだろう、どのように乗り越えて行けばいいだろうと考えていました。まずは非合理や不正義を自分自身に引き寄せて、できる限り努力し、しかしそれが叶わなかった人たちが声を上げることで、それが共感を呼び社会が変わる、ということを、不妊治療を取り巻く世界の変化のさなかで、私自身も感じてきました。しかしながら、自分に引き寄せて努力する営みを欠いた状態で、社会に対して言葉を発しても、非合理や不正義を乗り越えていくことはできないと思っています。お笑いジャーナリストでもある厚生労働省社会保障審議会年金部会委員が、長期にわたりSNS上で炎上を続けていることが、その象徴的な事例であるように私は捉えています。区長もその前段では、海外に渡り必死の連続だったということを述べておられます。区長から若者にメッセージする際には、自分ができるだけの努力をすることの大切さを伝えていただきたいと思いますが、見解を伺い、一連の私の指摘に対し、思うところがあればお聞かせください。
→若者一人ひとりの個性や置かれた環境がわからない中、一方的に伝えるものではなく、若者自身が私の言葉を自分なりに受け止め、何らかの気づきを得てもらえるかと考える。
もっとも、自己決定とコンフォートゾーンというテーマは、二十歳の皆さんにはともかく、四十一歳の私には刺さるものがありました。「自身の主張や公約実現を抑え、安全運転で述べられた編成方針」に対し、「予算の総論を淡々と質問する」「前向きな答弁を得られそうな質問をする」という質問者のコンフォートゾーンから飛び出す自己決定を行った上で、編成方針からは読み取れなかった区長の気持ちをあちこちに探し求めながら、是々非々で徹底的に議論を挑んだつもりです。真摯なご答弁を切にお願い申し上げ、再質問を留保し、質問を終わります。長時間にわたりご静聴いただき、ありがとうございました。
---再質問---
ご答弁いただき、ありがとうございました。区長と私は、その職責の違い以前に基本的な考え方に違いがありますが、一部分断が深まったなと感じる答弁もいただいた一方で、多くのテーマでは歩み寄りというのか、小池都知事風に言えばアウフヘーベンできた議論もあったのではないかと思っています。そういった意味では、議論を進化させるために異なる視点の人たちが同じテーブルに就き議論を交わすことの重要性を感じながら、答弁を聞いておりました。その観点からすると、聞き流せない答弁がありましたので、そこから再質問いたします。
国が示した給食無償化における4つの課題について、従来から杉並区をはじめとする特別区や東京都が示してきた、「義務教育の一環である学校給食は、全ての児童・生徒に対し、等しく無償で提供するべきものであり、本来、国の負担において行われるもの」という主張とは根本的に視点が異なるので意見を申し上げていない、という答弁でした。まず、先ほど国が示した学校給食費無償化における4つの課題に対し、区長はそれぞれどのように考えているかを伺いましたが、これに対応する答弁が確認できませんでしたので、改めて伺います。これまでの自治体側の主張を細分化し課題を抽出したのが国の課題提示であると私は理解していて、国会でも石破総理の答弁の中で論点として挙げられていました。都の1/2補助を活用してもなお10億円以上の持ち出しがある給食費無償化を、全額国費で賄うことになれば、区財政にとって恩恵が大きいことから、区としてできる限りの努力を行うべきではないでしょうか。さらに言えば、給食費無償化が含まれる補正予算を総務財政委員会で審議した際には、公会計化の遅れが課題となり、時期尚早として補正予算の修正案が提出されました。そこから1年半で公会計化を実現し、また令和6年度からは国私立等給食費相当給付金事業を開始するなど、杉並区は学校給食費無償化という政策を推進する中で様々な経験をしてきたわけでありますから、異なる視点から、この間の経験を踏まえた見解を国に示すべきと思います。遅くとも上期中には、杉並区を含む主体から、国の示す4つの課題について意見を表明すべきと考えます。見解を伺います。
→国が示す課題は経済的困窮により給食費の支払いが困難な世帯に対する負担軽減を進めるための課題であり、自治体側の考え方と根源的に異なる。国に対し特別区長会を通じ義務教育に係る経費削減の一環として学校給食費無償化を要望している。今後とも機会を捉えて4つの課題に対する意見を付しながら学校給食費無償化の早期実現を目指す。
以降、答弁をいただいた順を追って再度伺います。
国会のテーマについて、概ね想定していた議論が挙げられたかと思いますが、個人的には在職老齢年金制度の見直しに言及されたことについて意外に思いました。在職老齢年金制度による支給停止対象額は4,500億円とされ、将来的な廃止を見据えつつ財源論に課題があるとして支給停止基準額の引き上げを検討しているところと承知しています。私はこの仕組みは経験豊富で能力も高く、働く意欲のある高齢者の働き損を発生させることから、速やかに廃止し、基礎年金部分を保険料財源から税財源に移行すべきという立場ですが、区長は在職老齢年金制度とその見直しについて、どういった見解をお持ちなのか、所見を伺います。
→元気な高齢者がより意欲的に働く動機になるという点において有意義と考える。
荻窪五丁目の三菱重工業社宅跡地について、40㎡以上が98戸程度、つまりそれ未満が112戸程度とのことでした。答弁にありました通り、「地域の発展やまちづくりに貢献する計画となるよう積極的に求めていく」よう、くれぐれもよろしくお願いいたします。答弁にありました「杉並区建築物の建築に係る住環境への配慮等に関する指導要綱」第3条第6項において、ファミリー形式の住戸が40㎡以上と定義されていることについては、社会通念から乖離していると指摘します。40㎡は3人家族の最低居住面積水準であり、健康で文化的な住生活の基礎として必要不可欠、あくまで欠くべからざる水準です。一般的にファミリー形式といえば70㎡とされていると認識しています。要綱でファミリー形式が40㎡以上とされていることによって、同要綱23条などが実質的に空文化してしまい、「住まいは権利」の答弁に示された区の取り組みが無効化されていると感じます。今回の計画事業を奇貨として、平成25年以来改正されていない同要綱を見直してはと思いますが、見解を伺います。
→議員が指摘する周辺地域で70㎡以上の居住面積を擁するマンションの分譲マンション価格を調べたところ、1億円を超えている状況。70㎡以上のマンションを取得する、または賃貸するとなると一定の高所得が必要。他区とも同水準である最低居住面積基準を現時点で考え直す考えはないが、ファミリー形式住宅の最低居住面積に関するご懸念について、世帯人数に応じた適切な広さの住宅を確保できる環境が重要と考える。
教育委員会内の不適切事案に関する報告書提出に関連し、処分について伺いましたが、今回の事案では減額を行わないものと判断したと答弁がありました。11件の不祥事を一つの報告書にまとめて処理したわけで、一連の不適切事案を総合すると相当の不祥事だと私は思っていますが、本区や他団体のどの事例等と比較して判断したのか、区長に見解を伺います。そして、これは教育長に伺いますが、教育長が就任して以降の不適切事案は再度のくぎ等発見と、指導要録紛失再点検による紛失発覚の2件に留まっており、検討委員会委員長の立場で報告書を取りまとめられました。その上でご自身の職責における結果責任をどう考えておられるか、処分なしという区長部局の結論に対し、率直にどう思うかお聞かせください。長の高い報酬は責任を取るために設定されているもので、長がしかるべき形で責任を引き受けることなくしては、つけることのできないけじめがあると私は思っています。渋谷教育長ご自身にも、忸怩たる思いがあるのではないかと惻隠しているところです。
→総体として処分を行うためにまとめたものではない。処分については内容も発生場所もそれぞれ異なる事案ごとにその都度判断するので、処分の要否もその都度判断する。
→再発防止策を確実に実行することで区民の信頼回復に努めることが私と教育委員会事務局に課せられた重要な責務。特別職の給与減額については区長部局で適切に判断しているものと認識。
天井断熱化に関連した、屋上緑化について、維持管理にかかるコストや屋上利用の制限などの課題がある、とのことでした。この課題は学校の屋上だけに存在するのではなく、みどりを増やす取組全般に共通するものです。その中でも学校は長時間人がいる施設であり、みどり豊かな住まいのみやこを目指していく上で、課題を乗り越えて推進していく必要があるものと思っています。
令和8年度以降、地方財政にも大きな影響が生じることが想定される、ということでしたので、年収の壁引き上げに伴う特別区民税への影響額をお尋ねしましたが、1億円強の歳入減の見込みとのことでした。2,456億3百万円の予算規模で1億円強を大きな影響と表現するのは殊勝な態度と見るべきか、それとも令和8年度以降も年収の壁が段階的に引き上がっていくことで今後さらなる減収となることを織り込んだ答弁だったのかわかりませんが、財政の議論としては吸収可能な水準と受け止めました。昨年の代表質問でも減税政策についてお尋ねしたところ、国が可処分所得を直接的に下支えする減税が最も望ましいと説明していることを下敷きに、区においても減税には一定の効果があるという見解が示されました。今回の壁引き上げによって、夫婦それぞれ年収600万円、世帯年収1,200万円の世帯はどの程度の減税となるか、見解を伺います。
→特別区民税への影響はない。
既定事業の増に関する答弁では、既定事業の整理・統合の結果として8事業の増があったと説明がありました。整理も統合も、一般的には減らすために行うものだと認識しています。散らかった部屋を整理するようにこどもに指示したら、綺麗に並んではいるけれど追加でおもちゃが箱から出てきている状況を、整理できたとは言わないと思います。既定事業の整理・統合をつぶさに見ていくと、二つの名詞を中黒や「及び」でつないだ一つの事業を分割し、二つの事業として「整理」するなどして事業が増えているようですが、これを是とすると事業の増減に実質的な意味がなくなります。事業数のカウント方法を再検討し、これ以上増やせないカウント方法で数え直した上で、今後活発に新陳代謝させていきながら、事業を着実に減らしていくことを求めますが、このことについて見解を伺います。
→事務事業の見直しについては、事務事業評価だけでなく日々の業務執行の中で取り組んでいる。区の予算規模は施策を構成する事務事業を積み上げた結果となるが、予算編成の過程の中で見直しや経費の削減を行い、事務事業を整理統合することによりより効率的な執行方法につながっている面がある。
住まいは権利であるという理念は、区の基本的な考えであると明快に述べられました。杉並区住宅基本条例の前文を引用されましたが、同条例の第一条には、「杉並区の住宅施策は、良好な住環境の下で、良質な住宅が確保され、区民一人ひとりがゆとりある住生活を主体的に営むことができるようにすることを目標とする」とあります。ゆとりある住生活は区民一人ひとりが主体的に営もうとするものであり、区はそれを政策的に下支えするというのが住宅基本条例の精神であると理解しており、「権利」であるのだから「公的な責任で誰もが」という区長の考えが、住宅基本条例の理念が一致しているようには思えません。「住まいは権利」が区の理念なのであれば、住宅基本条例は全面改正を目指すべきと考えます。区長の見解を伺います。我が会派は、現行の住宅基本条例を維持した上で、「住環境への配慮等に関する指導要綱」等に見られる個別具体的な問題点を改善していくべきという立場であることは、あらかじめ申し上げておきます。
→生活の基盤である住まいを収入の減少など経済的な理由で追われることがないよう、公的な責任として住宅確保要配慮者への支援が必要との考えによるもので、条例の趣旨とも一致すると考える。
区営住宅の抽選に落選した低額所得のひとり親や多子世帯に対する家賃助成を開始することについて、杉並区選出のある都議会議員が「杉並が共産主義に向かう」「杉並区に低所得者が集まってくる」などとSNSで発信し、Xが炎上、削除に追い込まれていました。私たちとしては、区営住宅の申込要件を満たしている、在住2年以上の子育て世帯が対象の事業と理解しており、家計急変等の事情により杉並区に住み続けることが難しい状況のこどもを環境変化から守る、という観点では意義のあるものであり、この間議会で取り組み解決してきた育休退園問題などと軌を一にするものであると評価しています。ただし、今回の対象範囲についての見解であり、対象のいたずらな拡大についてはあらかじめ懸念を表明しておきます。
世帯人数に見合った広さの住宅を条件に付す考えはない、とのことでした。待機児童が多かった時代の保活にかかる都市伝説の一つとして、「こどもを保育園に入れるために、一時的に離婚する」偽装離婚という手法がテレビを通じて流布されていたことがあり、ひとり親に対する偏見として根強く残っているという実態があります。実態にそぐわない申請を防ぐ手法として、世帯人数に見合った広さの住宅を条件とすることは有効ではないかと考えたものですが、家賃助成制度への不正な申し込みを防ぐ手法を何らか検討しているか、確認します。
→申請の前年度にひとり親、多子世帯として区営住宅の公募に申し込み、落選した方を対象とするもので、区からプッシュ型で案内することから、懸念する実態にそぐわない申請が出てくることは考えにくいと認識している。申請手続きの詳細は検討中だが、資格要件の他、認識するための書類等を定め、適正に審査を行う。
都区財政調整協議について、丁寧にご説明いただきありがとうございました。災害対応経費等に充当されるものとされている特別交付金については、特段の災害発生がなくとも交付されるものであり、またその配分根拠も明確ではありません。そもそも市町村に配布される総合交付金と異なり、特別区財政交付金は一般に基礎自治体の財源とされている税目を都が徴収し、基準財政需要額が基準財政収入額を上回る特別区に配分するものであり、その性質上100%が普通交付金として交付されるのが自然であると考えています。その上で、特別交付金の割合が6%と1pt増となりましたが、このことをどのように評価しているかについても伺っておきます。
→特別区から都に対し、特別交付金の配分割合を5%から2%に引き下げるよう要求してきた。今回の合意は首都直下型地震などに対し、備えを充実していく観点から、配分割合を56%に引き上げるものと合わせ、災害等に係る経費や普通交付金の対象とならない特別な行政需要に対し算定される特別交付金の割合が6%に引き上げられたが、これまでの特別区の要求とは異なるもの。今後しっかり検証していく必要がある。
下水道管の緊急点検について、対象の下水道管が区内に存在しないということでした。まず答弁内容についての確認ですが、国道及び都道下に敷設されている下水道管の上部路面の緊急巡視点検を実施したとのことでした。外環道は国道扱いですが、事業中区間の上部路面が国道・都道として扱われているわけではなく、私が伺ったことに対する答弁になっていないように思います。改めて伺いますが、外環道のシールドトンネル工事中に上部道路に陥没が発生し、事業が一時中止されるようなことにならないよう、工事実施に先立って工事実施地域の下水道管の点検を求めてはと思いますが、見解を伺います。また、八潮市は元々湿地帯で地下水の水位が高い上に、砂を主体とした軟弱地盤であると専門家が指摘していますが、一方で杉並区は関東ローム層上に立地しており、自然堆積した赤土は安定しており比較的大きな強度が期待されることから、相対的にリスクが低い地域です。区民の安心を確保する観点で、適切なタイミングで区内の道路陥没リスクについて周知を図っていただきたいと思います。見解を求めます。
→下水道を所管する都において一部道路の緊急巡視点検を実施し、異常がないことを確認している。この他外環道の事業者についてもシールドマシン到達前に国等の事業者が路面下空洞調査を行うことにしている。区ではレーダー探知機による空洞調査を定期的に実施し、陥没の危険性が高い空洞が発見された場合は適宜空洞の解消を図ることで安全性を確保に努めている。区民への周知については、空洞調査による対応結果をお知らせしていく。
比較的地盤が安定しているとはいえ、下水道管の老朽化は進行している中で、私道の埋設下水道管の破損に伴う責任がすべて私道管理者や下水道管使用者に課せられるということで、私道管理者や下水道管使用者にとって、私道に埋設された老朽下水道管は、まさしく見えない導火線付きの時限爆弾となっています。「老いる杉並」の課題は杉並特有ではなく、東京をはじめとする大都市が直面する課題であり、大都市を除く世界中の未来課題でもあります。水道の専門家であり、公共の再生を掲げている岸本区長が、任期中にこの課題を鮮やかに解決してくださることに期待を寄せ、以上再質問といたします。